マンガと三幕構成③「コマ割り」(#36)

前回の記事ではコマ1つにおける構図を考えましたが、今回はコマの連鎖、つまりコマ割について考えていきたいと思います。

マンガと映画は似ている

映画では撮影の前に「ストーリーボード」(絵コンテ)をつくります。

これは予算を抑えるためでもあります。

役者やスタッフを拘束時間や、ロケーションや道具のレンタルなど、時間がかかれば、すべてお金がかかります(現場でショットを考えるような日本の古いやり方は異常です)。

あらかじめ撮りたいショットを決めて、スケジュールを組んで(ショットリストをつくる)、撮影していくことが、大切です。

マンガではネームがあります。

作画にかかる労力を考えれば、ネームの段階で固めておくのは当然でしょう。

この点、小説では入念なプロットを書いているよりも、文章を書いてしまった方が見えてくるものがあったりはします(執筆スタイルに寄りますが)。

マンガと映画が似ていることは、多くの人が指摘しています。書籍をご紹介します。

手塚治虫

藤子不二雄

石ノ森章太郎

言うまでもない有名マンガ家たちです。

マンガの創生期とでも言うような時代から、映画の技法はとり入れられていました。

子ども向けに書かれている本なので、文章はかんたんですが、内容はマンガの本質を突いているような本です。

マンガを描かれる人は、どうぞお読みください。

専門的なことは大先生たちに任せて、僕からは「三幕構成」をマンガに応用しておくという観点からの私見を述べていきます。

連載と読み切り

構成を考える上では、まず全体の長さ(尺、ページ数)が問題になります。

新人賞などでは「16ページ」とか「32ページ」とかが多いと思います。小説でいえば、短篇やショートショートです

同人誌や単行本で書き下ろしになれば、最大で一冊分としても150ページぐらいでしょうか。小説では中篇と呼ばれる長さです。

小説の長編と呼ばれるような長さを、マンガで言うなら「上下巻」とか「全三巻」など、冊数が初めから決まっているようなマンガでしょうか。あまりないのではないかと思います。

それに対して、マンガでは「連載」形式があります。

小説にも雑誌や新聞連載がありますが、ある程度、連載期間が決まっていて、書籍化することが前提になっているでしょう。

マンガ連載とのちがいは「終了時期が決まっている」ということです。

作者や編集者しだいとはいえ「人気さえあれば続く」という形は独特です。

これに近いのは、映画よりもアメリカのテレビシリーズです。

人気があればシーズン○○と続き、時にはキャラクターを入れ換えてでも、続けていきます。

終わりがはっきりしているかどうかは、物語の構成に大きく影響します。

ストーリーの形式がまったく違うので、ビートの適応の仕方も変わってきます。

スリーポインツのバランス

構成を考える上で、重要なのは全体のビートのバランスです。

ハリウッド映画の基本セオリーでは三幕の分量が「1:2:1」になるというのがあります。

映画が120分でいえば、30分あたりで「プロットポイント1」、60分あたりで「ミッドポイント」、90分あたりで「プロットポイント2」が来るということです。

ただし、これは基本セオリーで、そうなっていない作品もたくさんあります。1:2:1になっているから面白くなるわけでもないし、なっていなくても面白い作品はいっぱいあります。

小説に応用する場合にも「1:2:1」が通用するという考え方もありますが、これも必ずではありません(実際にページ数をとって分析してみれば、よくわかります)

けれど、目安にはなります。

たとえば120分の映画で「プロットポイント1」が50分に来るようでは前半がかったるくなるし、100分ぐらいで「プロットポイント2」ではクライマックスの盛りあがりに欠けます。

「1:2:1」というバランスは、必ずしも従うルールではないけれど、それなりの意義のある数字なのです。

マンガにおいて、このバランスを考えるには全体のストーリーを組み立ててから「プロットポイント」に該当するコマが、何ページの何コマ目に来ているかで測っていけると思います。

おそらくストーリー上、重要なコマなので、大ゴマとか力の入ったコマになっている可能性が高いです。

また、本という形式上、見開きでの画面構成も大切です。

見開きの最後のコマが気になれば、読者は思わず次のページへ捲ってしまいます。そうしてラストまで読まされてしまいます。

次のページへ引っ張る力は、ビートの役割でもあるので、このあたりから三幕構成をマンガに応用していけるように思います。

これこそネーム段階で考えるべき「コマ割り」と呼べそうです。

(※電子書籍では片面ページごとの表示、スマホのような小さい画面で読む電子書籍においてはコマごとの表示もあるので、今後は基準に変化が出そうです。見開き単位ではなく、コマの何個目かで、ビートを入れるかとなったときには、映画で何分でビートを入れるかという考え方と同等だと思います)

次回は、ページの構成とビートの関連を具体的に考えていきます。

緋片イルカ 2020/12/18

この記事に関してこちらのラジオで話しております→ 【物語ラジオ】マンガと三幕構成(#2)(1/8公開)

1+

SNSシェア

フォローする