3分ミステリー「自称探偵シュガーの事件簿」file3 捨てられた自転車

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『自称探偵シュガーの事件簿』

俺の名前はシュガー。職業は私立探偵。
依頼はまだない。
依頼がないのに探偵なのかって?
ふっ、心配することはない。俺ぐらいになると事件の方からやってくるのさ。

file3 捨てられた自転車

 月曜の朝は気が重い。
 俺は家から徒歩3分の事務所に向かって歩いている。さっきまでネトゲをしていて一睡もしてないが仕方ない。働くとはこういうことだ。
「シュガーちゃん、今日も偉いわね」
 彼女はこのアパートの大家、大山さんだ。大家の大山さん、俺の恩人だ。引きこもりだった俺の探偵としての才能を見抜き、一階の空き部屋を事務所として提供してくれている世話役ばあさん。大家の大山さんだ。
「ん? 大山さん、これはなんだい?」
 玄関の前には子供用のマウンテンバイクが置かれていた。ボディの色は赤。新品ではない。
「それがね。今朝、起きたらここに置いてあったのよ。誰かが捨ててったのかしら。嫌ねえ」
 サイズからして小学校低学年ぐらいのものだ。タイヤは磨り減ってツルツルだし、チェーンも錆びかけている。しかし、防犯登録のシールが貼ったままだった。捨てたわけではないようだ。
「このアパートの住人に子供は?」
「いいえ。うちはワンルームだしね。みんな独身よ」
 アパートの住人は3人。いずれも男性である。地方出身の国立大の大学生、ブラック企業に勤める営業マン、それから年金暮らしの老人である。
 大山さんは夫婦で一階に住んでいて、昨日の住人の出入りをすべて把握していた。
「学生さんは朝から出かけていったわね。朝のアニメの時間だったから7時だわ。デートだってオシャレしてたわね。たしか夜の9時には帰ってきてたわ」
「サラリーマンはどうです?」
「彼はお休みの日は外に出ないの。一日中部屋にいるわ。ときどき、コンビニに出たりもするけど昨日は出なかったわ。うちで出前をとったから、彼にもおすそわけしたのよ」
 俺は最後に老人について尋ねた。
「一日3回、近くの公園に散歩に行くのが彼の習慣よ。朝の6時、午後の2時、夕方の6時。だいたい30分ほど歩いて帰ってくるわ」
 疲れていた大山さんは夜の10時には寝てしまい、今朝の6時に起きたときには既に自転車が置いてあったという。
 俺は自転車の前カゴに紙が入っているのを見つけた。それは防犯登録の証明書、つまり自転車の持ち主のものだった。
「なるほど、わかりましたよ、大山さん。ほんのシュガーな謎でしたよ」

★クエスチョン

自転車を置いたのは誰でしょう?

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■解決編

 俺はこう推理した。
 防犯登録の証明書があるということは、盗まれたり捨てられたりしたものではない。譲り受けたのである。防犯登録を再登録するには前の所有者の証明書が必要である。
 では、誰がもらったのか?
 アパートの住人3人は大山さんが寝た22時よりも前に帰ってきているし、子供に縁がない。縁があるのはただ一人、大山さんである。朝のアニメを見ていたり、出前をとっていたことなどから、大山さんの息子家族が遊びにきていたと思われる。そもそも小学生になったばかりの孫がいたのを俺は知っていた。

 しばらくすると旦那さんが起きてきた。昨夜、大山さんが寝た後に近所の家から自転車を譲り受けたそうだ。もちろんお孫さんのためである。
 俺にかかればチョコレートケーキなみに甘ったるい事件だったぜ。

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