アニメ『さらざんまい』最終回死亡説から考えること

前回、銀の皿について書いて終わりにするつもりでしたが、最終回で三人は死んでいるという「死亡説」というのがあるらしくて、この記事を書くことにしました。「死亡説」を解釈していく記事でありません。むしろ「なぜ、いろんなアニメで死亡説が囁かれるのか?」を考えてみたいと思います。

【川=三途の川?】
「死亡説」を真剣に取り合うつもりはないので論点はどうでもいいと思っていますが、一つだけ率直に「おい、逆だろ(笑)」と思ったことがありました。「欲望の川を渡れ」というシーンがありまるが、それを三途の川を渡って死亡したと捉えていること。欲望をつなぐ=生きることして描かれている作品なのだから「欲望の川を渡れ」というのは、むしろ向う側から戻ってくる意味だと思います。
久慈は記憶を銃で消しながら橋を渡っていますが、向う側へ行こうとしている。それを一稀と燕太が連れ戻してきたというのは映像を見てもわかります。

解釈は自由だし、そういうアニメの楽しみ方も自由だと思います。前回も書きましたが、日本の観客のリテラシーの高さとも言えます。
一方で、様々なアニメに「死亡説」がでてくることの意味を考えてみることも大事ではないかと思います。

そもそも、生と死の世界には境界があります。日本では臨死体験で見ると言われる川のイメージが強いですが、境界をわけるものであれば門であったり、扉であったり、注連縄(しめなわ)一つあるだけでもいいのです。そこに人が境界を感じたときに、それは世界を分けるものとして機能します。

ジョーゼフ・キャンベルのモノミスに寄れば、非日常の世界にいくには「最初の境界を越える」必要があります。ハリウッド三幕構成のビートでいっても「プロットポイント」にあたるシーンには境界を表すイメージアイテムが意図的に使われます。

つまり、この境界にあたるアイテムを見つけさえすれば「死亡説」は簡単に成立してしまうのです。

【どうして死亡説で解釈したがるのか?】
「死亡説」は夢オチ、幽霊オチ、宇宙人オチのような、ご都合エンドだと思います。作者が意図的に使っていたら、読者はがっかりするでしょう。
『さらざんまい』に限らずし「死亡説」はたくさんありますが、面白半分で言っているならともかく、もしかして作品のテーマが理解できないから、「死亡説」を持ち出すのかもしれません。
作品のテーマやメッセージが受け止めかねて、それでも自分なりに答えを出したいと思ったときに「実は、みんな死んでるんじゃね?」と解釈するのは簡単です。
そういう意味では、先に書いたリテラシーが高いというのはまちがいかもしれません。

小さな子供が「僕は本当はパパとママの子じゃないんだ」とか「僕以外は本当はみんな死んでるんだ」などと妄想することと同じです。
ストレスが強く現実を受け入れかねないときに、空想の世界に逃げます。
子供が幽霊などを信じやすいのも、生きている世界で理解できないことが多いからです。
太古の人類が、雷を電気とは知らず、神のうなり、神鳴りと理解していたのも似ています。

【作り手のあいまいさ】
芸術や哲学思想のなかには、簡単に理解できないことこそが高尚で価値のあるもののように考える人がいます。
そういう考えも自由だとは思いますが、作り手としてその立ち場をとるのは僕は怠惰だと考えます。
そういうものが好きなら、精神障害の人が書いた文章やAIが完全にランダムに書いた支離滅裂なものを、解釈して遊んでいればいいのです。

中途半端に「読者に委ねる」といった姿勢でラストを曖昧にしたり、唐突に物語を切る作者もいますが、構成から分析すればその作品のテーマは浮彫になります。
テーマというのは作者個人が伝えようと思っていることではなく、物語自体がもつ構成によるからです。(そのことについてはこちらの記事もご参照ください)
作者は、作品の生みの親であっても、生まれてきた子供(作品)の生き方まで決める権利はないのです。
いい子に育ってほしいのであれば、愛情をそそいで、きちんとテーマが伝わるように物語るべきだと、僕は考えます。

緋片イルカ 2019/06/24

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