今回は三幕構成に限らず小説やマンガなど物語全般に役立つ「類語辞典シリーズ」をご紹介します。 ※画像と書籍のリンクはAmazonへ飛びます。
【感情こそキャラクターの命】
キャラクターの設定をどれほど細かく考えても、そのキャラがベタなセリフを吐けば魅力は半減します。どこかで見たことあるシーンをなぞったような活躍しかできないのも、キャラーが自ら動いていないからです。それでは魂のない人形にすぎません。キャラクターの魂こそが「感情」です。たとえば「恋」と「愛」はちがうと誰でも思うと思いますが具体的にどう違うのでしょう? キャラクターがセリフで「好き」と言っていても、それは恋なのでしょうか? 愛なのでしょうか? また身体や内面ではどのような変化がおきているでしょうか? 感情類語辞典ではこのような感情ごとの分類をしています。「隠れた感情を表すサイン」という項目では、その状態にある人間が他人からどう見えるのかなどの例があげられていて描写にも応用できます(※Amazonで中身ページが見れますので、気になる方はぜひご覧下さい)。
性格類語辞典 ポジティブ編と性格類語辞典 ネガティブ編はキャラクターの性格設定ごとに、どのような環境で育つとそういう性格になるのかや、その性格のキャラクターはどういった態度をとるのか、ご丁寧にセリフの例まで書かれています。
【そのまま使うものではない。でも参考になる】
これらの本は心理学の研究や分類ではありませんから、似たような感情がかかれていたり、「ん?本当にそうかな~?」と思う部分もあります。もちろん、セリフの例でもそのまま使うわけにはいきません。それでも、十二分な参考資料になります。もともとが物語創作向けに書かれているので、いわゆる言葉の表現を調べる類語辞典とはまるで違います。他に例のない本です。デスクにおいて、ちょっとつまったときに引いてみるのに最適です。とくに自分の作品が「キャラクターに魅力が無い」とか「リアリティがない」と言われてしまう人にはたくさんのヒントが隠されていると思います。
【トラウマはキャラクターコアになる】
キャラクターコアというのはイルカの造語でキャラクターの本質という意味です。そのキャラクターの核となっている過去の出来事です。シド・フィールドが素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック シド・フィールドの脚本術2でCircle of Beingという言葉を使っています。
とくに九歳から十八歳の間に起こった出来事で、ストーリーに大きな影響を与えるものをCircle of Beingという。人格が形成されるこの時期に起きた事件――たとえば親や愛する人の死、精神にも肉体にも深い傷を残す虐待、見知らぬ土地へ行くこと等――はトラウマとなって、人生全体に影響を及ぼすことがある。
キャラクターの本質は必ずしもネガティブなトラウマとは限らないので、イルカは同じような意味でキャラクターコアと呼んでいます(※くわしくはキャラクター概論シリーズなどをご覧ください)。
この「キャラクターコア」を考えるヒントになるのが、このトラウマ類語辞典です。本の使い方は上の3冊と同様ですが、キャラクターコアはとくに主人公やアンタゴニスト(ライバルや裏主人公)には欠かせない要素となります。上記3冊と組み合わせることで、深みのあるキャラクターを作っていけます。
また、トラウマになる例も多彩でオリジナリティを作るのにも最適です。シド・フィールドも挙げているような「虐待」や「愛する人の死」などは誰でも浮かぶわかりやすい例です。ゆえにベタになりやすいです。この本でもそういったものもきちんと書かれていますが「同調圧力に屈する」「模範的な人への失望」など、なるほどと思わされる例もあげられています。
【資料を使いこなせす力を】
広辞苑でも歳時記でも○○辞典でも、創作に役立つ資料というのは無限にあります。インターネットの情報も同じで、検索で見つけるのは簡単であっても、それを物語に応用していくことは簡単ではありません。ときに安易にコピーして盗作疑惑も起こります。物語創作には「資料を活用する力」が必要です。自分の知っていることだけでは何冊も書けません。言葉や知識を知っているから、頭が良いという時代はすでに終わっています。
今回、ご紹介した「類語辞典」シリーズ4冊は使いこなせなければ、ただの本棚の飾りです。けれど、うまく活用できたならトラウマを考えるのに専門的な心理学を学ぶ必要がなくなります。物語創作を本気で目指す人は持っておいてけして損はないものですし、購入を考える方は、どの本をどう活用したらよいか? 自分に合ったものを選ばれると良いと思います。
感情類語辞典は増補改訂版がでています。
感情類語辞典[増補改訂版]
緋片イルカ 2019/06/26
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