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『自称探偵シュガーの事件簿』
俺の名前はシュガー。職業は私立探偵。
依頼はまだない。
依頼がないのに探偵なのかって?
ふっ、心配することはない。俺ぐらいになると事件の方からやってくるのさ。
file2 浮気男の嘘
「お砂糖とミルクはご利用ですか?」
俺の珈琲にミルクなどいらん。だが、
「砂糖は六つで」
会計を済ませた俺は喫煙席へと向かった。俺の吸ってる銘柄が知りたいって? タバコは吸わない。健康に良くないからな。喫煙席に向かったのは禁煙席がいっぱいだったからだ。
日曜の午後はどこも混んでやがる。おっと、カウンター席が空いた。
コーヒーを飲んで一息つくと、隣のカップルの声が耳に入ってきた。
「他の女と会ってたんでしょ?」
女が男を責めている。なにやらヤニ臭い、いやキナ臭いにおいがする。
「私がメッセージしたら一時間以内に電話してくる約束でしょ」
「だから返したじゃねえかよ」
「59分だった。ギリギリすぎる」
「間に合ってんじゃん。そのために、俺、コンビニ行って充電器買ったんだからな。1000円も払ってよ」
「ウソくさっ」
「嘘じゃねえって。証拠見せてやるよ」
男は充電器がささったままのスマホをとりだした。
「レシートは?」
「はいはい。ちゃんとありますよ、ほら」
男が財布からレシートをとりだすと、女はそれを細かく精査した。
「ん、1460円。これ。おかしくない?」
「は?」
「さっき1000円払ったって言ったけど5000円札で払ってんじゃん」
「それは、だいたい1000円って意味で言っただけだよ」
「じゃあ、財布見せて」
「え?」
「5000円札で払ったなら1000円札が3枚あるはずでしょ」
男は財布から紙幣をとりだして女の前で数えてみせた。4枚あった。
「ほらな。それに、店の場所見てみろって。この近くだろ。時間だってちょっと前だろ」
「ここに来る前に買ったってこと?」
「そう。昨日からスマホ放置しててさ、家出たらバッテリー切れてたのに気づいたってわけ。そんで、ここに来る途中で買ったの。お前のこと淋しくさせちゃいけないと思ってさ」
「ほ、ほんと?」
「ほんとだって、俺は嘘なんかつかねえ」
「じゃあ……私のこと愛してる?」
「あたりまえだろ」
このカップルがどうなろうと俺には関係ないが、男は明らかな嘘をついた。探偵として見過ごすことはできない。
「お嬢さん、そんなシュガーな嘘に騙されちゃいけないぜ。この男は浮気している」
★クエスチョン
シュガーが見抜いた男のウソとは何でしょう?
解決編はCM(広告)のあと!
■解決編
俺はこう推理した。ポイントは2つ。
1つは、男はメッセージを受け取ったら一時間以内に電話するという約束をさせられていて、それを忠実に守ったこと。もう1つは昨日からバッテリーは切れていたと言っていたこと。
本当にバッテリーが切れていたなら一時間前に届いた女からのメッセージを確認できただろうか? その後に切れた可能性はあるが、少なくとも一時間前のメッセージを確認していたから、ぎりぎり59分に電話をかけられたのである。
つまり一時間前、メッセージは見たが電話ができない状態だったのである。
俺が指摘すると、男はあっさり浮気を認めた。女からのメッセージを受け取ったとき、別の女と真っ最中だったらしい。女はヒステリーをおこしたが、男は逆ギレして「お前の束縛にはもう耐えられない」と別れを告げて去って行った。
俺にかかればマカロンなみに甘ったるい事件だったぜ。
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