ハンバーガー食べますか?(リレーエッセイ6)

 珍しくマックに行ったらハンバーガーを作る機械が壊れていた。だからハンバーガーは食べられなかった。
 その事実を店員さんが、並んだ客に一人一人、前から順に、とても回りくどい方法で教えていた。
 まず「ハンバーガー食べますか?」と訪ねる。大抵の客は「食べます」と答える。すると店員さんはちょっと困った顔をして、「機械の故障でお作りできないんですよ」と、先の会話に意味がなかったことを開示する。そして空気が少し気まずくなる。
 何で訊いたんだよっていう話だった。
店員さんはさらに「ハンバーガーなしでも良いですか?」と畳み掛け、案の定場はさらに気まずくなり、客はモヤモヤとした感じでゴニョゴニョと仕方なしに承諾する。
 それの繰り返し。
  そういう指示を受けているのだろうか。最初からハンバーガーを提供できないという厳然とした事実を提示してしまった方が誰も気まずい思いをしなくて良いと思うのだが。
 しかも何人かの客は前の人の会話を聞いていそうなのに何故か律儀に「食べます」と答えている。そんな中途半端に抗ってみたところでハンバーガーを作る機械は失われてしまっているというのに。不毛だ。
 前方の会話に耳を傾けてモヤモヤしていると、やがて自分の番がやってきた。
 店員さんが問う。「ハンバーガー食べますか?」
 ぼくは日々の至らなさから不毛さには飽食していたので即座に「食べません」と答えた。
 珍しくコミュニケーションにおける最善を選べた気がした。
 そして綿埃のような達成感に陶酔しかけていると、店員さんはそそくさと進み、後ろの客に質問を開始した。
 次の客は気の強そうなおじさん。
 店員さんが問う。「ハンバーガー」「食べますねぇ!」
 早押しクイズが如く答えるおじさん。
 気まずさがはね上がった。
 よく見たらおじさんの目はガンギマリだった。
 店員さんはしばらく目を泳がせると、今まで以上に困った顔をし、やがて覚悟を決めるように息をついて言った。
 「申し訳ありません。機械の故障でハンバーガーはお作りできないんですよ」
 おじさんが両目を限界まで開いて、すかさず答える。
「でも食べますねぇ!」
 食べるのかよ。

 こういう人がいると困るから、無理なものは無理と最初の段階で言い切ってしまうのが一番だと思う。

2026.4.15 脚本太郎 

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