脚本添削:『青春トライアングル』

※作品は「脚本講習」の参加者によるもので、作者の了承を得た上で掲載しています。無断転載は禁止します。本ページへのリンクは可能です。

『青春トライアングル』米俵(クリスマス)2022.12.16

テーマ触媒1:「犯罪者」「コメディ」「ホラー」「ラブストーリー」

※作者の励みになりますのでコメント欄に感想を頂けましたら嬉しく思います。

本文への添削

※赤字はイルカによる指摘です。川尻さんの『クリスマスプレゼント』で指摘したのと同じような点は割愛しています。

「青春トライアングル」
第 1 話
─初稿─

2022/12/9
米俵

〈人物表〉
小林 藍花 (16) 私立高校1年
大森 奈々 (16) 私立高校1年
鈴木 建人 (16) 私立高校1年

〈ログライン〉
藍花は、奈々と建人の告白を聞き、自分の気持ちも建人に伝え、振られる話。
「〇〇な藍花」となるように形容詞を一つつけてみてください。「××して〇〇な」という設定的な形容詞でかまいません。それがビートでいう主人公のセットアップで、初見の読者にまず伝えるべきことだという意識につながります。「奈々と建人の告白を聞く」前に、主人公のセットアップをしないと、ドラマが白ける原因になります。

1. 藍花の家・リビング(朝)
築20年程度の一軒家、リビング。
リビングの隅にクリスマスツリーが飾られている。
小林藍花(16)、ソファーに座り、冷やしたスプーンを目にあてている。
「冷やした」が伝わるか少し気になるところではありますが、不思議なポーズで面白いトップシーンだと思います。

2. 藍花の家・リビング(昼)
ここの時間経過の処理が雑に感じます。同じ場所で時間経過なら「 × × ×」で処理することも可能ですが、スプーンとセッティングの動きに繋がりがないことが一番気になります。クリスマスの雰囲気が露骨なほどに出ていることとは、クリシェであれど、マイナスではないと感じます。
藍花、鼻歌(クリスマスソング)を歌いながら、テーブルセッティングをしている。
小皿、3つのシャンパングラスを並べる。
3つであることを読者に印象付ける書き方もあります。

例)
シャンパングラスを並べていく。
1、2、3。グラスは3つである。

とか。映像的には「ポン、ポン、ポン」と順番に置いていく撮り方を、脚本で誘導できます。それでも演出家が変えてしまうことはありますが笑 基本的には自分が「何を」「どう?」伝えたいか脚本上でも演出していく必要があります

インターホンが鳴り、出る。
藍花「開いてるから、入ってきていーよ」
一軒家の玄関の外まで聴こえるか少々疑問。↓次のト書きも早すぎる。二人が玄関をあけて「おじゃましーます」とか、靴脱いで入ってくる時間をしっかり意識して書く。時間をカットするなら、玄関のシーンに移す。建人のセリフからすると、いきなり入ってくる展開もありえるかもしれない。
大森奈々(16)、鈴木建人(16)がリビングに入ってくる。
建人「藍花、お前、さすがに1人の時は鍵閉めとけよー」
藍花「だって、建人達が来るの分かってたし」
奈々「でも、何かあったら危ないから」
藍花「奈々ー、心配してくれるの? ありがとう」
藍花、奈々を抱きしめる。
建人「俺の時と全然違うのな」
建人、台所に買ってきた荷物を置く。
藍花「建人、今回は、どこの買ってきた?」
建人「ケンタッキーとモスと……ファミマ」
藍花「そんなに食べられないでしょ」
建人「お前が毎度文句言うからだろー。黙って食っとけ、チキン脳め」
どんな文句か内容が少々気になる。「多すぎる?」「そんなに食べられない」と言う人が普段「多すぎる」と言うだろうか? いつもより異常に多いなら「いつもの倍かってっきました!」みたいなフリが欲しい。そのあたりがひっかかるせいか「チキン脳」の意味が不明。次のチキンハートの返しは良い。
藍花「チキンハート君に言われたくありませーん」
建人「お前、意味分かって使ってる?」
藍花、建人を叩きながら、
藍花「分かってるわ」
奈々、二人の様子を見て、口を両手で隠しながら笑っている。
「口を両手で隠す」仕草はリアルでやると、すごく違和感が出そうな気がする。あるいは作者の意図が伝わっていない? 実際に鏡の前で、自分でやってみてください。役者にやらせるのだから脚本家が嫌がってたらいけません笑 「奈々」が完全にそういうことをするキャラならOK。
 × × ×
3人、席に座っている。
テーブルの上に3種類のチキンがのった大皿とサラダの大皿とピザ。ポテトチップス、ポッキーなどのお菓子が並んでいる。
ここの時間経過の「 × × ×」は使い方としてはOKだが、「3人、座ってる」よりも先に食べ物の描写が欲しい。また、前シーンで「さあ、並べよ!」みたいなフリを入れると流れがスムース。
建人、シャンメリーのフタを握りながら立ち上がる。
藍花、天上の角を指さしながら、
藍花「あの辺ならいける」
建人「いくぞ、せーの」
三人「メリークリスマース」
勢いよくフタが飛んでいく。
建人、シャンメリーをグラスに注ぐ。
奈々、サラダを取り分ける。
藍花、チキンを食べ始める。
これらのト書きは急に無言で動作しているのでしょうか?
建人「お前の両親相変わらず仲良いのな」
藍花「外だと恥ずかしいよ」
奈々「えー。羨ましいけどなー」
藍花「正直、ママのダーリン呼びが一番きつい」
建人「で、今年のプレゼントは何だった?」
藍花「お二人さん、聞いて驚くんじゃないよ。なんと……」
3人「問・題・集」
3人笑う。
展開は面白げだが、極めてクリシェ。捻りやオリジナリティがほしい。高校生の5教科なら、具体的な教科を言わせれば「成績をよく分かってる」が効いてきて、キャラが立ちます。
藍花「今年はご丁寧に5教科ありましたー」
藍花、1人で拍手をする。
建人「お前の成績を良く分かってんな」
藍花「自分たちはラブ旅行行ってんのに、私にだけ現実つきつけてくるんだよね」
藍花、シャンメリーを一気に飲む。
奈々「頑張って進級しないとね」
藍花「今は考えたくありませーん」
藍花、チキンを勢い良く食べる。
 × × ×
藍花、冷蔵庫を開けて、棒読みで、
藍花「あー。ケーキ取ってくるの、忘れてたー。今からちょっと行ってくるー」
奈々「えっ、私も行くよ」
藍花「いいよ、いいよ。すぐそこだから。お二人でごゆっくりー」
建人、小声で、
建人「あいつ……下手くそか」
奈々「え?」
建人「あ、いや。なんでもない。まあ待ってようよ」

3. 藍花の家の前の道(昼)
藍花、家の方を振り返りニヤニヤとする。
鼻歌を歌い、ケーキ屋に向かう。
 × × ×
鼻歌を歌い、ケーキを持って戻ってくる。
しばらく家の前をウロウロする。
携帯を見て、家の中へ入っていく。

4. 藍花の家・リビング(昼)
藍花、リビングの扉を開けながら、元気良く、
藍花「たっだいまー」
建人、下を向いている。
奈々、涙目で藍花を見る。
藍花、ケーキを落とす。
クリシェが過ぎる。
藍花、建人を突き飛ばしながら、
藍花「あんた、奈々に何したの」
建人、椅子から落ちて、
建人「いってー。なんもしてねーよ」
藍花「じゃあ、なんで奈々が泣いてんのよ」
奈々「違うの、藍花。私が吐き出しただけだから」
藍花「え?」
奈々「藍花が好きだって」
藍花「え?」
建人「奈々、チキン脳にはちゃんと言わねーと伝わらねーぞ」
奈々、藍花の目を見て、
奈々「藍花のことが好きなの」
藍花「私も奈々が好きだけど……」
奈々「違う……」
藍花「えっと……ライクじゃなくて、ラブってこと?」
奈々、頷く。
藍花「そ、そうなんだ……」
藍花、ふらふらとケーキを取りに行く。
ケーキを机の上に置き、箱を開ける。
形の崩れたケーキ。
藍花は立っている状況で落としているので、相当に崩れていますよね? 切り分けられたケーキの状態などリアリティに則して、意味も込められてるところなのでしっかり描写してほしいところです。
ナイフでケーキを切る。
お皿に取り分ける。
藍花、奈々にケーキを渡しながら、
藍花「奈々、ありがとう。でも、ごめん……。私も好きだけど、奈々とは友達で居たい」
奈々「うん、分かってる」
奈々、笑顔。
奈々、崩れたケーキを見つめながら、
奈々「振られケーキ」
藍花、焦った様子で、
藍花「あ、ごめんっ。ケーキ渡しながら言ったから……」
ちょっとわかりづらい。説明くさい。
建人「俺にも振られケーキくれよ」
藍花、建人にケーキを渡しながら、
藍花「建人、さっきはごめん」
建人「あー、心も体もいってーわ」

奈々「建人くん、ごめんね」
建人「奈々、改めて謝られると余計にくるからやめて」
藍花「建人、泣いてもいいよ?」
建人「泣かんわ」
藍花「えっ泣かないの?」
建人「うるせーよ」
藍花、自分のケーキを見つめながら、
藍花「……私、昨日泣いたよ」
奈々「え? どうして?」
藍花「建人に、奈々に告白するから協力しろって言われた」
奈々「え?」
建人、呆けた顔で、
建人「は?」
藍花「私は建人が好きだった」
建人「はーーー? なんで今言うんだよ」
藍花「だって、二人が告白して、私だけ言わないとか卑怯じゃん」
建人「……」
藍花「返事は?」
建人「好きな人がいるから、ごめん」
藍花、笑顔で、
藍花「それで良し」
建人「なんか、ごめん……」
藍花「なんで? 知らなかったんだから、仕方ないじゃん。むしろ、今言えてすっきり。2人のおかげ」
建人「協力しないってのもあったんじゃね?」
藍花「なんで? 好きな人が幸せなら、嬉しいじゃん」
建人と奈々、顔を見合わせる。
奈々、両手で口を押さえて笑いだす。
建人「分かった分かった、お前には色々と勝てんわ」
藍花「まあ、私も泣いた後で気付いたんだけど」
奈々「藍花、凄いね」
建人「しっかし、見事なまでの一方通行トライアングルだなー」
面白い表現ではあるが、もっと「おおっ!」ってなる表現が欲しい。
藍花、トライアグルを鳴らす真似をして、
藍花「チーン」
建人「やめとけ」
3人笑う。
藍花「とりあえず、振られケーキ食べますかー」
                          (おわり)

イルカのコメント

分析会でフィードバックした『煩悩』と同時期に提出されたものなので、問題点は共通しています。

米さんの特徴は、表面上のセリフとして読めば、非常に滑らかに見えるのですが、ストーリー展開としてはほとんど意味のない会話ばかりであるというところです。

滑らかに見えるセリフを書けること自体は損ではないどころか、能力なので、大切にしつつ、「何を喋らせるべきか?」を考えていくことが大切です。

具体的にいえば、

「藍花がケーキをとりにいく」行動がカタリストと言えそうですが、そこまでのシーンはストーリー展開としては無意味な会話といえてしまいます。

ログラインでもわかるとおり、主人公のセットアップが出来ていません。

主人公どころか、このストーリーでは、3人がそれぞれ、誰かを意識しているということを、観客にセットアップしておかないと、告白が唐突に見えてしまいます。

告白を見て「あ、そういう話だったの?」となってしまうのです。

これは、米さんが、まだクリアしていない、「結婚に関する」2人芝居をしっかり書くというところにも繋がります。

「結婚したい」という男と、「結婚したくない」という女というwantを明確にして書くように指定したのはこのためです。

ここでも藍花のwantは「建人に告白の機会をつくってあげること」という表面的なものと「本当は建人を好き」で、もしかしたら「邪魔したい」「失敗すればいい」といった気持ちもあるかもしれません。

そのwantが、「ケーキをとりにいく」前にはっきりと観客に伝わらないと共感ができないため、「あ、そういう話だったの?」になってしまうのです。

チキンだと問題集といった、コントのようなやりとり自体は面白くても、それらの会話はストーリー上の役割を果たしていないのです。

藍花同様に、建人の感情もセットアップしなくてはいけません。

主人公ではないので多少、遅れてもいいですが「ただ好き」という設定ではなく、奈々のどういうところに惹かれていて、「ああ、この人は、この子のこういうところが好きなんだな」という気持ちが伝わるようなシーンを見せるべきです。

二人で、藍花の家にくる途中、どんな会話をしていたのでしょう?(ちなみに、そのときに告白しなかった理由は? 藍花の家で二人きりになる必要があったのか?)

いつぐらい前に、どんなきっかけで奈々に恋をしていて、どうしてこのクリスマスに告白しようと決心したのか?

そういったものが、滲み出せていると、振られた建人にも観客が共感できて、せつない気持ちを共感できます。

奈々に関してはツイストにあたるので、「藍花を好き」というセットアップまでするとネタばらしになってしまいますが、ミスリードして「建人のことを好きかも」とかできれば、「実は藍花が」というのがツイストとして効いてきます。「ああ、だから、さっき、あんなこと言ってたんだ!」という初見で気付かないようなフリを入れられると、より効かせたりできます。

とにかく、3人をセットアップするのは、それだけで大変です。

恋愛はとくに本音と建て前があるので、それを巧みに描き分ける必要があります。

また、トップシーンのスプーンを目に当てているのは意味深で、面白い入りだと思ったのですが、特別な回収がなかったのが残念でした。

オシャレなシーンでも意味がないと、演出倒れしてしまいます。

ストーリーとしての意味を込めて回収まで持っていけると、読み手は「おおっ!」となります。

少女マンガチックなところは自覚されているとのことでした。ラブストーリーの大家を目指すのかどうか、今後の方向性次第かもしれません。

とはいえ、まだ数本の脚本で方向性まで固定する必要はないとも言えます。

ラブストーリーの特徴を、いくつか思い付くままに再確認しておきます。

・誰にでも書きやすい(特に学生もの)ので、クリシェが山のようにある。センスが問われる。

・「恋愛」は精神的なので、肉体を使ったアクションなどが入れづらい。セリフ一つ一つに緊張感を持たせ、かつセンスがある表現が求められる。

・本音と建前を、観客にきちんと伝わるように描く腕が必要。

・「少女マンガ的」な邦画は原作以外では少ない。オリジナルを書ける機会も少ない。また、その少女マンガ的な邦画は世界にも通じにくい。

・一方で、ラブストーリーというジャンルはあたれば大ヒットして名作と呼ばれるほどに評価される。そういうものを網羅的にチェックして、センスを磨くべき。

・ラブ要素というのは、必ずといっていいほど他のジャンルでも使うことなので、身につけておいて損はない。

・クリシェ的なシーンやセリフも、とにかく書きまくってみるという練習法は悪くない。初心のうちは書くだけで満足感があるが、100本ぐらい書いたり見たりすると、必ず「あ~前に書いたな」「どこかで見たな~」という感覚がでてくる。そこまでいって、ようはくオリジナリティを出す勝負が始まるとも言えるかも知れない。

まとめと次回へ
・バックストーリーをもっと考えましょう。
・ストーリー上、意味のある会話をさせてください。
・オチに対するフリを入れる。フリを入れたら回収する
・指示された通り、2人のメインキャラ、wantをしっかり立てて、会話をさせることを練習してほしいところ(強制はしませんが)。

緋片イルカ 2022.12.21

評点
イルカ:「好き」2点 「脚本」1点

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