前回はキャラクターの感情やトラウマに関する類語辞典をご紹介しました。今回は同じ「類語辞典シリーズ」のシーンに関する本をご紹介します。 ※画像と書籍のリンクはAmazonへ飛びます。
【場所がドラマに変化を与える】
脚本や小説のスクールへ行くとよく課題を出されます。たとえば「デートのシーンを書いてくること」。すると「夜景の見えるホテルや公園」とか「海を眺めながら」とかオシャレなデートスポットのようなところを浮かべる人が多いようです。なんとなく歯の浮いたセリフが聞こえてきそうです。では「サービスエリアでデート」と言われたら、どんなシーンが浮かびますか? そんなところでデートをするなんてドライブが好きなのでしょうか? まだまだベタです。長距離トラック運転手同士のカップルで日本中を走りまわっているカップルが、サービスエリアで2時間だけ再会してデートするとしたら、どうでしょうか? 同性カップルでもいいですね。いくらかオリジナリティがでてきた気がしませんか? いま、イルカが「サービスエリア」を突然だしたのは、たまたま、この『場面設定類語辞典』の546ページを開いたからです。その登場人物にトラック運転手というところから思いついたままを書いてみたのです。この本の使い方がおわかりになったかと思います。
【使い方①:ストーリーにランダム要素を組み込む】
あるハリウッドの脚本家はプロットホイールと言っていくつかのドラマチックなエピソードを書いておいて、回転させて止まったものを何があってもシーンに入れるという物語の作り方をしていたそうです。
また、大塚英志さんはストーリーメーカー 創作のための物語論 (星海社新書)でカードを使ってランダムにでてきた言葉をつないでストーリーをつくる方法を紹介しています。
作者個人の連想だけで物語を紡いでいるとマンネリ化してしまう危険を、機械的にランダム要素を入れ込むことで、ストーリーに変化をつけられます。こういった使い方に最適な本です。
ちなみにイルカは100文字小説のネタに困ったときに、この本でパッと開いたページから物語をつくります。これはスクールで出される課題と同じで「これで書け!」とお題を出されると案外書けるものです。
【使い方②:シーンにリアリティ・変化をつける】
シーンの「場所」は決まった。けれどいまいちシーンが浮かばない。そういう時には、その場所がリアルに浮かんでいないのかもしれません。この本ではシチュエーションごとに「見えるもの」「聴こえるもの」「匂い」「味」「質感とそこから受ける感覚」といった五感にまつわる要素があげられています(※Amazonで中身ページが見れますので、気になる方はぜひご覧下さい)。それらの要素は、描写のヒントになりますし、しっかり想像をしていくことでシーンが浮かんでくるヒントになります。ロケハンして実際に現場に行ってみることはもちろん大事ですが、例えば雨の日だったらどう違うだろう?とか、夜ではなく朝だったら?とか、1回行っただけでは気付けないことも、想像するヒントになります。
【日本バージョンの場面設定辞典】
上の『場面設定類語辞典』はアメリカの本なので「ホームパーティー」「プロム」「難民キャンプ」など日本では使いづらいシチューエーションも含まれています。それに対して、『現代日本の場面設定辞典』はタイトルに「現代日本の」とある通りに日本を基準にリストアップされています。ただしシチュエーションごとの情報量は少なく、物語論からの立場からのヒントなどはないので、完全に参考資料というレベルです。それでもランダム要素に使うには十分使えるかと思います。
緋片イルカ 2019/06/26
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