何者かによって“球”がこの地上に投げ入れられた。その球体は、情報を収集するために機能し、姿をあらゆるものに変化させられる。死さえも超越するその謎の存在はある日、少年と出会い、そして別れる。光、匂い、音、暖かさ、痛み、喜び、哀しみ……刺激に満ちたこの世界を彷徨う永遠の旅が始まった。これは自分を獲得していく物語。(Amazon商品解説より)
一個人の感想:
知り合いに勧められて第一話を見た。独特な雰囲気と「球」という設定が面白いと思った。どう展開していくのだろう?というフックはあった。アニメオリジナルかと思ったが、原作があって『聲の形』 を描いた人だと知って、ちょっと意外だった。作者が女性だということも知った。ちなみにアニメで見ている間は原作のマンガは読まないし、ネタバレも知らずに見るタイプ。
翌日、第二話~第四話を見た。和風テイストのムラの話から始まる。『もののけ姫』、守り人シリーズの気配を感じる。手塚治虫の『火の鳥』も浮かぶ。不死身の観察者というのは火の鳥かきているのかもとも思った。ヤノメとかいう街?へ連れていかれてからは、ストーリーの軸が「球」から、村人のドラマみたいになって普通のストーリーになってしまっている。生贄話というのはクリシェ。キャラの個性も欠ける。街の設定、セリフ回しなどに甘さを感じる。「ハッピー」とか、手紙や文字を知らない文化の人間が「住所」と言ったり、言葉が文化に由来するところまで考えてきれていない。ゾンビのように再生される描写はおもしろい。つづきは見る予定。見て、気になることがあれば、つづきの感想を書く。(2021/06/08)
第5話~第9話まで見た。また旅に出てシークエンスが変わったというかんじか。ショートストーリー的にいくつも旅をしていく構造なのだろうか。それにしては一つのシークエンスが長すぎる。1~2話でまとめないと、そういう構造には見えない。メインストーリーがフシの成長(記録?)+謎の敵との戦いだとすると、設定を小出しにするのは、苛つきを感じる。ミステリーというより設定隠し。ストーリーエンジンのミステリーは、ひとつの謎では引っ張れる時間的な限界がある。小出しにしているのが、が苛つきの原因。次のステージにストーリーを進めないと興味を引っ張りきれない。謎が大きくて「全く何がおきているか、わからない」ぐらいであれば、小出しでも引っ張っていけるが、設定から、ある程度、予想できてしまうので、もったいぶっているように見えてしまう。どういう設定で、何を目指しているかというのを見せた上で「それが達成できるか?」というサスペンスに変えていくことでエンジンが維持できる。隠している設定部分が、主人公のwantに関わるので致命的。謎の敵とのアクションも唐突で、感情移入していないままアクションを見せられても緊張感がない。負けてもどうなるのか、よくわからない、意味不明な戦いを見せられている。また、シークエンスごとで、主人公がサブ扱いになっているわりに、周りのキャラクターが魅力に欠ける。設定やイベントも、感情ドラマ(セリフ)を言わせるために配置されているご都合展開が多くて、説教臭い。鬼滅でも、そうだったが、キャラクターの死に際に回想を入れるパターンはあざとい。流行りというよりは、キャラクターのセットアップがきちんとできていないために、慌てて回想で説明している。本来なら、キャラをセットアップして感情移入させて→でアクションシーンに入るので、見ている方もヒヤヒヤしたり、死んだときに「あっ!」と驚いたりするのだが、セットアップができていないから、死に際に回想を入れるハメになる。9話だったか、グーグーという少年とリーンという少女のやりとりなども特徴的だったが、ワンシーンのセリフだけのやりとりで、関係性を進展させている。構成を入れるのであれば「話し合う」→「折り合いがつかない」→「事件」→「その結果、和解」といったように展開していくことで、関係性が深まっていき、これが葛藤の基本でもあるのだが、一回の話し合いで解決してしまうのは、ドラマ上では「話し合いで住む程度の悩み」ということになってしまう。それが説教臭さにつながっている。命をテーマにしている割に、作者の命に対する視点に深みがないのではないか。それがキャラクターにも反映されている。キャラがちょいちょい自殺を考える思考も作者が見え隠れしているように感じる(作者が出ている=キャラと合っていない)。(2021/06/10)
緋片イルカ