『しろいろの街の、その骨の体温の』他、村田沙耶香作品まとめ

読書会でとりあげた作家の代表作には目を通したいと思っているのですが、前回の『コンビニ人間』は準備不足で臨むことになってしまいました。

事後報告的になりますが、読めていなかった作品のあらすじと感想などをまとめておきます。

●『授乳』2003年、第46回群像新人文学賞優秀賞受賞。

この作品については読書会前に記事にしました→『母が同い年のクラスメイトだったらきっといじめてるな』(文章#29)

●『マウス』2008年

スクールカーストという言葉のなかった時代の話ですが、それに類する学校という空間での息苦しさや、鋭い人間観察がみられる作品です。小学校五年生のクラス替えから始まり塚本瀬里奈というクラスメイトとの関わりが描かれます。後半では大学生になってからの瀬里奈との再会が描かれます。瀬里奈というキャラクターは独特で面白味がある反面、後半ではややふつうのキャラクターに落とし込まれてしまって、エンタメ的なラストという印象でした。村田さんの作品ではかなり爽やかなラストです。小学校時代での描写は『しろいろの街の、その骨の体温の』に、ファミレスでの人間関係は『コンビニ人間』にと、のちの作品につながる片鱗が見られる気がします。

●『ギンイロノウタ』2009年、第31回野間文芸新人賞受賞。

ヤンデレアニメを思わせるような『ひかりのあしおと』と『ギンイロノウタ』。意識的に狂気を創り出そうとしている人物(あるいは作者)という印象が残りました。たとえばカポーティの『冷血』のように狂気に真に迫ろうというのではなく、妄想の結果として「虚構の狂気」を創り出している人間像を描いていると読むべきではないかと。こういう人が犯罪を犯すのかもしれない、といったような捉え方は安易でズレているように感じます。日頃、平和にしあわせに生きている人は、そんな風に感じるのかもしれませんが、こういう人は結局は犯罪など犯さない。そんなことを考えました。(読んだのが2ヶ月以上前なので細かい印象は忘れました)。

●『星が吸う水』2010年、第23回三島由紀夫賞候補。

村田さんがよくモチーフにする、ある種の性的行為に拘った二作品。『星が吸う水』では女性の立ち小便(地面におしっこをすることがタイトルの意味だと思うとギャグのように思える)、『ガマズミ航海』ではレズビアン的な行為が意味をもって描かれる。性行為の中に感情的な救いや意義を見出そうとする視点はいつも独特だが、好き嫌いはわかれそうな作品。良くも悪くも村田さんらしい作品だな~という印象。

●『タダイマトビラ』2012年、第25回三島由紀夫賞候補。

家族とは何だろう?というテーマが見え隠れする作品。ややステレオタイプの冷たい父親とインナーチャイルド療法に惹かれる母親、幸せな家族を求めている弟と、覚めた目で見ている主人公。大学になり、恋人をつくり自分の家庭をつくることを目指す主人公だが……唐突で乱暴なラストはテーマを投げかけつつも、物語とはしては破綻している印象。

●『しろいろの街の、その骨の体温の』2013年、第26回三島由紀夫賞受賞。

村田さんの小説を読んだことがない人に一冊だけ薦めるとしたら、僕はこの本を薦めます。村田さんの作品で初めて感動しました。『コンビニ人間』は完成度の高い、よくできた映画のような作品ですが、この作品は良質の文学作品という印象でした。物語は『マウス』同様、小学校時代の学校空間が描かれ、その中での人間模様や変化の機微が、丁寧に描かれていきます。『マウス』との比較でいえばは、『マウス』が後半は大学生に時間が飛んでしまったのに対して、この作品では時間経過はありつつも小学生~中学生までを丁寧に描いていきます。また『マウス』の塚本瀬里奈の変化に比べて、伸子ちゃんの変化(あるいは変化しなさ)にはとてもリアリティがあって心を打つものがありました。村田さんの初期の作品にはイメージアイテムのブレが見られましたが、この作品では「ニュータウンとして発展していく街」と成長していく少女の体と心が、印象としてもよく絡みあっていました。

●『殺人出産』2014年、第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。

『殺人出産』:「10人産むと1人殺していい」というSF設定で物語が進んでいきます。高校を卒業して「産み人」となることを決めた姉がついに10人目の出産を成功する。「姉が殺すのは誰か?」という物語としては強いストーリーエンジンを持っていると思いますが、村田さんの視点はあくまで「常識に対する違和感」といったところでしょうか。好き嫌いは別にあれこれと考えさせられる作品だとは思います。同時収録の短篇『トリプル』は三人恋愛(と3人でする性行為)について、『清潔な結婚』はセックスをしない結婚の形についてだが妊娠のため怪しい産婦人科で奇妙な性行為をさせられる話。掌編『余命』は死ぬことがなくなった世界で、死ぬタイミングを自分で選ぶ話。どれも面白いテーマを扱ってるようだが、掘り下げが浅くどこかでみたことのある物語という印象。

●『コンビニ人間』2016年、第155回芥川龍之介賞受賞。
読書会報告#4『コンビニ人間』村田沙耶香 (三幕構成の音声解説)

●『地球星人』2018年。

『コンビニ人間』を進化したさせたようなタイトルが読む前から気になりました。前半は小学校時代。長野の田舎に親戚が集まるなか、魔法少女だという主人公と、宇宙人だという従兄弟は付き合うことになり、ある事件が起きる。後半は三十代になって結婚をしている主人公。社会に適応できない自分達は宇宙人であるのだという考えを強めていくなか、数十年ぶりに従兄弟と再会する。村田さんの作品のなかで『コンビニ人間』が一般の人でも読めるオモテの作品だとするなら、『地球人間』はウラの作品。ネタバレは避けておきますが、いくつかの、どぎつい展開には嫌悪する人もいると思います。想像的な描写というかんじでリアリティはそれほどないのですが、状況自体に嫌悪する人はいると思います。『変半身』で気になっていた「入れ物」という言葉も出てくるのに作者の変遷も感じました。

●『変半身』2019年。
この作品については読書会前に記事にしました→『私って、「入れ物」なんです。』(文章#28)

まとめ

視点:常識や環境に対する違和感、嫌悪感、不和。
キャラクター:視点をそのまま据えた一人称視点。アスペルガー的な感覚。母、兄弟姉妹、クラスメイトに対照的なキャラクターを配置。
繰り返されるモチーフ:初潮、妊娠、出産、様々な性行為、魔法少女、マニュアル依存、殺害衝動。
構成:違和感を抱えた主人公→自分なりの解答を見出す(現実へ適応変化よりも、非現実へいききるラストが多い)。

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