映画『キングコング:髑髏島の巨神』(三幕構成分析#141)

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【ビートシート】

「好き」4 「作品」4 「脚本」4

一個人の感想

「モンスター・ヴァース」の一連で見ただけだが、好印象だった。過去のキングコングの映画は一本も観たこともないので、どの程度、原作ファンを納得させているかはわからない。『地獄の黙示録』へのチープなオマージュなど、ジョン・C・ライリーと合わせて、もはやコメディと見れてエンタメとしては許容範囲。怪獣映画としては合格点だと思う。そもそも怪獣映画というくくりに入れてよいのか?という疑問がある。巨大生物などが出てくるものを、一般ではひっくるめて「怪獣」や「エイリアン」と呼んでしまっているが、それらは「題材」に過ぎない。ゾンビものでも、太古はホラーから始まり、サバイバルものや、コメディなど、題材の扱われ方は多様。むしろ、どういったストーリータイプと合わせるかが重要になってくる。日本の怪獣映画のほとんどはエイリアンによる地球侵略ものの体で、説明セリフのオンパレード。独自の雰囲気を作ってはいるが、それらのやりとりに、どれだけ多くのファンがついているか疑問。怪獣映画ファンは怪獣アクションをみたいのではないか? シリーズ次作にあたる『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』では米軍が目立ちすぎていて、こうなってくると、別の戦争ものジャンルとの比較が生まれて、怪獣の嘘っぽさが目立つ。ほとんどがクリシェで、先入観で、同じようなシーンばかりが描かれているように感じる。怪獣アクションとしては、コングというキャラは、人間じみているのでわかりやすく、感情移入もしやすく、面白かった。CGによる演出効果でレーザーや爆発ばかりしているより、こういったアクションが怪獣アクションの本質だと思う。レーザーや爆発はSFでやればいい。ストーリータイプの話に戻ると、本作は「髑髏島のアドベンチャーもの」でコングに限らず、たくさんの未知の生物もでてくる。ドラマとしてのストーリーは弱いが、その弱さが、アドベンチャーものでは許容される。ただし、ストーリーの型としては古く、ネットなど普及する前の世界に未知のものが溢れていた時代のストーリータイプ。これを今どき(2017年)にやっているのは苦しいものがあるが、キングコングというIPあっての企画で、観客も許容する。興収はシリーズ前作の『GODZILLA ゴジラ』と同等で企画としては成功と言えそうだが、次作の『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』でガンと落ちるのは、脚本のせいか、前2作は久しぶりのリブート作品で、原作ファンが食いついてくれただけか。「モンスター・ヴァース」がキャラや商品化という安易な見方ではマーベルのように展開していけそうにみえて、ストーリーの観点では、前述した要因から、かなりテクニックがいるところ(ヒーローは主人公だが、怪獣は題材)。作り手がその辺りに気づけているのかどうか、次作の『ゴジラvsコング』を見て、判断材料としたい。ちなみに本作は役者・演出は悪くない。

イルカ 2023.5.16

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