ライターズルーム・シーズンベスト3(2026/1-3月)

ライターズルームメンバーから提出されている「10分脚本課題」のうち、シーズン(3ヶ月)内で1人1本、エントリーされたものをイルカが採点・講評し「ジーズンベスト」を決めていきます。

今期のエントリー作品

※作品の並びはエントリー順です(イルカが読む順でもある)。

※作品は修正稿で評価。★の点数はライターズルームメンバー内での採点。

※感想などあれば、ご自由にコメント欄にご自由に投稿ください。忌憚なき意見を歓迎いたします。

山極瞭一朗『スティール・ストール・ストールン』(★5.22)
https://irukauma.site/writersroom/study/45742/

脚本添削『白い石の埋まるところで』(★5.41)
https://irukauma.site/writersroom/study/45925/

脚本添削『アオちゃん』(★5.39)
https://irukauma.site/writersroom/study/45830/

脚本添削『殺し殺されチキンレース』(★4.63)
https://irukauma.site/writersroom/study/45966/

採点方式

2026年1月以降、ライターズルームでの採点ルールを変更したのに合わせて、シーズンベストでも同じ項目にて採点するように変更する。(※従来の採点ルール

変更内容は、従来の「好き」を細分化して「主観的な好き」「主観的な面白さ」「没入感」の各1~5点で評価し、平均点を従来の「好き」と同様に扱い、「脚本」はストーリーサークルの6項目のうち「題材」「視点」「構成」「描写」の4項目で各1~5点で評価し、平均点を従来の「脚本」として扱う。なお「テーマ」ではなく「題材」と「視点」に区別して採用したのは、ライターズルームメンバーより、その方が扱いやすいという意見が出たためである。

総合点は「好き」「脚本」の合計10点満点にて評価。3点は商業ベースに乗ってもギリギリ許されるライン。
なお、前回まで記していた脚本において扱われるいくつかの要素については、下記の通りとする。
・セリフの巧拙は「描写」に含める。
・タイトルが魅力的な場合は「題材」「人物」「テーマ」などの関連する項目への加点材料とする。
・シーンの繋ぎ方(トランジションなど)は「構成」に含める。ただし、一行一行の繋がりによる「読み心地」に関しては今回から「没入感」に含めることとする。
「ストーリーエンジン」によるワクワク感は、ビートとして機能している場合は「構成」や「テーマ」に含めるが、主観的なワクワク感の度合いに応じて「面白さ」「没入感」でも評価する。

ただし、物語は様々な要素が関連しあっているので個別の項目で厳密な評価をできるものではなく、作品の客観的な数値評価を目指すものではないことは留意しておく。採点方式を採用しているのは、項目別に「評価する/される」ことによって物語の細部に目を向けて意識を高めるためである。複数人の平均値として「長所/短所」があれば作者のクセを見つける目安とすることができるし、人によって評価が割れるとき「なぜか?」と考えることで学習の効果が高まるはずである。総合点の高低だけでなく、細分化された項目にも目を向けるようにしてほしい。

また、ライターズルームのフィードバックにおいて仕事を想定した「修正依頼」という項目を入れたため、「採点」と合わせて、こちらも追加した。実際に修正稿を求めるわけではないが、今後の参考にしたり、応募作品へのブラッシュアップを目指してほしい。

採点と講評

※以下、合計点の昇順。()内の★の点数はライターズルーム内での採点結果。

山極瞭一朗『スティール・ストール・ストールン』★2.5(★5.22)
https://irukauma.site/writersroom/study/45742/

合計点 好き 脚本
2.5 1.17 1.38
好き 面白さ 没入感
1.5 1.0 1.0
題材 視点 構成 描写
1.0 1.5 1.5 1.5

講評『キャッツアイ』を思わせる姉妹の盗人グループが、盗みを続けることに罪悪感を抱えているのか、柄にもなく万引きをする少年を捕まえるが、盗みをやめることはできないというお話。構成上は前半に盗むシーン、後半に少年とのシーンが置かれていて焦点がブレている印象を受けます。前半では警備員など登場してサスペンスフルに展開されるように見えて、緊張感はなくあっさりと盗み「ミスターシスター」を名乗るカードを残していくアニメのような展開(※ライターズルームの「10分脚本」は実写ドラマを想定し、基本的にはアニメ脚本は認めないが、どうしても書きたい場合は明記することというルールになっている)。「ミスターシスター」というネーミングは語呂が心地よくはありますが「なぜミスター?」という疑問、カードを残す姉妹怪盗というクリシェ、鬼の面、東洲斎喜重右エ門茶器などのアイテムにも世界観の統一感がなく、キャラクターの魅力も感じられません。防犯カメラのハック、暗証番号なども使い古されているだけでなく、現代としては古くさく、美術館の骨董品を守る設備としてリアリティがありません。一番の狙いは、盗みに入っている比名が、カメラのハッキングを待たずに潜入することで「盗みを辞めたい」「本当は捕まりたい?」といった描写だとは感じましたが、ト書きやセリフのタイミングが悪く伝わりづらくなってしまっていて、読み直して理解して想像して読んでも、感情が伝わってくる描写にもなっていないと感じます。盗み自体にリアリティがないため、感情(テーマ)の真剣度も伝わらないとも言えます。そのため、後半の少年の登場なども唐突に見えてしまい、後半の「人の物を盗むのは悪いことだから」「らしくないね」といったセリフが来るまで、何のシーンなのか掴みづらくなっています。それらの会話で、ようやく作者が伝えたかったことが見えてくる感じがしますが、セリフで説明されて、「そういう話なんだ」とやっと理解できる程度で、比名が「なぜ」「どれくらい」悩んでいるのかがわからず、前半の盗みシーンを思い出したときに軽いノリにしか感じられません。「盗みがやめられない」という比名という人間の本質をどれだけ掘り下げて描写できるかが、テーマの魅力につながります。現状は「盗みは悪いことだけよね~でも止められないよね~」ぐらいの軽いノリの悩みにしか見えません。ちなみに、比名、紀菜という姉妹は双子なのか、あえて似た名前にしたのだと思いますが音にしたとき「Hina」「Kina」と「い段」なので、非常に聞き分けづらくなってしまっています。作中の姉妹の描写に侵入する方とハッキングする方というハッキング的な役割の違いしか感じられず、後半の少年のシーンでは、どっちがどっちかも混乱しがちで、これらは「映像的な描写」「感情的な描写」「魅力的な描写」(クリシェじゃないオリジナリティ)による「主人公のセットアップ」が機能していないとも言えます。
修正依頼
・実写ドラマに見合ったリアリティで描いてほしい(取材したり、類似作品をしっかり見る)。
・10分というシークエンスの焦点を、前半の「盗みサスペンス」と後半の「犯罪への葛藤」のどちらかに絞ってほしい。
・ト書き、セリフの繋ぎ方のリズム、一文自体の言葉選び、映像的な表現などに気を遣ってほしい。

脚本添削『殺し殺されチキンレース』★4.5(★4.63)
https://irukauma.site/writersroom/study/45966/

合計点 好き 脚本
4.5 2.20 2.25
好き 面白さ 没入感
3.6 2.0 1.0
題材 視点 構成 描写
3.5 3.0 1.5 1.0

講評:トップシーンでは「女子生徒が踞り、苦しんでいる」中で、主人公の春野は冤罪を訴えながら、クラスメイトからリンチを受けている。何か事件が起きたことと、この作品全体を貫く暴力性がセットアップされる。次のシーンでは、春野は霧崎と「世間に喧嘩売りまくって先に殺された方が負けゲーム」をしていて、霧崎が「学級委員の給食に裁縫針仕込んだ」のに、春野が疑われるように仕向けたことが分かる。その背景には、春野が「人殺しの息子」であることがわかり、キレたように春野は霧崎を殴りつける。被害者だった春野が加害者となり、暴力が繰り返される辟易するようなシーンの後、殴られていた霧先は「袖で鼻血を拭うと、一転、沈鬱な表情になって」、「飽きた。そろそろ死のうかな」とつぶやき自殺しようとする。この転調により、暴力性の背後にある虚無感、絶望感のようなものが浮かび上がり、見事な描写だと感じます。死のうとする霧崎に対して、本意はともかく、ゲームの決着がついていないことを理由に霧崎を止める。そして、連続殺人犯に「嫌がらせを仕掛けてひんしゅく買って、うちの学校に突撃させて皆殺しさせるゲーム」をしようと提案し、霧崎も「良いじゃん」と言って、死ぬことは先延ばしになる。この辺りで終わらせておけば、短編映画として可能性がありそうだと感じます。狂ったキャラクター、非常識なゲームのアイデアなどから、現代的なテーマも浮かびあがっていて、この作品の高いポテンシャルを感じますが、読み心地が悪く、状況や起きていることがわかりづらい、無駄な会話で展開や流れが滞るといったことがマイナスとなっていて、現状の作品を高く評価することはできません。作品として修正すべき点は多すぎるため、ここでは詳細に触れることはしませんが、作者への応援メッセージとして、引き続き、基礎に忠実に「ていねいに書く」「しっかりと書く」といったとを意識しながら、書き続けていってほしいと思います。ただ、今回の作品では長いセリフが減り、言葉選びに関しても個性的になっている点は、成長している点として評価に値するとは感じます。
修正依頼
・誤字脱字を減らして、脚本ルールを守ってほしい(自分で読み直してから提出してほしい)。
・霧崎の性別が判別しづらいので明確になるようケアしてほしい(人物表ではなく本文中で)。
・ストーリーが適切に伝わるように構成や会話の順序、内容を工夫して欲しい。

脚本添削『白い石の埋まるところで』★5.0(★5.41)
https://irukauma.site/writersroom/study/45925/

合計点 好き 脚本
5.0 2.50 2.50
好き 面白さ 没入感
2.5 2.5 2.5
題材 視点 構成 描写
3.5 2.0 2.0 2.5

講評:妻が憎い夫を殺すという話は短編のホラー、サスペンスではクリシェではありますが「死体処理を請け負う農村」という題材には面白味があります。妻のセリフ「頭悪くてごめんね」という受け答え、「私をイラつかせるのだけはうまいよね」といった返しなどは「ゆり」らしさを感じますが、夫の描写がクリシェそのもので、それを誤魔化すかのように「昭和生まれの型落ち」と言ったり(クリシェを逆手にとったテクニックではある)、浮気の設定をつけたりしていますが、逆効果になってしまいっている印象を受けます。殺される側にも理由をつけなければと思ってしまったのかもしれませんが、このジャンル、このストーリーであれば、夫が殺されることに大きな理由は不要で、その方が怖さも増します。序盤から怪しい雰囲気はしっかりと出ているので「ジャンルのセットアップ」は出来ていると言えますが、裏を返すと予想外の驚きがない印象があります(あるいはミスリードできていない)。その他、構成にはいくつか問題があります。「生活習慣病の本」というアイテムによって、妻ゆりが料理に工夫などして脳卒中を起こさせたと連想されますが、この作品の魅力(フック)は「死体処理を請け負う農村」の方なので、脳卒中で倒れさせてから連れていくという段階は、ストーリーとしては不要(省くことができる)といえます。ゆりは村の存在を知っていながら、いつ倒れるかわからない「その日」を待っていたとすると違和感があります。また、トップシーンの「土いじり」→「浴室で急に倒れる」といった展開と描写から、妻が毒を仕込んだようにも感じられてしまい「生活習慣病の本」によって「殺した? 倒れた? どっち?」というつっかかりを感じます。この点は、ジャンル的に、あとで明かされるのかもしれないという期待で先を読む気になりますが、最後まで読んでもしっくりこなかったモヤモヤが残りました。構成的な観点でいえば「農村につくこと」(「カタリスト」、10分脚本では「PP1」を兼ねる)をもっと早めるべきで、夫は元気のままで農村で殺すことも可能かと思います(その方が驚くし、怖いし、夫の会話やリアクションから夫婦間に潜む問題を掘り下げることもできる)。また、農村についてから村長との会話では「一週間程度の管理人」という言葉から、この村へ来た目的が「セリフで語られて」いますが、その日の夜には殺してしまっているため、殺すために来ているように見えてしまっています。ここがミスリードが働いていない点のひとつで、しっかりと「管理人としての時間」をワンクッション置くことで、ミスリードできます(セリフで一言いっているだけでセットアップしたと思い込んではだめ。観客の印象に残るように描くことでセットアップやミスリードができます)。この村長や村は怪しいところではないというセットアップをすることで、あとで翌朝、リビングに村長が入ったときの驚きからの「最速記録更新ですよ」の転換も効果的になります。この辺りは、作者が知っている「この村の秘密」を隠そうとして書く仕切れていないという印象を受けます。しっかりと読者を騙してあげてほしいところです。タイトルにもある「白い石」については、トップシーンの「底石」が「人骨」に変わるという「オープニングイメージ」「ファイナルイメージ」を意識したつくりにはなっていますが、ラストが花を抱えて「おかえり」と言っていることで、ビートとしてうまく機能していません。夫に「古いのを捨てて、新しいの買う」というセリフがあり、ゆりが「そうだよね」と受けているため、ゆりは「夫を捨てて、新しい夫ないしは生活」を手に入れることを暗示しますが、最後には骨→花となって変化した夫を「おかえり」と迎えていることに違和感があります。ゆりは「夫を新しく変えたかった」「昔の優しい夫に戻ってほしかった(昔は花が好きだったとか)」といったセットアップがあれば、ラストの「おかえり」は効果的になり、逆算してオープニングイメージは「花を咲かせたい」といった、殺してでも夫に対して執心している妻という怖さにできますし、「新しい生活を手に入れたい」であった場合、単純に「おかえり」は違和感です。なお、別れたいだけなら、わざわざ殺す必要もないのでは? 別れられない理由(殺さなくてはいけない理由)が必要では?といった疑問も出てきますが、このジャンルの短編であれば、そこはあえて描かないのは許容範囲かと思います。いずれにせよ、トップシーンに対して、ラストが「ストンと納得して、気持ちいい」かんじのするシーンになっていないのが、もったいないと感じます。この原因は、夫を脳卒中にする展開と合わせて、作者が「ストーリーを説明する意識」に囚われすぎてしまっていて、ドラマや観客を驚かす意識に向き切れていないせいだと思います。妻は夫のセリフをモジる形で、面白味のあるセリフを言ってはいますが、妻の内面が掘り下げられていないことで、セリフも「表面的な面白味」でしかありません。妻自身の感情(キャラクターアーク)を掴み、妻自身の言葉がセリフとして出てきたとき、ただの「怖い農村ネタ」のショートより、深まった魅力的な作品になると思います。
修正依頼
・夫の嫌な部分を最小限に留めてほしい。
・「生活習慣病」の本はなくしてほしい。
・むしろ、元気な夫とログハウスに行く展開にしてほしい。
・妻の気持ちや、夫婦関係から、テーマを掘り下げてほしい。

シーズンベスト

脚本添削『アオちゃん』★6.2(★5.39)
https://irukauma.site/writersroom/study/45830/

合計点 好き 脚本
6.2 3.17 3.00
好き 面白さ 没入感
3.0 3.0 3.5
題材 視点 構成 描写
3.0 3.0 3.0 3.0

講評:アオちゃんという個性的な友人をモノローグを使いながら観察している主人公が描かれる話。求職活動中で、潜在的には焦燥感のようなものがあるのだと思いますが、そこをダイレクトにモノローグで語るようなことはせず、アオちゃんに対する言動から、その感情がにじみ出ていて見事な描写だと思います。やんわりとでありますが、現代的なテーマとなっています。深夜の地上波などで、このまま放送できるのではないかという完成度の脚本です。私小説やエッセイ的なジャンルなので、エンタメ性(ビート)を強めることで、この作品の魅力である「わたし感」が消えてしまう危険性もあるので、修正の方向性は定めににくく、演出家、キャストのイメージや要望次第とも言えそうな印象です。「わたしはアオちゃんに対してこう思っているよ」ということが描かれているだけで、物語としての展開はありませんが、全体を貫いているアオちゃんへの肯定感や優しさが心地よさに繋がっています。「モバイルバッテリーを返し忘れたり」「歯医者で値段を聞けなかったこと」「働いているアオちゃんの姿を見たこと」などから、主人公が大きな変化をすることはなく、日常が続いていくという描写。これらの「物語が始まりそうで始まらない」という展開があるからこそ、実はこの物語を引っ張っています。似たような作品でも無駄な会話が続くだけの脚本と、作者がビートを学んだ上で書いているかの違いが少なからず出ているように感じます。観客は物語が「始まりそうで始まらない」「終わりそうで終わらない」「変わりそうで変わらない」という永遠性のようなものに浸って、現実逃避をするかのように楽しみます。こういう映像作品を好む観客層が一定数いて(近年、増えているとも感じる)、そういう層には刺さる作品です。一方で、刺さらない人には全く刺さらず「退屈」とも言われます。少しでも魅力を高めるため、粗探しをするように、映像作品としての欠点をつつくとしたら、モノローグのタイミング、内容と会話のスムーズさ、それらの会話がされているときの映像描写などには修正の余地があると感じます。とはいえ、先述した演出次第でもあり、まあ、平凡なショットになっていても、この手のジャンルが好きな観客は許容するので問題とはなりません。「好み」の合うプロデューサーが見つければ、映像化されると感じます(コンクールとの相性は悪そうなのがもどかしい)。
修正依頼
・自己採点で「好き」2.4としていましたが、少なくとも3にする0.6の不足分は何が原因なのか、自分なりに言語化してほしい。
※一つの作品として完成していると感じる。足りないと感じるなら何が足りない?というかんじ。
・1回目のモノローグのタイミングを少し早くしてほしい。
・蒼という名前は男性にもいるので、誤読されないような登場時にケアをしてほしい。

総評

合計点 好き 脚本 好き 面白さ 没入感 題材 視点 構成 描写
スティール・ストール・ストールン 2.54 1.17 1.38 1.5 1.0 1.0 1.0 1.5 1.5 1.5
殺し殺されチキンレース 3.60 2.20 2.25 3.6 2.0 1.0 3.5 3.0 1.5 1.0
白い石の埋まるところで 5.00 2.50 2.50 2.5 2.5 2.5 3.5 2.0 2.0 2.5
アオちゃん 6.17 3.17 3.00 3.0 3.0 3.5 3.0 3.0 3.0 3.0


今回の採点方法の変更により「好き」の項目が細分化されたことにより『殺し殺されチキンレース』のような部分的に突出している作品が評価されづらくなったのが、妥当な評価基準、採点方式に落ち着いたと感じました。作者の太郎君には、過去にも何度も伝えているように基礎的な力をつけないと、せっかくの良い部分が世間から評価されず、作家として評価されることも難しいので、改めて「きちんと書くこと」への意識を高めていって欲しいと思います。

作者ごとへのメッセージとしては、山極さんは前回からの継続でリアリティのなさが問題となって厳しい採点結果となってしまいました。リアリティのなさは観客からのツッコミ所となりますが、このツッコミはSNSなどと相まって年々厳しくなっているといえます。いわゆる「むかしの物語」ではOKとされていたことは、現代ではNGになってしまうものがたくさんあります。極端な喩えでいえば「かぐや姫」や「桃太郎」といった昔話のリアリティに文句を言う人はいませんが、それは童話や幼稚な作品(あるいは教訓)と受けとられるだけで感動などしません。現代で同じリアリティのレベルで描いてはいけません。もっと最近の「昔」でいえば『スターウォーズⅣ』も、1978年の公開当時はクールでしたが、今では古くさく見えます。これは撮影やCGの技術だけでなく、編集のテンポ、ストーリーの「構成」や「描写」も古くさかったり遅かったりするのです。「昔」のものは「昔のもの」(古典)として受け入れられますが、現代の新作を同じ基準では評価してもらえず、低評価を受けるだけです。SNSに書かなくとも、みなさんも日常的に作品を見ては、ツッコミ所を見つけては文句を言ったり、ひっかかりを感じていると思いますが、その基準を自分たちの作品にも向けてほしいということです。その基準で面白いものができれば、世間からも面白いと評価されることになります。

また『スティール・ストール・ストールン』のような作品が、ルーム内で「5.22」とされていることにも、個人的には疑問を感じます。これが地上波や邦画として公開される作品として想像して見たいと思うか、見たとして(脚本を読んで)ツッコミを入れないぐらい「好き」だったり「面白い」と感じられるか? ルーム内のフィードバックし合う間柄ゆえの甘さが点数に出てしまっているのではないかと、今一度、考えていただればと思います。ライターズルームの三大方針は「最良の物語を目指す向上心」「利他的な精神」「迅速かつ円滑なコミュニケーション」ですが、最良をめざすとき、本当は面白くないものを面白いということは弊害となるし、利他精神として山極さんの成長をきちんと願うなら、ダメなものはダメと(もちろん、良いものは素直に良いとも)言うことが大事ですし、それが言いづらい環境があるとしたら3つめのコミュニケーションに解消しなくてはいけない問題があるのかもしれません。山極さんはルームの中では最年少でルームに加入してからも浅いので、経験値としても点数が低くなってしまうのは順当だし、ルームメンバーとしてのコミュニケーション機会も少ないので「言いづらい」「言われづらい」という部分があるのは当然ですが、少しずつ、この辺りの見方も変えて、チーム全体が良い方に向かっていくと良いと感じます。山極さんご自身は、どうぞくさらずに、つづけることで、必ず成長していくと信じていただけたらと思います。その証拠となるのは、雨森さん、さいのさんの成長にもあります。疑うようでしたら、お二人の初期の作品などを読んでみてください。僕はすべてを読んでいる訳ではありませんがレベルが上がっているのは明らかです(もちろん太郎くんも講評に書いたように成長しています)。

雨森さん、さいのさんともに成長している部分が違い、欠点となる部分も違うと感じます。雨森さんは長いのでいくつかクセを知っていますが、まず、小説のクセもあってト書きの読み心地が悪いこと、言葉で説明しがちになってしまうことがありました。前者の読み心地については、今回の『白い石の埋まるところで』では問題なく、悪いクセはなくなっていると感じました。後者の「説明しがちな点」も、セリフではかなり工夫されているのが見えて良くなっていると感じました。セリフでは頑張っていますが「お話を説明している」かんじが構成の方に出てしまっていて、その辺りの指摘と修正方向の案などは講評に書きました。ビートを意識した工夫もしているようで映像的な描写も増えていますし、雨森さんの武器ともいえる題材のオリジナリティも強化されている印象で、良いネタをしっかりと仕上げることで受賞も近いのではないかと感じます。さいのさんは、描写やトーンにはもともと魅力があり、目指したい方向性もそっち方面の作品だったのではないかと思いますが、洗練されてきていると感じます。ビートの明確な、いわゆる「アークプロット」とは違うタイプですが、日頃、分析などをしていることが無意識的にメリハリをつけるテンポにつながっているのではないかと感じます。さいのさんの初期の作品では停滞と感じる内容の会話も多かったのですが、今回の『アオちゃん』は同じような会話中心のシーンでもメリハリがあります。前回のシーズンベストではテーマ性がないことが課題のように書きましたが、このジャンルであればテーマ性はなくとも成立し、講評にも書いたように『アオちゃん』はこのままでも、相性の合う監督やプロデューサーの目に止まれば、そのまま映像化できるような完成度を感じます。ただし、短編映画というよりは地上波などの日常系のようなものが相性がよい印象。この方向を武器として進む場合に、別の課題となってきそうなのは、同じようなクオリティで似て非なる話をたくさん作らないと、仕事にはならないということ。例えば『アオちゃんの観察日記』のように、ワンクール分のエピソードを考えられるか?ということ。今回を1話目とするなら「歯医者の機械」のようなアオちゃんらしい話題、ネタを10本ぐらい書けないと、「1話は面白かったけど、あとは惰性」のようになってしまいます。これは、マンガ連載などの意識と似ています。これは、コンクール応募でいえば『アオちゃん』を60分ものに延ばして、ページをダレずに、心地よいシーンで埋められるか?ということになります。描写力はレベルが高いので、デビューして作家としてある程度の評価を確立できれば惰性も許容されやすくなるので、今は、描写力を武器に、どういう応募作を仕上げて実力をアピールするかということが、当面の課題になるかもしれません(僕含めて、みんなで一緒に考えましょう!)。

シーズンベスト3回目となり、継続的にみなさんの作品を読ませていただくことで、課題だけでなく、明らかに成長して点が見えて心強く思います。今回パスした米俵さん、休止中のしののめさんも、ご自身のタイミングで読ませていただけるのを楽しみにしています。「読ませろ!」という圧力ではないので、ご自身のタイミングで全く構いません。総評は一人一人へのメッセージのようになりましたが、言うまでもなく、他の人の作品から学ぶことは多く、逆に言うと他人から学べない人は、なかなか成長しないともいえるかと思います。いつも言っていることではありますが、ライターズルームという場を活用して、ご自身、皆さん、成長していけたらと思います。その成果として、まずは「受賞者一名」(コンクールの規模は問わず)を目指しましょう。

イルカ 2026.4.11

これまでの「シーズンベスト」

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