【物語に敬意を払うこと】(文学#27)

「店員さんに偉そうにしたり、怒鳴るような人って嫌われますよね」

これは、いまの日本はサービス業に従事する人が多いことと関係あるのかもしれません。

現代の日本では、アルバイトを含めてコンビニとかスーパーとか、飲食や販売といったサービス業に従事したけ経験をもつ人が多くいます。

こういう仕事では、客に目の前で怒られたり、日常生活ではありえないようなことを言われてしまうことが、必ずといっていいほどあります。

もちろん明らかに店員側に問題がある場合もありますが、今回は言いがかり的なクレーマーをイメージしてください。

そういった不条理体験があると、自分が「お客様」になったとしても、店員さんに不遜な態度をとることはないのではないでしょうか?

この客と従業員の関係は、物語の作者と読者の関係にもあてはまるような気がします。

じぶんの物語を真剣に書いた経験があれば、他人の物語にも敬意を払います。敬意があると、物語に対する向き合い方がかわります。

たとえば、読みにくい文章とか、わかりづらい表現があったとき、敬意がない読み手は、安易に作者を切り捨てます。

「文章が下手」「わかりづらい」「矛盾している」「リアリティがない」などと一方的に批判して、作者にのみ非を唱えます。

これは「接客がなっていない」「サービスが悪い」といったクレームに似ています。

じぶんが理解できていないだけという可能性はないのでしょうか?

読者は神様で、作者はわかりやすく楽しめる物語をサービスするのが務めなのでしょうか?

これはコミュニケーションの問題です。

どこかの老害作家のように「最近は骨のある物語がない」なんて切り捨てる前に、じぶんから歩み寄ることで、気づかされることは多いはずです。

改めて客の立場になって、どう接客するべきかが見えるということがあるように、きちんと読むことによって、どう書くべきかが見えてくることがあるはずです。

緋片イルカ 2020/06/29

「店員側に問題がある場合」つまり「作者の側に問題がある場合」なんかについても、後日、改めて考えてみたいと思っています。

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