パーティーを組むこと

ドラゴンクエストのようなRPGゲームではパーティーを組む。

主人公一人ではなく、仲間と一緒に冒険に出る。

経験値の取得は、人数で割る分、少なくなる。

たとえば、モンスターを1匹倒すと20の経験値が得られるところ、パーティーが4人いると、1/4で5の経験値しか入らない。

経験値とはレベルアップに必要な数値で100までいけばレベルアップするとしたら、一人なら5匹倒せばいいところを、4人だと20匹も倒さなくてはならない。

仕事で貰えるお金に換算すると、急にリアリティが出るが、1人でこなせば20万円貰える仕事が、4人でやると一人5万円になってしまう。

世の中で、似たようなことがたくさんあると思うが、4人で作業したとき、労力も等しく4等分かというと、そんなことはほとんどない。

ときには、グループ全く役に立たないで評価やお金だけもらっていく人がいる。

たくさん働いている人から不満が起こり、やがてパーティー解散となることも多いだろう。

スポーツには団体競技と個人競技があって、団体競技ではチームの人数が決まっている。

RPGゲームのパーティーでいえば、4人なら4人で、役に立たない1人を外しても、代わりに誰かは入れないといけない。

そうなると、報酬の配分の方で調整をすることになり、20万円のお金を等しく配分するのではなく、実力や仕事量に応じて変える。

野球選手は9人のチームであっても、一人一人の報酬は違う。

個人競技では、コーチやトレーナーというチームはいったん置いておいて、プレイする選手は一人で、評価も報酬も、良くも悪くも、選手自身のものとなる。

作家は団体競技か、個人競技かと考えるなら、小説家は個人競技に近い。

物語の構成やアイデを考える段階で仲間がいても、文章を書くときは作家一人だし、つづきを他の人が書くと言うこともほとんどない。

複数作家による短篇オムニバスというような形式ならあるが、二人で一本の小説を書くという形はほとんどないのではないか。

編集者とは二人三脚だろうが、役割が違うのでコーチやトレーナーのようなもの。

マンガでは規模による。無名や新人でストーリー、コンテ、ペン入れなどすべてを一人でやる体制であれば個人競技だが、連載が増えてアシスタントを雇うようになれば、団体競技になってくる。

とはいえ、そこにはマンガ家とアシスタントには明確な差があり、等しいチームメイトではない。あくまで中心はマンガ家である。

映画などの映像作品になると、完全に団体競技だ。

作品のクオリティやマーケティングに関わるような重要度の高い仕事があるが、プロデューサー、脚本家、監督、メインキャストなどの影響は大きく、サッカーでいえばスタメンか。

けれど、11人だけでは成り立たず、ベンチの控えはもちろんサポートしてくれるメンバーがたくさんいる。

試合に出ている選手達の働きが勝負を決めるとしても、その働きを影を支えているのは、試合に至るまでのすべての時間だろう。

こういうことからも、同じ物語を書くにしても、脚本家は小説家よりもコミュニケーション能力が求められるといえるが、べつに陽キャのようなポジティブさが必要ということではない。

フォワード的な積極的に攻める脚本家がいても、ディフェンダーのように堅い守りの脚本家がいてもいい(脚本の役割ミッドフィルダーのようなイメージがあるが)。

とにかくチームとして機能していて、良い作品が出来るのであれば良い。

以上は、仕事や「作品を創る」過程における、団体か個人かという考え方だが、練習ということに関しては、どちらが良いだろうか。

陸上競技のような露骨な個人競技でも、練習はチームでやることが普通。

練習環境の確保だとか、スポンサーの関係とか、さまざまな事情はあろうが、一人で練習するよりも、チームでやる方が成長が早く、レベルも上がるからではないか。

そうでなければ、個人競技のトップレベルの選手は、一人で練習する人が多いのではないか。

冒頭のRPGゲームのパーティーの話に戻る。

ボスと戦うとき(試合)では一人であったり(個人競技)、チームであったり(団体競技)の違いはあれど、レベル上げをするときはパーティーの方が効率がよい。

すなわち、モンスターを「1人で5匹を倒す」と「4人で20匹倒す」のと、どっちが効率が良いのかという話。

1人でモンスターを倒せる勇者は、足を引っ張るような仲間に、経験値(や報酬)を奪われるぐらいなら、1人のがいいと思うかもしれない。

4人で協力して、やっとこさモンスターを倒せる人たちは、個々の能力を比較すれば、1人で倒せる勇者に劣るかもしれない。

けれど、長期的な目で見たときにはどうだろう。

1人の勇者がレベル1上がるとき、4人のパーティーはトータルでレベルが4上がる。ここまでは労力が4倍(倒すモンスターが4倍)なのだがら、当然の差である。

倒したモンスターの数を揃えてみる。

4人のパーティーは20匹倒さないとレベルが上がらないが、そのときにはトータルでレベルが4上がる。

1人の勇者は5匹倒すだけでレベルが1上がるが、15匹倒して同じように4まで上がっているだろうか。

これはRPGゲームをやったことがある人なら誰でもわかるが、レベルが上にいけばいくほど、レベルアップに必要な経験値も大きくなってくる。

モンスターの数が同じだとすると、やがて勇者1人よりも、パーティー4人の方が強くなる。

仮に勇者1人の能力が超人的で、パーティー4人の総合力をすべてにおいて圧倒しているとする。

作家でいえば、孤高の超天才作家というようなイメージだが、現実では、そんなことはほとんどないと思う。

陸競技でいえば、十種競技の選手は種目ごとでは、それぞれの種目を専門にしている人に勝てない。

たとえば十種競技選手による1500m走の世界記録は3分58秒だが、このタイムは専門種目にしている日本人高校生でも勝てる。

マンガのキャラクターのような、何でもかんでも一番になれるような天才などいない。天が二物や三物を与えることはあるがが十物はない。

倒せるモンスターの数だけでなく、質も変わる。

パーティーを組めば、個人の実力以上のモンスターを倒すことができる。

そういった強力なモンスターは経験値が多いというのもRPGをやったことがあれば、わかるだろう。

個々のレベルが低くても、苦手な部分を仲間が補ってくれることもある。

ある戦いでは役に立たなかったようなメンバーが、別の戦いで主戦力になるということもあるだろう。

それでも、1人の方が効率がいいと思う人は、勇者4人のパーティーを想像してみるといい。

能力の高い1人と、そうでないパーティー4人の比較ではなく、能力の高い4人をパーティーにしたら。最強パーティーである。

現実的には、能力の高い人は、個別の努力を怠らないがために成長して、そのために能力が高い。パーティーに入るのも嫌う傾向がある。

一方、徒党を組みたがる性格の人は、チームの一員として働く責任感や、能力を磨く努力をしなければ、都合よくパーティーに寄生しているだけである。

働きもせず、おいしいところだけ持っていこうとするだけ。

そんな仲間とパーティーを組むことは、時間のムダでマイナスでしかない。

最強パーティーを組むことは難しい。

だけど、自分が努力を怠らない決意があれば、1人よりもパーティーを組んだ方が、効率がいいと僕は考える。

最初のうちは、おいしいところをもっていかれるだけでも、それで仲間のレベルが上がっていくなら、いずれはパーティー全体の強化になる。

最強の仲間とは言わないまでも、1人で戦うよりも「1人+仲間」で戦える方が、強いはずだと信じる。

1人で戦っていると、モンスターのダメージはすべて自分が受けることになる。

パーティーがいれば、攻撃を受ける確率も1/4に経る。これもありがたいことだと思う。

400m走の世界記録
ウェイド・バンニーキルク 43 秒 03 (2016)

日本記録
佐藤拳太郎 44 秒 77 (2023)

4×100mリレーの世界記録
ジャマイカチーム 36 秒 84 (2012)

日本記録
37 秒 43 (2019) ※世界選手権銅メダル

強い敵と戦うには最強チームが必要になる。

相手側も最強チームで来られたときには、勝てないかもしれない。

けれど、個々の速力で負けていても、バトンの練習をしない相手なら、リレーチームで勝つこともできる。

あくまで、チームワークを大事に思える仲間でなければいけないのだろうけど。

イルカ 2024.2.27

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