2020/7/18に行われた「イルカとウマの読書会」の様子です。
mp3(91分43秒)
youtube版
当日配布した配付資料
レジュメ
200717_dokusyokai
三幕構成分析表
※ご自由にダウンロードしてください。
資料にでている関連記事
「ビートの本質(中級編5)」
三幕構成Q&A⑨「ビートシートって何?」
「小説らしさ」とは?(「100文字小説大賞」の選考基準)
【物語に敬意を払うこと】(文学#27)
【物語の価値とは?】(文学#28)
【文学が闘うべきもの】(文学#29)
【ライターズコア】(文学#16)
【ライフワーク】(文学#17)
読書会報告#1『むらさきのスカートの女』今村夏子 (三幕構成の音声解説)
朝日新聞「平成の30冊」を発表
次回の読書会→イルカとウマの読書会#5『破局』遠野遥(+作品合評会)
会話にでてきた作品
アスペルガー症候群は、社会的相互性の障害があり、一方通行のコミュニケーションになりやすかったり、こだわりや限局的な興味のために、それに没頭することを特徴とするタイプです。診断基準に該当する障害レベルの人は、一般人口の〇・五~一%程度ですが、軽度なものまで含めると、恐らくその十倍以上の人が、その傾向をもっています。
このタイプの人は、共感性の発達が悪いため、相手の気持ちがわかりにくいのが特徴です。そのため、過度に形式的に振る舞うことで、ボロが出るのを防ごうとします。相手の意図を読み損ねて、トンチンカンな反応をすることも少なくありません。言葉のキャッチボールがうまくできず、会話もぎこちないものになりがちです。ただ、自分の関心のあることを喋らせたら、何時間でも熱心に喋っています。微妙なニュアンスが苦手で、言葉を文字通りに受け取り、冗談やユーモアが通じにくいところもあります。人との関わり方が独特で、〝宇宙人〟のような常識を超えた感性の持ち主が多いと言えるでしょう。社会常識というものがわからず、ズレた行動をしやすいのですが、悪気はありません。むしろ、心が純粋で、腹の中がなく、誠実で、信用がおける人が多いと言えるでしょう。
構成に関しての補足
「プロットアーク」と「キャラクターアーク」がズレていることは音声の中でも指摘しましたが、キャラクターアークだけで捉えた場合、小説でのラストシーンがMPになります。行ったきり帰ってきていない物語ともいえます。主人公の感情を無視して、プロットーアークだけを軸に構成をとらえるなら、これはバッドエンドとなります。なぜなら「リワード」が機能していないからです。主人公はコンビニ店員として満たされていた日常から、白羽さんと出会うことによって「このままではいけない」という感情を持ち始めます。そのアークの頂点となるのが「家族がどうしてあんなに私を治そうとしてくれているのか、やっとわかったような気がする」という気付きです。これがリワードとして機能するタイミングでしたが、「わかったような気がする」とあるように、完全に変化はしきれなかったのかもしれません。新しい自分をみつけきれず、結局、コンビニ人間という元の自分に戻ってしまったとも、構造的には言えるからです。コンビニ店員として生きていくことが良いか、悪いかは個人や社会の価値観の問題であって、物語構造とは別なのでここでは問題としません。あくまで構造的にはバッドエンド(変化しなかったor変化に失敗した)構造をしているということです。また、この構成が良くできているとかどうかといった問題でもありません。「プロットアーク」と「キャラクターアーク」のズレこそが、この作品の魅力を生み出しているのは明らかなので、これを客観的に分析することが、物語を読み解くカギだと思います(ビートを当てはめて三幕になっていることを確認するだけの作業に陥らないことが大切です)。
読書会後に読んだ村田さんの作品について → 村田沙耶香作品まとめ