映画『私がビーバーになる時』(三幕構成分析#295)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

動物をこよなく愛する孤独なメイベルは、大切な池が破壊され環状道路が建設を阻止するために、ビーバーを探す中で、転送装置を目撃し、ビーバーに転送する。ビーバーとして動物たちに接触したメイベルはジョージたちから信頼を勝ち取るが、虫の王を殺してしまい追われる身となるが、池とジェリー市長を守るために、ジェリーに接触するが、ビーバーから人間に戻ってしまう。それでも仲間を得たメイベルはみんなで協力して、自然を守ることに成功する。
【フック/テーマ】
ビーバーに転送/異なる価値観を受け容れられるか。自然共生。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「誰もいない水槽の池」
 池の中から一匹のカメが現れる。
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「祖母と池へ」
 学校で叱られたメイベルは、祖母に連れられ森の池へ行く。そこでたくさんの動物たちが現れる。この物語は、この池を舞台にした動物たちの物語であることが示される。
Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「工事をやめさせ、動物たちの暮らす森の池を守ることができるのか?」

want「主人公のセットアップ」:「道路工事をやめさせたい」
 森の池を壊して、環状道路を建設しようとするジェリー市長とメイベルは対立。メイベルは愛する動物たちの暮らす池を守るために、道路工事をなんとしてもやめさせたい。
Catalyst「カタリスト」:「ビーバーがいれば池を救える」
 署名活動もうまくいかない中、メイベルはサム博士から、1匹のビーバーさえいればダムをつくり、そこに動物たちが戻ってくると、理論上の仮説を聞き、すぐにビーバー探しに行く。
Debate「ディベート」:「ビーバー探し」
 見つからない。夜、ビーバーがやってきたかと思えば、車に乗ってどこかへ消える。メイベルは咄嗟に追うと、大学に着く。
Death「デス」:「転送装置を目撃」
 サム博士たちは転送装置を使って何やら実験しているところをメイベルは目撃する。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ビーバー開始」
 メイベルはサム博士たちの反対を押し切り、ビーバーに転送する。
F&G「ファン&ゲーム」:「森の中へ」
 サム博士たちのからの追手を逃げ切り、大学から脱走することに成功するが、フクロウに掴まれ、森の中に放り出される。動物になっているから、他の動物たちの会話が理解できる。
Battle「バトル」:「池のルール」「ジャンヌダルク」「評議会」

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「なし/ジェリー市長の暗躍」

MP「ミッドポイント」:「ジョージが抱きしめる」
 ひとりぼっちだったメイベルが仲間と呼べる存在を手に入れた。
Reward「リワード」:「ローフたちも登場」
 メイベルの仲間はジョージだけではない。ローフたちも現れ、一緒に池と人間の王を救うことを決める。
Fall start「フォール」:「サメ登場」
 ジェリー市長とドライブの最中、頂点の捕食者であるサメが登場し、ジェリー市長に襲い掛かる。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「なし/陽気なジェリー市長」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ビーバー終了」
 ビーバーのメイベルはサム博士たちに回収され、人間のメイベルに戻る。ジョージと離れ離れに。そして動物たちの大群が押し寄せ、メイベルたちはとらわれる。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「タイタス、ジェリー市長に転送」
 評議会にとらわれたメイベルたち。タイタスはジェリー市長に転送して、人間を潰そうと画策する。ジョージもタイタスにとらわれており、メイベルはジョージを裏切った罪悪感に苛まれる。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「ジェリー市長の集会」
 ジェリー市長に転送したタイタスが集会に登場。そこにメイベルが登場。タイタスを説得しようとする。しかしタイタスには刺さらない。
Twist「ツイスト」:「森が燃える」
 タイタスの横暴がきっかけで、森が燃え広がる。メイベルは逃げる中、祖母から貰ったジャケットを失う。しかし火の手はおさまらない。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「鎮火」
 人間があらゆる動物たちの力を借りて、鎮火することに成功する。そしてメイベルはジェリー市長とともに後片付けをする。
Epilog「エピローグ」:「サム博士のもとで働く」
 大学を卒業したメイベルは、サム博士とともに動物や自然の研究をしたいと、彼女のもとで働きたいと志願し、受け容れられる。
Image2「ファイナルイメージ」:「池でジョージと」

【作品コンセプトや魅力】

 ピクサー作品は2026年以降、『トイ・ストーリー5』を筆頭に『Mr.インクレディブル』シリーズ最新作や『モンスターズ・インク』最新作などが控えている。ビッグタイトル揃いの中、その先陣を切る形で公開されたのが本作だ。
 キュートでモフモフなビーバーを愛でる癒し系コメディムービーかと思いきや、侮るなかれ、しっかりとしたテーマが描かれており、考えさせられるものがある。それこそ最大の魅力だろう。また本作の監督がジブリ作品の『平成狸合戦ぽんぽこ』に影響を受けたと公言しており、比較視聴するのもひとつの楽しみと言えよう。

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」5
 タイトルから私がビーバーになる話であることが自明のため、PP1とPP2は観る前から予想がしやすかった。PP1がビーバー開始で、PP2がビーバー終了である。キャラクターアークで考えると、PP1はひとりぼっちで自分勝手なメイベルがビーバーになることで、仲間探しの開始と捉え、MPでジョージから抱きしめられることで、仲間を得て、PP2でビーバー終了により仲間を失い、ACT3のBBへと、考えられるだろう。またテーマとしては、異なる価値観を認め合うこと・自然共生であり、メイベルの仲間探しの過程は異なる価値観を理解する過程でもある。分析表に起こしてみると、MPが62%地点とやや遅れていたが、映画館で観たときは体感として遅いなとは感じなかった。
 ピクサー作品は比較的構成がわかりやすく、勉強になる。テーマも込められていて、考えさせられるものもある。最初予告等で見た際は、動物vs人間をテーマとし、自然を破壊する人間を露悪的に描く作品だと思っていた。つまり、メイベルvsジェリー市長といった構図だ。ところが、ACT2の前半まではそのように進むが、ACT2の後半以降は生きとし生けるものすべてを巻き込んだ一大バトルの構図へと発展していく。メイベルとジェリー市長が手を組んでタイタスに挑むことこそ異なる価値観を認める象徴といえるだろう。
 余談であるが、本作は映画館で視聴した。知人とともに行ったのだが、知人にはものの見事にハマらなかった。「私がビーバーになる意味がわからない」のだそうだ。なるほど確かに、リアリティを超越し、ファンタジーすぎるので、そういう人もいるよなと妙に納得した。
(山極瞭一朗、2026/06/13)

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