「赤と緑に輝く星を〔前編〕」(連作4/5)

ワタシは3人の少女をよく知っている。
一人は片思いに悩んでいる。
一人は夢に不安を抱いている。
一人は自分自身が大嫌い。

誰か一人の味方をすることはできないけど、平等に3人の味方なのだ。

「サンタクロースは信じている人にだけ存在する。」でもワタシは誰が信じていようがいまいが、3人の味方である。

ただ、みんなが笑顔になること。それを望んでいる。

それは難しいことではない。

それぞれが、それぞれの勇気をちょっとだけ出すだけのこと。

他人から見た「ちょっと」が、本人にはけっして「ちょっと」ではないこともよく知っている。

ワタシはワタシに出来ることをいつも考えながら、じっと見守る。

ニナは鍵をかけて、部屋いっぱいに洋服を広げた。

『明日、どれを着ていこうかしら?』

楽しい作業だったのは始めのうちだけで、着飾って鏡を見るたびに自信をなくしていき、自信がゼロになると、あとは嫌悪と不安がつのっていった。

『服の問題じゃないのだ。私自身の問題なのだ。どんな服を着たところで私は何も変わらない。会場に着けぬまま、雨に濡れた捨て犬みたいになってとぼとぼと家に帰ってくるのだ。』

ニナはベッドに並んだワンピースを払いのけ、横たわった。

『それなら、最初から行かない方がいい…。』

その考えは温かい毛布のようにニナを包んでいった。このままぬくぬくと眠ってしまえばいい。

ニナは何かの音を聞いて身を起こした。

起き上がり机にある封筒をあけた。
クリスマスコンサートのチケットが入っていた。

ニナはもう一度服を選ぼう、と思ったら床に落ちていたワンピースが足にからまってつまずいた。白い壁に手をつくと、氷のようにひんやりとした。

初めて部屋の壁がこんなにも冷たいことを知った。

「今年のイブは満月なんだ…。」
レイコは空を眺めて歩いていた。

明日のことを考えると胸がバクバクした。

頭の中はクリスマスコンサートよりも、その後のモデルオーディションのことでいっぱいだった。

時間には余裕があるけど、片付けに時間がかかったらどうしよう?

打ち上げ?
そんなの断るに決まってるけど…誰かに理由を聞かれたら何て言おう?

会場はすぐにわかるかな?
他にも受ける人がいっぱいいるから大丈夫かな?
みんな可愛いくてスタイルいんだろうな~
友達になれるかな?
ライバルだと思われるかな?
いやいや、あたしなんかライバルに入らないか?

そんな弱気でいいのかな…?
もっと自信をもっていかなきゃ!

レイコは目を閉じた。小学校6年生の学芸会を思い出した。レイコの短い人生で今のところ最初で最後の主役だった。

『待って、消えないで…。』

レイコの支えの『フルカラーの思い出』に黒いもやがかかっていった。

不安はレイコの頭と心と記憶を覆い尽くしていった。

レイコはそっと目を開けた。

はっきりと現実に色がついている。
冷えて縮こまった掌をぎゅっと握りしめた。

サキはすでに夢の中だった。

コンサート前日、緊張はしていたが、もうこれ以上することはないんだと思ったら、どっと疲れが出て眠ってしまったのだった。

夢を見ていた。
『クルスセイジが隣を歩いている。そっとクルスセイジが手を繋いでくる。「レイコに悪い」と思うのだが、わたしはその手を離せない。「もうすぐだよ?」クルスセイジが言った。「何が?」「イルミネーションだよ。一緒に見ようって言ったじゃん?」わたしとクルスセイジは手をつないだまま歩調を合わせ歩いていく。「ここだよ。」クルスセイジが言った。わたしは辺りを見回すが真っ暗で何も見えない。「どこ?」「ここだよ?」「どこ?」「ここだってば。」(それはレイコの声になっている)』

サキはハッとして目を覚ました。レイコの声が耳に残っていた。前半の内容を思い出すことは出来たが、どういう気持ちだったかが思い出せなかった。

時計、2:34。

『寝なきゃ…。』

サキはおそるおそる目をつぶった。続きを見るかもしれないと思ったら怖い気がしたのだ。そんなことを考えているうちに再び眠りに落ちていった。

「真っ暗な道。月明かりだけが足下を照らしている。わたしは一人で歩いている。イルミネーションを目指しているらしい。そこへは一人で行かなければならない。ふっと「わたしはレイコなのだ」と気付く。イルミネーションはもうすぐ見えるはずだが、その気配がなくてレイコであるわたしは不安になってくる。★ 遠くにぼんやりと明かりが見えて、わたしは駆け出す。そして「わたし(サキ)を許す」と思っている。」

24日のクリスマスイブ。ワタシは冬空の下から少女達に赤と緑に輝く星を配ってまわった。それがワタシのに出来ること。

(後編につづく)

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