「幼年期の愛着スタイルからパーソナリティ形成」(キャラクター論46)

これまで、岡田尊司さんの本を中心にいくつか心理学関係の本をご紹介してきましたが、今回は僕なりに幼年期の状況からのパーソナリティ形成の流れをまとめてみたいと思います。

0. 誕生以前

 母体にいる間の赤ん坊はどこまで心理や思考が発達しているかは不明である。何週目かという発達の段階によっても変わるだろう。この段階での母の栄養状態、心理状態、胎教のような外部の感覚も、厳密には影響するであろうが、このあたりは明確な研究結果がないのでわからない。神経質かどうかといったことは皮膚の敏感さなどと同様に、遺伝的な要因もあるだろう。

1. 誕生

 愛着形成には2つの臨界期があり、その1つめが「産まれてからの数時間」である。
 胎内にいる赤ん坊は、栄養も与えられ、自分では何一つ努力することもなく生存することができていたが、誕生によってこの完全状態が失われ、初めての恐怖や不安を覚える。これはオットー・ランクのいうところの『出生トラウマ』にあたる。
 ここで安心感を与えることは、愛着が安定する要因の一つになる。愚図りやすい子などは、この第一愛着形成期に影響するのかもしれない。

2. 依存状態(0歳~1歳半頃)

 赤ん坊は生存に対して、保護者に依存するしかない。個々のケースは別として、ここでの保護者は母親としておく。愛着形成臨界期のもう一つの期間である。この時期に「安定型」「不安型」「回避型」「混乱型」の4つの愛着スタイルからどれかを選んで、不安に適応しようとする。スキーマ療法でいう「早期不適応的スキーマ」が形成されるのも、この時期だが、言語能力が未熟な赤ん坊にとっては愛着スタイルと呼んでおく方が自然である。大人になってから、振り返って言語化する際にはスキーマの捉え方が有効である。
 この時期、赤ん坊は母親から食事から排泄まで世話をされることで、母胎にいたときのような安心感を取り戻すことができれば、愛着スタイルが「安定型」になっていく。同時に、泣きさえすれば母親は自分のために何でもしてくれる自尊心も培われていく。フロイトのいう口唇期、肛門期、男根期の固着は、この時期の世話が不十分だったことに関連する。
 世話が不十分であったり、ネグレクトをうけることで、世話をされているようで不安が残る「不安型」や、世話を求める気持ちを抑え込み「回避型」の愛着スタイルを持つようになる。ただし世話をされたい欲求自体は生物学的なのもので、大人になっても消失したりはせず、寂しいけど人と近づくのが怖いという「回避性パーソナリティ」となっていく。
 虐待などで激しく抑圧された場合、愛着スタイルは「混乱型」となり、「反応性愛着障害」となり生きることに興味すらないというような回避性パーソナリティよりさらに悪化した状態になったり、身体的な発達も遅れ、死亡率が高まったりする。この時期をなんとか生き延びて成長した者は「反社会性パーソナリティ」となっていく可能性も高い。これは、「生存欲求」が剥き出しの状態で、自分が生き残るためには、法を破ろうが他人を貶めようが関係ないという状態である。

3. 母子分離(1歳半~)

 1歳頃までにはいはい、一人歩きができるようになり身体的な行動範囲が広がる。心理面では言語を覚え「自己」と「他者」という区別ができてくる。外界に対する好奇心が芽生えたり、同時に母親から離れることに対する恐怖を覚え、アンビバレントな状態になり、第一次反抗期ともいえる時期に入って行く。
 「安定型」の愛着スタイルをもっていれば「基本的安心感」(あるいは安全基地)ができていて、子供は帰ってくる場所があるという安心感から、積極的に活動をするようになる。
 「不安型」の愛着スタイルをもっていると「母子分離」がうまくなされず癒着状態がつづいてしまい、「依存性パーソナリティ」や「境界性パーソナリティ」が形成されていく。
 母子分離には、父親像による誘導も影響する。フロイトのエディプスコンプレックスは母子分離がうまくいかなかった状態のことで、フロイトの時代では父親の存在が強すぎることがイメージされていたが、現代ではむしろ弱すぎる、あるいは不在のために、母子分離に失敗することが多い。母から離れたいと思っていても、外界に連れ出してくれる父親像が機能していないのである。
 「回避型」の愛着スタイルだった赤ん坊は、好奇心に従って一人でいることを好んだりマイペースに成長していく。迷子になっても本人は不安を感じていなかったりする。
 「混乱型」の愛着スタイルだった赤ん坊は、オモチャを壊したり、他者を傷つけたりといった暴力的行動に出ることもめずらしくない。

4. 思春期(第二次成長期)

 幼少期に形成された4つの「愛着スタイル」は、その子にとっての外界に対する態度の基本方針のようなもので、トライ&エラーを繰り返しながら、やがて「パーソナリティ」が形成されていく。成長するにつれて知識をえて、知能が発達するため、愛着スタイルとはちがう面も身についてくるが、強い恐怖や不安を感じると、幼少期の愛着スタイルが顔を出しやすい。身近な人の死や、親の離婚などを経験することで、強められることもある。そして思春期という第二の不安期が訪れる。
 思春期は、身体的に子供から大人に成長していく時期であり、心理的には、やがて社会の一因としてどう生きていくかを考えなくてはならなくなる時期である。

以下、岡田尊司さんの9つのパーソナリティに従って、独自の解釈を当てはめていく。
パーソナリティのタイプは型というよりは傾向で、一人が一つにあてはまるというのではなく同時にいくつかの特性を持っている。恐怖や不安に対する適応手段をいくつか身につけていて、あるときには強く出たり、相手に合わせて変えたりもしているのである。また、ある傾向は全くない。
 それは恐怖に対する3つのFという反応を考えるとつかみやすい。「Fight」戦う、「Flight」逃げる、「Freeze」固まる、である。

①回避性パーソナリティ
 「回避型」の愛着スタイルを持った子が、そのまま成長したようなパーソナリティ。距離を置くことで傷つくことから逃げる。「Flight」の戦略である。回避ばかりで生きてきた場合は、孤独に苦しんだりする。他者との交流よりも、自分の興味関心を追及することに喜びを感じる。家庭環境が変わったり、友達との交流などで、愛着が安定していれば、別の楽しみをもつこともできる。

②依存性パーソナリティ
 「不安型」の愛着スタイルを抱え、母子癒着したまま成長した状態。母親の方でも依存性パーソナリティを持っていることが多い。依存対象の価値観によって人生を左右されがち。母親が面倒をみている限りはいいなりになっていたり、結婚相手に依存したり、悪い相手に依存すると犯罪行為に荷担したりもする。依存から離れようとすると、不安を感じて、別のパーソナリティが顔を出し、依存対象にされていた親などと対立し、第二次反抗期とみられたりする。自立がうまくいくかは、愛着の安定度合による。戦略としては「Flight」の失敗、逃げ遅れて服従しているような状態。

③強迫性パーソナリティ
 「不安型」「回避型」のパーソナリティが、何かに集中することで、自己を成長させようという態度。行動や価値観に依存しているとも言い替えられる。社会のルールなどに従うなどで、安定しようとする。不安定の度合が増すと、潔癖性や拒食症などの障害になっていく。戦略としてはコツコツと戦う「Fight」。

④自己愛性パーソナリティ
 母子分離に失敗し、自尊心のみが肥大した状態。背景には過保護な保護者の存在がある。後ろ楯がなくなったときには、不安定になり、ワガママとしか見られなくなる。戦略としては自己主張する「Fight」か、サッと逃げる「Flight」か、いずれにしても幼稚な戦略。

⑤反社会性パーソナリティ
 強い「混乱型」の愛着スタイルのままで生き延びた状態。社会的な適応ができている場合は、命に関わる仕事などでもものともしない。「混乱型」を生む家庭環境とあいまって犯罪者になってしまう可能性も高い。戦略としては無謀な「Fight」。

⑥境界性パーソナリティ
 過干渉の母親に育てられた「不安型」などが、不安状態を抱えたままパーソナリティを選びかねているような「Freeze」状態。母子分離しているようでできていない状態で、自分が何者かわからない。わからないまま不安だけがある。原因は母子分離の失敗にあるため「依存性パーソナリティ」も入り、分離させてくれる依存対象(父親像)を求めていたり、「強迫性パーソナリティ」のように自分を律しようともするが、うまくいかず自己嫌悪に陥ったりする。そもそもの世話に不十分さがあるので自尊心が培われていないこともあり、「死にたい」と言ったりもする。周りから見ると複雑に見える。

⑦演技性パーソナリティ
 新しい人格の形成という適応。「大人としてのモデル」を作りあげ、それを演技して、受け入れられることで安心を得ようとする。自己愛性も強いと、モデルや役者になったりする。強迫性が強いといい人であろうとする。愛着が安定していれば「仕事」と「家庭」を割り切るような態度になるが、不安定でそのギャップに苦しむこともある。戦略的な服従状態。

⑧アスペルガー
 アスペルガーなどの自閉スペクトラムは、一時期は9割が遺伝による影響と言われたりもしたが、近年では愛着の影響と半々であるとされ、厳密に原因を決められない。遺伝の影響は差し引いて考えると、愛着が不安定なために発達が遅れた影響が残っているといえる。ルールを守る強迫性や、自分の好きなことに没頭する回避性の態度をとることは多い。

⑨妄想性パーソナリティ
 「不安型」の子供が「自分の本当の親は別にいる」と思ったりするのと同じように、不安を妄想によって埋めて、外界と折り合いをつけようとする。回避性と合わさると独自の世界観を築いていくかもしれないが、反社会性と合わさるとストーカーなどの行為に及ぶ可能性もある。戦略的な服従状態。

5. 成人以降

 就職などに成功して、仕事もうまくいき、社会生活が安定すると、パーソナリティを変更する必要はなく安定してくる。しかし、職場でのストレスが大きかったり、結婚、出産、離別などの強い不安や環境の変化が起こるようなイベントを体験すると、不安定なパーソナリティが顔をだしてくることがある。そのために、社会不適合になり病院へいくと「~障害」という診断がついたりするし、またカウンセリングを受けたり、自分と向き合うことで克服し、変化していくこともできる。

 幼少期に獲得された愛着スタイルを基準に、パーソナリティが形成されていくと考えると、三つ子の魂百までというのは、言い得て妙なのかもしれない。

緋片イルカ 2020/03/16

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