映画『PLAN75』(三幕構成分析#220)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

ミチ:78歳のミチは、歳が近い同僚が勤務中に倒れたことにより仕事を失い生活がままならなくなり、友人の孤独死を目の当たりにしたことをきっかけに、プラン75で自死を選ぶが、手違いで死ねなかったことを機に生きることを選ぶ。
ヒロム:プラン75をすすめる立場にある市役所職員のヒロムは、長年絶縁状態にあった叔父が申し込みにきたことにより、引き止めたい気持ちを抱くが、施設に送り、本来まとめて処理される遺体を家族として引き取る。

【フック/テーマ】
75歳で生死を選択できる制度/死に納得できるか

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「なし」
EDと結びつかないのでなし。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「プラン75」
序盤ラジオで説明。高齢者を狙った殺人事件が多発したことにより、75歳以上の老人に生死を選択できる制度が可決した世界。死を選ぶにあたってのヒューマンドラマ。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「仕事と家族がなくても生きていけるか」
老いて生活がままならない状態の人間は、どうすれば正解なのかを問いかける。

want「主人公のセットアップ」:「一人暮らし」「市役所職員」
ミチ:仕事をし、1人で生活する老人
ヒロム:プラン75をすすめる立場

Catalyst「カタリスト」:「最期について」「叔父の申し込み」「
ミチ:最期の迎え方が話題になる。専門施設の金額が高い。孫についての話も共感できない。孤独に改めて向き合うきっかけ。
ヒロム:20年連絡を取っていなかった叔父が申し込みに来る。

Debate「ディベート」:「手を握る」
ミチ:友人宅に泊まる。友人から娘や孫と音信不通と聞き、友人の手を握る。寂しさの共有。この友人がいれば孤独ではないのかもしれない。
ヒロム:叔父の家を訪れる。

Death「デス」:「友人が倒れる」「遺灰」
ミチ:勤務中に友人が倒れる。
ヒロム:プラン75利用者の遺灰が廃棄物として処理されることを知る。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「退職」「迎え」
ミチ:友人が倒れたことで高齢者は全員退職に。
ヒロム:施設に送るため迎えに行く。

F&G「ファン&ゲーム」:「支援のない老人の生きづらさ」「食事」
ミチ:家を借りれない。仕事が見つからない。生活保護を受けるのは気が引ける。日雇いの仕事はきつい。現実に直面する。
ヒロム:最後の食事中に叔父に酒を注文する。

MP「ミッドポイント」:「友人の孤独死」「帰る?」
ミチ:友人の家を訪れ、孤独死しているのを発見。すでに腐敗臭を漂わせた状態で、ショックを受ける。
ヒロム:酔って嘔吐する叔父に、はじめて中止を提案する。

Fall start「フォール」:「成宮と会う」「兄に会いたい」
ミチ:プラン75のサポートコールセンターで働く成宮と会い、楽しい時間を過ごす。
ヒロム:叔父が、すでに死んでいるヒロム父に会いたいと話す。死んで会いに行くことの現れ。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「最期の挨拶」「別れ」
ミチ:成宮からプラン75前日のアナウンスを聞く。楽しい時を過ごさせてくれた成宮と最後の挨拶。生きる選択(後戻り)をしない。
ヒロム:施設で降ろす。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「最後の時間」「引き返す」
ミチ:友人と繋いだ手。産めなかった子供への後悔。自分と向き合う。
ヒロム:青信号に気付かないほど考えこみ、引き返す。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「施設へ」「叔父を探す」
ミチ:プラン75を実行する施設入り
ヒロム:引き止めるために探す。

Twist「ツイスト」:「死ねなかった」「死んだ」
ミチ:職員のミスにより死なず。
ヒロム:すでに死んでいた。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「外へ」
ミチ:施設の外へ。死から逃げ出した。
ヒロム:廃棄物ではなく家族として火葬することを選び、遺体を施設の外へ持ち出す。

Epilog「エピローグ」:「明日もまた会いましょう」
友人たちと歌った歌を歌う。歌詞に「明日もまた会いましょう」と入っていることから、生きる選択をしたと匂わせている。

Image2「ファイナルイメージ」:「なし」
OPと対になるものがないため、なし。

【作品コンセプトや魅力】

魅力は後期高齢者の生活を丁寧に描き、現実に近いものにしていること。
現実に寄り添うと「死」を避けることができず、納得できる死を遂げられる人は少ない。
プラン75という制度を通して、高齢者自身、そして制度に関わる人々が納得できるかどうかを問う。

【感想】

「好き」5「作品」5「脚本」4
高齢者の暮らしがリアルで、胸が締め付けられました。爪を植木鉢に撒く。テレビを泥棒対策で使う。職安の検索機で仕事が出ない。お金がない……などの細かい部分が丁寧で、それに対してのセリフも本物の言葉だと思いました。
関係者たちの葛藤もわかりやすかったと思います。
なので、自然と「もし本当にプラン75があるなら、私はどうする」という考えが浮かびました。
しかし、様々な視点を入れることで中途半端になったままの設定も目立つように感じます。
たとえば、マリアの自転車や制度を受け入れていない層とか。
プラン75についてもニュースや口頭の説明だけだったので、ややセットアップ不足と思えるところもありました。
重いテーマに加え、想像に委ねてくる部分が多いです。
ですが、セリフの余白を感じたり、情緒的なシーンを見たい人にはハマる映画だと思います。
私は好きな空気感でした。
※ビートについてですが、メインはミチで取ってます。ヒロムのほうもわかりやすかったので青文字で記載しました。

(雨森れに、2025/3/21)

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