テーマ触媒3:「回想」「ミステリー」「はじまり」「おわり」「いちばん書きたいもの」

前までは「脚本課題」と呼んでいましたが「テーマ触媒」と言い換えることにしました。

創作は「課題」として与えられて書くようなものではないと思ったからです。

触媒はビートの「カタリスト(catalyst)」からとりました。創作の「きっかけ」に使ってもらえればという意図です。

初心のうちは「自由にやっていい」と言われても戸惑ってしまう人も多いと思うので、このようなインストラクションをしていきますが、自律的にやれる人は、自身の課題やテーマで成長を目指す方が良いと思います(※いずれにせよ力を養うためには継続的な鍛錬が必要です)。

いずれは自律的に書けるようにはならないと「作家」と呼べるレベルにはなれないと思います。

100本までは道筋を示したいと思っていますので、自由にご活用いただければと思います。

008「回想」

初心者には禁止事項としている「回想」をあえて使ってみましょう。

ジャンルやテーマは自由。「モノローグ」や「ファンタジー設定」はこの課題においては禁止としておきます(別の機会にやります)。

回想は説明的に使うとストーリーを停滞させる原因となりますが、効果的に使えば、絶対に使ってはいけないという訳ではありません。

使わざるを得ないときもありますし、回想をメインとした構成もあります。

そんなことを頭の片隅におきながら、あえて使ってみて、普段とどう違うかが感じていただければ、気づくこともあるかと思います。

なお、この課題以外では「回想」は引き続き禁止になります。 ※50本書いたら「初心者禁止事項」は解除

ヒント:脚本作法13:回想の力学

脚本添削『やめたわ』(★4.78)

009「ミステリー」

ミステリーはどんなジャンルにも応用できる知っておいて損はないテクニックです。

「謎」と「答え」があるという意味では、感覚としては「なぞなぞ」のようなものです。

トップシーンでは、読者が「なんで?」と感じるような「謎」が発生するような状況で始めてみてください。

あとはラストまでに、その「謎」が明かされれば課題の狙いとしては成功です。

必ずしも「トリック」や「探偵役」がなくても構いません。読者の中で「ミステリー」の感覚を味合わせることが目的です。

シンプルな探偵ものの方が書きやすければ、それで構いません。

脚本添削『検証』(★4.55)

010「はじまり」

どんな物事にも「はじまり」があります。

人間の「はじまり」は誕生です。赤ん坊は何もわからないまま、この世界に産み落とされます。

意図せず、突如、巻き込まれるような「はじまり」もあれば、自らの意志で始める「はじまり」もあります。

どんな「はじまり」でも構いませんが、そこにある感情や緊張感などが出ることを意識してみましょう。

脚本添削『推し活』(★4.50)

011「おわり」

「はじまり」があれば「おわり」があります。

人間の「おわり」は死です。覚悟して死んでいく人もあれば、ある日、うそのように死んでしまう人もいます。

死に限らず、卒業や退職も「おわり」ですし、組織から逃げたり、外されてしまうような「おわり」もあります。

解釈は自由ですが、「はじまり」との対比で「おわり」の雰囲気を意識してみましょう。

「はじまり」の課題のその後など、連作のように書いてしまっても構いません。

脚本添削『夏の底泥』(★5.17)

012「今、いちばん書きたいもの」

簡単に言えば「自由課題」です。

内容もジャンルも、お好きにどうぞということですが「自分がいちばん書きたいものが何か?」と自問してみてください。

テーマでも、キャラクターでも、ジャンルでも、感情でも、シーンでも、セリフでも、何でも構いません(※一言でもいいので、どこかに明記してください)。

書きたいものは、いずれ変わっていくと思いますが「今」書きたいものと、しっかり向き合ってみましょう。

それは作家としての「今の自分」と向き合うことかもしれません。

また「書きたいもの」は、どうしたら読者に伝わるかを考えてみるのも大切です。それこそテクニックです。

この課題に関しては禁止事項はなしにします。ファンタジー設定やモノローグ、回想など何でもやりたいことをやってください。

緋片イルカ 2023.3.27

テーマ触媒のリスト

1:「犯罪者」「コメディ」「ホラー」「ラブストーリー」
2:「脚色」「二面性」「キーアイテム」「サイレント」
3:「回想」「ミステリー」「はじまり」「おわり」「いちばん書きたいもの」
4:「ことわざ」「母親」「光と影」「何も起こらない話」
5:「モノローグ」「イケメン」「夏」「動物」
6:「海」「時代劇」「ブス」「タイトルオマージュ」
7:「音楽」「冬」「セクシーさ」「小説」
8:「山」「父親」「アクション」「ビジュアライズ」
9:「珍味」「春」「兄弟」「冒頭セリフ指定」
10:「想い出」「東京」「植物」「身体障害者」
11:「色」「パーティー」「手紙」「スポーツ」
12:「死んだ友人」「秋」「超能力」「逃亡者」
13:「昆虫」「プロット指定」「姉妹」「匂い」
14:「結婚」「AI」「不可能」「警察官」
15:「電話」「トラウマ」「雨」「当て書き」
16:「大きな決断」「登頂」「どん底」「夢オチ」
17:「ワンシチュエーション」「2人だけ」「視線」「手指」
18:「別れた恋人との再会」「キスシーン」「復讐」「ニュース記事から」
19:「殺人シーン」「病院」「飢餓感」「血」
20:「子供」「鏡」「恥」「自分をモデルに」

リハビリ:「模写」「半模写」「脚本起こし」「演出模写」

※書き方のルールなどについては「脚本作法」の記事も参照してください。

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