小説『黄色い葉』(2450字)
なかなか明けない梅雨に、ぐずぐずとしていた。今日こそは三、四時間は書こうと思っていたのに、今になってもまだ一枚も書いていない。
なかなか明けない梅雨に、ぐずぐずとしていた。今日こそは三、四時間は書こうと思っていたのに、今になってもまだ一枚も書いていない。
試験官には髪の毛が一本入っている。わたしのものだ。産婦人科医は目を細めて確かめると、『ご主人はどうします? 最近では精子から受精させる方もいらっしゃいますけど』
初めての〝ルーム〟は痛かった。ユータくんの言葉が体の奥にガシガシと響いてきて、わたしの存在が消えてしまいそうで、こわかった。
『部屋、行かない?』その意味を勘違いしたまま、わたしはOKしていた。
『ママ、もう寝るね』わたしはロキの部屋へ行って、ベッドの中にいる息子に額をつけた。今日の記憶を家族クラウドにバックアップするため。
〝本〟というものについては知っていた。マインドネットがなかった時代には、わざわざ文字というものを使って思考や感情を共有していた、と歴史ファイルにあった。
下衆な小説で覚える漢字、略して「ゲス漢」
下衆な小説で覚える漢字、略して「ゲス漢」
下衆な小説で覚える漢字、略して「ゲス漢」
下衆な小説で覚える漢字、略して「ゲス漢」