マンガと三幕構成②「構図」(#35)

前回の記事で、マンガでは「作画レベル」が、ストーリー以上に大きいという話をしました。

作画については専門技術なので美術教室などで習っていただくとして、映画とも関連しそうな「構図」から進めて、おいおい三幕構成のマンガへの応用まで繋げていきたいと思います。

構図とは……

ここではマンガのコマひとつの中での画を「構図」と呼ぶことにします。

マンガでの専門用語があるかもしれませんが、知りません。

コマの枠組みは四角形が多いですが、もちろん自由でしょう。コマのないコマもあります。

また、大小の違いもあります。

これらの効果や違いを考えるときには、絵画を考えるのがとてもわかりやすいと思います。

コマの大小はキャンパスの大小とも言えますし、そのフレーム内で、主題をどう構成しているか?

これは門外漢が説明するよりも、本を読んでもらった方がわかりやすいと思うので、かんたんで面白かった本を紹介しておきます。

巨匠に学ぶ構図の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)

有名な絵画ばかりつかって、構図のポイントが説明してあります。

いろんな画家の表現技法も見られるので、マンガを描かれる人には参考になると思います。

(ちなみに同じシリーズの『巨匠に学ぶ配色の基本―名画はなぜ名画なのか? (リトルキュレーターシリーズ)』も良かったです。)

キャラクターを描く

絵画には風景画、抽象画といったジャンルもありますが、ストーリーとして描くのは人物ですから、とくに重要なのは人物画といえそうです。

人物は人間とは限りませんから、キャラクターとしておきましょう。

キャラクターをどういう構図で描くかによって、強そうに見えたり、悪そうに見えたり、弱々しく見えたり・・・無意識に与える影響が変わります。

映画では、ストーリーに合わせて、その感情表現を高めるために、そういった演出をくわえます。

ライティングや音楽もあわせて演出することは、すでに説明しました(レンブラントライティングなんていう絵画に関連する技法もありますね)。

ここでは、ショットに着目してみます。

ここでも、先にいくつか書籍をご紹介します。あくまで映画関連の本で、マンガにも応用できそうな書籍という立場の紹介です。
マンガの専門書で、もっといいものがあるかもしれません。

映画表現の教科書 ─名シーンに学ぶ決定的テクニック100

これは、脚本とショットを同時に描かれている本で、脚本を書く人にもとても参考になります。

自分の描いた「ト書き」がどういうショットになるかは、ある程度のイメージをもって書かないと、脚本の役割を果たしません(ちなみに日本の有名な脚本家は「私はセリフしか書かない」「できた映像をみて、こうなるんだ~と驚いた」と言ってましたが・・・)

マンガでは、マンガ原作は脚本形式で書かれるのは基本ですから、脚本→マンガにするときの参考にもなるでしょう。

マスターショット100 低予算映画を大作に変える撮影術

『マスターショット2 [ダイアローグ編]』

『マスターショット3[応用編] 1つ上のクオリティを目指すための撮影術』

この3冊のマスターショットシリーズは、編集も兼ねてショットのテクニックを紹介している書籍です。

主に監督やカメラマン向けの人気シリーズですが、とくに「ダイアローグ編」は人間同士のショットをどう撮るかなので、重要だと思います。

以上、専門的なことはお読みいただくとした上で、さいごに私論を述べたいと思います。

「目は口ほどにモノを言う」けど・・・

映画のショットで何よりも重要なのは人物の視線です。

「目は口ほどにモノを言う」という言葉もありますが、セリフにしなくても目の強さで、ある程度の感情を語れます。

欧米人は目を合わせないと失礼だったり、そらすとウソをついてると感じたりします。

日本人は、日常で他人と見つめ合うことは少ないですが、じっと逸らさないときは恋をしているか、睨んでいるときかもしれません。

文化的な基準はちがえど、目の動きだけで感情を語れるのです。

キャラクターの感情を伝えたい画では、目にこだわるべきでしょう。

心理学でも、多くの人が「目だけを見て」感情を当てられるという実験があります。

けれど、100%ではありません。

「恋をしているか」「睨んでいるか」と言いましたが、このどちらかは、その前後のストーリーがあって、初めて伝わるものです。

絵だけですべてが伝わるなどとは、思わないことは大切です。

人間が演じる、役者でもカメラを通すと感情の伝わり方は半減します(感情は舞台演劇の方が伝わります)。

マンガはましてや絵です。

絵に拘りの強い人は、この発言に怒るかもしれませんが「モナリザって本当に美人ですか?」ということです。

世界的名画ですら、感じ方は人それぞれです。

だから、適宜、必要なセリフをくわえて、観客・読者に勘違いされないように伝えることは大切だと思います。

マンガも映画も小説も、最終的に伝えるべきなのは「テーマ」や「メッセージ」です。

それを伝えるためにストーリーを「構成」して伝わるように「描写」するのです。

今回はコマ1つにおける構図ということを考えましたが、次回はコマの連鎖、つまりコマ割について考えていきたいと思います。

※マンガを専門にされてる方でオススメの本があったら、コメント欄で教えてください。

緋片イルカ 2020/12/18

この記事に関してこちらのラジオで話しております→ 【物語ラジオ】マンガと三幕構成(#2)(1/8公開)

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