テーマについて②:キャラクターとの関係(文学#53)

前回:テーマについて①:構成との関係(文学#52)

テーマを体現したキャラクター

このことを説明するために『天使のくれた時間』という映画をご紹介します。

天使のくれた時間 (字幕版)

構成についても解説した記事がこちらにありますので、合わせてご覧下さい。

以下では、この映画を知っている前提として書かせていただきます。

この映画は「構成」からみて「人生にはお金よりも愛が大切である」という「テーマ」です。

ログラインにしても明確です。

「ウォール街で働く社長のジャックが、「もしも、あのときケイトと結婚していたら」という魔法の時間を体験して、元の世界に戻ってから愛を優先してケイトを説得する。」

もっと、端的にいえば「お金一番だった男が、愛の大切さを学ぶ物語」です。

この「テーマ」を伝えるには当然「愛の大切さを知っている人物」が必要です。

それが、ケイトというキャラクターの役割です(メンターというロールとも言えます)。

アンタゴニストの役割

「テーマ」を体現するキャラクターが必須なことは説明しましたが、その「テーマ」を的確に伝えるには、やはり「構成」が重要です。

「お金が一番」という価値観のジャックという主人公が、最後には愛を選ぶことによって、初めて「お金より愛」というテーマが伝わるのです。

「お金より愛が大切」というテーマ自体は、言葉だけで説明されれば、多くの人は共感できるものだと思います。

しかし、その価値観のキャラクターしか登場しない物語だったら、どうでしょう?

「ある村では、みんながお金を持たずに暮らしている。村人たちは、みんな支えあって、笑いあって幸せに暮らしている」

理想的社会というよりも、怖さすら感じるのではないでしょうか?

もしも、この村へ迷い込んだ人に「村の価値観」を笑顔で押しつけてくる展開があれば、それはホラーになるでしょう。

「構成」が「テーマ」に関連することは前回の記事で説明しましたが、構成は同時にキャラクターアークにもなります。

つまり、「テーマを体現したキャラクター」と「正反対の価値観をもったキャラクター」が必要で、アクト2では、この両者の価値観の戦い(バトル)というビートが必要です。

結局は「テーマ」も「キャラクター」も両方とも大切ということになるのです。

次回予告・ご案内

『天使のくれた時間』では、主人公のジャックがケイトから愛を学ぶ構成をとっていますが、ケイトを主人公にしてジャックを変えていくような構成も可能です。これがわかれば『SAVE THE CATの法則』にあるような「主人公はいい人でなくてはいけない」というセオリーがいかに表面的かということもわかるかと思います(まあ、初心者向けには有効な考えですが)。

「テーマ」は通常、主人公の行動と変化によって伝わるというのも、ひとつのセオリーです。別の言い方をするなら「キャラクターアークがテーマを伝える」でしょうか。

「主人公によってテーマを伝える」し「テーマを伝えているのが主人公」とも言えるので、多くの物語ではこのセオリーは当てはまります。

しかし、二つの価値観が両立するような構成もあります。

『天使のくれた時間』で考えるなら、ジャックが愛の大切さを学ぶものの、最後は仕事を選び、ケイトがお金がないために不幸な目にあう終わり方をしたら、どうでしょうか?

そこでは「お金より愛が大切」とは違ったテーマが伝わります。

こういう構成の場合、主人公が二人いるとも言え、さらに増やすことで「群像劇」にしていくこともできます。

複雑になるので説明は割愛します。

より詳しく、理解されたい方は「読書会」「リモート分析会」にご参加ください。

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緋片イルカ 2021/09/17

次回の記事:テーマについて③:描写との関係(文学#54) 2021/10/2 21:00更新(全3回)

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