映画『偽りなき者』『光のほうへ』(視聴メモ)

『偽りなき者』

『光のほうへ』

一個人の感想:
どちらもトマス・ヴィンターベア監督の作品。設定というかシチュエーションというか、どちらもドラマとして興味を惹く。予告編を見ると、とても面白そうに見える。実際、その通りの映画で、期待外れではないが物足りなさもある。いいシーンがたくさんある。いいショットもある。しかし、脚本レベルでみると、アークが滑らかでない。ログラインの書きづらい映画。作り手がそこを意識していれば、もっと説得力のある展開にできたはず。ミニプロットであるので許容されている反面、アークプロットらしい作為もある。たぶん、アークプロットを描けない監督なんだとは思うが、テーマをつかみとる強さはあるのだろう。もったいないと感じる。分析はしなかったが、特徴として、中盤あたりで主人公とは別視点のキャラクターが登場する。これは主人公のアークを描き切れないライターが、よくやりがちなテーマのすり替え。いったんリズムにはなるが、本質的に主人公のテーマを掘り下げることができずに、解決に向かってしまう。とくにアクト2が明確な『偽りなき者』でその傾向が目だつ。『光りのほうへ』はよりミニプロット寄りなので、アークのなさが気にならない。とはいえ、印象に残るシーンはいくつもあった。これは何よりもいい映画の条件の一つだし、たしかに「ミニプロット以上の映画」ではある。

緋片イルカ 2022/02/18

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