ウラジミール・プロップ(ウラジーミル・プロップ)はロシアの魔法物語を構造的に研究しました。その中で共通する「機能」を見つけました。これは現代で言えばビート=モチーフ素と同じです。
また、「機能」を行う行為者も想定しました。これはキャラクターのロール(役割)に相当します。
ハリウッド三幕構成の欠点の一つに行為者という考え方が強いことがあります。「主人公が変化するもの」という考え方に縛られすぎるため、群像劇にはビートシートが応用しづらくなっているのです。
しかし、「ロール」の考え方を持ち込むことで群像劇にもビートシートが使えます。つまりはビートによっては主人公が行わなくてもよいものがあるのです(ビート解説が終わってからいずれお話します)。
行為者を表す記号
a:主人公
b:偽の主人公
c:敵対者
d:贈与者
e:助手
f:対象者(王女)
g:依頼者(派遣者+王)
h:追跡者
31の機能
1 不在 a, f 主人公または対象者が一人になる
2 禁止 a, f 主人公または対象者に禁止を課す
3 違反 a, f 主人公または対象者は違反する
4 情報の要求 c 敵対者は主人公または対象者に情報の要求をする
5 情報の入手 c 敵対者は情報を入手する
6 策略 c 敵対者は、主人公または対象者に策略をしかける
7 幇助 a, f 主人公または対象者は、敵対者に結果として幇助する
8 加害・欠如 c 敵対者は、主人公または対象者に「加害」「欠如」を生じさせる
9 派遣 g 依頼者は、主人公を派遣する
10 任務の受諾 a 主人公は、依頼者に任務の受諾をする
11 出発 a 主人公は、出発する。
12 先立つ働きかけ d 贈与者は、主人公に贈与に先立つ働きかけをする
13 反応 a 主人公は、贈与者の先立つ働きかけに反応する
14 獲得 d 主人公は、「何か」を獲得する。
15 空間移動 a 主人公は、「呪具」、「助手」のサポートなどで、「敵対者」のいる場所に移動する
16 闘争 a 主人公と敵対者は闘争する
17 標付け a, f, c 主人公は、敵対者もしくは対象者から「標付け」をされる
18 勝利 a 主人公は、敵対者に勝利する
19 加害・欠如の回復 a 主人公は、8「加害あるいは欠如」を回復する
20 帰路 a 主人公は、出発してきた場所へ戻るため帰路につく
21 追跡 b, h 追跡者が、主人公を追跡してくる
22 脱出 a 主人公は、追跡者から脱出する
23 気付かれざる帰還 a 主人公は、気付かれざる帰還をする
24 偽りの主張 b 偽の主人公が偽りの主張をする
25 難題 a 依頼者は、主人公に難題を課す
26 解決 a 主人公は、難題を解決する
27 認知 g, f 依頼者または対象者は、主人公を認知する
28 露見 b 偽の主人公の正体が露見する。
29 変身 a 主人公は変身する
30 処罰 g 依頼者は、偽の主人公を処罰する
31 結婚ないし即位 a 主人公は対象者と結婚し、もしくは即位する
(大塚英志『ストーリーメーカー 創作のための物語論 』(星海社新書)より)
研究者による物語論
「アラン・ダンダスの物語の最小単位」