レベル1:まずはスリーポインツを見つける
物語の基本構造、比喩でいえば「主人公が、旅に出て、帰ってくる」という捉え方は、どんな物語にも当てはまります。
ジャンルを問わないし、小説やマンガといった媒体も問いません。
「旅に出る」=「プロットポイント1」
「旅が終わる」=「プロットポイント2」
この2つのビートがブレなくとれているかどうか?が最初のステップです。
グループで分析をするときは、この2点を確認し合うようにしてください。ここがブレたまま、細かいビートをとろうとしても曖昧になります。
次に押さえるべきは「ミッドポイント」です。
「旅の一番遠いところ」「一番、非日常なところ」「演出的に盛り上がっているところ」などがヒントになります。
PP1とPP2の中間地点なので「ミッドポイント」です。
「ミッドポイント」の本質的な意義は深くて、本当は非常に難しいのですが、まずは演出を基準に見つけられるようにしてください。
レベル2:「フォール」「カタリスト」「ビッグバトル」をとらえる
「フォール」
ミッドポイントが定まれば「フォール」はすぐに見つかります。
「折返しの開始地点」「ストーリーに変化が始まる地点」「新しい敵が登場する」などがヒントです。「ミッドポイント」~「フォール」はストーリーが停滞しているように見える作品もよくあります。
多くの場合はMPまで上昇していき、下降が始まる地点(ジェットコースターのイメージでも)なので「フォール」と名付けていますが、MPまで失敗つづきだった場合、「フォール」から上昇が始まる場合もあります。
「フォール」はイルカの造語です。セーブザキャットでいう「迫り来る悪い奴ら」のパターンも含みます。
「カタリスト」
次にアクト1に遡って「カタリスト」を見つけます。
「PP1」との関連で考えてみてください。「旅のきっかけ」となるイベントです。
「カタリスト」は主人公にとってショッキングであることが多く、観客へのインパクトもあります。
※中級者向けのヒント:多くの映画は「ファーストインシデント(最初の事件)」と「カタリスト」が同じです。つまり「カタリスト」を探すとき「最初の事件」を探せば見つかるのですが、段階的にカタリストに入っていく場合があります。「ファーストインシンデント」→「別イベント」→「カタリスト」というような展開です。この場合は、より主人公と観客にインパクトを与える方を「カタリスト」としますが、細かい分析としては「段階的になっている」と掴んでおくことが大事です。そういう掴み方をしていくと物語の型のストックが増えて創作に使えるようになっていきます。分析は答え探しではないので、自分なりの解釈がしっかりできていれば良いのです。
「ビッグバトル」
「ビッグバトル」=「アクト3」といっても良いようなものです。
「PP2」が見つかっていれば、その後に展開されるクライマックス、大きなシークエンスが「ビッグバトル」です。
演出的にも一番、盛りあげるところなのですぐにわかると思います。
注意点は、ここまでに掴んできたビートは「点」でとれますが、ビッグバトルは「線」つまりシークエンスです。
ビッグバトルの「始まり」と「終わり」の点があります。
「始まり」の点は主人公の行動開始で始まるので「ターニングポイント2」とも呼びます。
「終わり」の点は「ビッグフィニッシュ」(この言葉はリンダシーガーのものです)です。
どちらも「ビッグバトル」の始まりと終わりという意味だけで、大きな定義はありませんので「ビッグバトル」というシークエンスでとらえて問題ありません。
なお「ビッグフィニッシュ」の後は「エピローグ」しかありません。
「ビッグバトル」の中でも、あれこれと変化が起きているように見えますが、これらはすべて「ツイスト」と呼びます。(ビートシートには入れてません)
たいていは主人公がピンチ(危機)になったりしますが、結果的にすぐに持ち直して勝利します。アークの方向を変える訳ではなく、盛りあげるために「ツイスト」が入っているのです。
物語としては重要なビートではありませんが、演出上はとても重要で、創作のときにも入れられるなら「ツイスト」は入れた方が効果的です。
「ツイスト」は1つとは限りませんし、強弱も作品次第です。
大きなピンチ(危機)がドーンと入る場合もあれば、小さなピンチが連続的に入って盛りあげている場合もあります。
慣れてきたら、いくつ入っているかも分析してみてください。
また、「ビッグバトル」自体がいくつかのシークエンスに分かれてしまっている作品がときどきあります。たいていはクライマックスらしい盛りあがりに欠けます。
この場合は、シークエンスの切れ目を「ツイスト」としておきますが、小さな「ビッグバトル」がいくつかあると捉えても問題ないかと思います(小さい時点で「ビッグ」ではなく、ただの「バトル」になってしまっているので、失敗していると考えられます)。
客観的な分析をめざす(作品の選び方)
初心者の方は、上記のレベル2までのビートを「ブレなく」とれることを最初の目標にしてください。それ以降のビートについては改めて、記事を書きます。
初めのうちは作品選びにも気を遣うとよいと思います。
邦画やアニメ、古い作品では、制作者がビートという意識を持たずに作っている場合が多く「見つけづらい」「大幅にズレている」「欠けている」場合が多々あります。(それでも上記のレベル2ぐらいのビートまで物語の本質なので見つかるはずですが)
「ビートを見つける練習」をしたい場合は、2000年以降のハリウッド大作映画をオススメしておきます。アカデミー賞でいえば作品賞(脚本賞はクセがあることも多い。それはそれで、とても勉強になりますが)。
分析の目的は「答え探し」ではなく、あくまで「創作に活かすこと」なので、作品自体に問題があると思ったときは、そう判断できることが「客観的な分析」であり、それでこそ、創作の参考になります。
そのためには、結局は「基本の答え探し」が出来なくてはいけないのですが、これには量をこなすしかないでしょう。わからないなりに、頑張って続けてみてください。
なお、グループでの分析に興味がある方は、分析会への参加もお待ちしております。
参考:レベル3以降のビート
「オープニングイメージ」
緋片イルカ 2022.10.10