※この分析は「脚本講習」の参加者によるものです。
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【ログライン】
不良達を集めて始まった野球部。ついに部員たちの卒業を控え、新入生2人を加え最後の甲子園に挑むことになった。
しかし御子柴は新入生の赤星を庇い骨折。部員たちは出場が絶望的になった御子柴に勝利を誓う。
そして決勝まで駒を進めるが相手は安仁屋の因縁の投手がいる笹崎高校。リズムが崩れ、若菜も指を骨折する。勝利が遠のいたと思いきや、御子柴がグラウンドに立つ。
部員たちは徐々にリズムを取り戻し奇跡を起こし続ける。安仁屋は因縁の相手に打ち勝ち、ホームラン。
甲子園進出となり、野球部員たちは熱い想いを胸に卒業をする。
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「明治神宮野球場」
外観が映り、その後グラウンドへ向かう部員たちが映る。
御子柴モノローグで今までの出会いや事件に想いを馳せ、それを奇跡と呼び、更なる軌跡を起こし、自分たちの夢を掴むと言う。
→ここから心を動かすようなシーンで「奇跡」「夢」のフレーズが使われるようになる。
CC「主人公のセットアップ」:「ニコガク野球部」
(「ジャンルのセットアップ」)
卒業生が甲子園を夢見て挑む。
Catalyst「カタリスト」:「赤星が練習しない」
野球部にとって期待の新人赤星。共に戦ってほしいのに練習に参加してくれない。
→ここまでは卒業生らの「甲子園に行きたい」というWANTが全面に出ている。メジャーを目指す赤星がまじめに参加してくれない=出鼻をくじかれてる気分になる。
Debate「ディベート」:「練習しなければ試合に出さない」
毎回グラウンド通り過ぎるだけの赤星。自分には実力があると見せつけられるが、それだけでは試合に出さないと御子柴が言う。
→共に挑むという経過(絆)を大事にしてきた御子柴が介入することによりWANTが「卒業生が甲子園に行く」から「全員で甲子園に行く」に変化しているように見える。
Death「デス」:「赤星を庇い、御子柴が骨折する」
赤星の練習風景を見た御子柴が、赤星とコミュニケーションを図る。
御子柴は赤星のメジャーに行きたいという気持ちを汲んで、禁煙を促した。
そこで不良に絡まれ、赤星を庇って全治3か月の骨折をおう。
→おそらく御子柴は赤星とうまくやっていく方法を模索していた。
しかし、赤星にはうまく響かない。第1のデス。
そこから赤星に絡む不良を止めようとして骨折する。第2のデス。
精神面・肉体面で「全員で甲子園に行く」という望みが絶たれる。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「甲子園に行くための練習を重ねる」
御子柴の骨折を知り、卒業生らが甲子園を誓う。
後ろめたさのある赤星・平塚に騙されて拗ねていた濱中も心を動かされ練習に参加するようになる。
→骨折により一致団結されていくシークエンス。
グラウンドにかけられた4番は御子柴のもの。
Pinch1「ピンチ1」:「トウコへの約束」
必ず勝つことを約束する
→ピンチ2の回想で使われる。フリ。
MP「ミッドポイント」:「御子柴キャッチャーとしてグラウンドへ」
怪我をした若菜の代わりにキャッチャーとして登板。
→まだ完治とまでいかないが支障はないとかって出る。
御子柴は懸命にリハビリを続け、本当は登板したいというショットを重ねられていた。
言葉には出していない「卒業生全員が登板・プレイする」という一番難しいWANTが叶う。
MPとしての宝物は「絆」「思い出」に当たる。
Fall start「フォール」:「残1回で5点差」
リズムを取り戻してきていたが一進一退。あと1回で5点以上取らなければ勝てない状態に。
→「奇跡」でも起きない限りは「夢」が叶わない状況になっている。
Pinch2「ピンチ2」:「トウコへの約束」
ピンチ1のウケ。
→約束した勝利には「自分に勝つ」「試合に勝つ」が含まれていて、それを誓ったトウコを思い出している。
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「甲子園」
試合全て終わり、甲子園のグラウンドに走り出す部員たち。
→本来なら甲子園へ進むことがMPであるべきだが、全員で甲子園を目指すという「絆」を手に入れている状態の現れ。image1を彷彿させる卒業・未来への飛び立ち。
BBビッグバトル:「川藤への感謝の言葉」
卒業式では誰もが3年間を振り返り、感謝をする。
1年前に馬鹿にした卒業式で部員たちは川藤に奇跡をくれてありがとう。夢を持たせてくれてありがとうと伝える。
→もともと不良だった彼らの大きな変化・戦いは「他人への感謝」。
野球を通じてトウコや川藤に感謝するようになった。
image2「ファイナルイメージ」:「部室に飾ってある写真」
誰もいない部室に全員の写真。
→彼らがいた。不良達が一生懸命に野球をした軌跡の証明。
エピローグ:
卒業し、学校から帰っていく部員たちの背中。
仲良さげに歩いていく。
川藤はだれもいない学校にひとり。黒板には川藤へのメッセージが。
【感想】
主人公として立っているキャラが安仁屋・御子柴あたりかと思いましたが、チームでのまとまりの話が大きく、いつものようにキャラごと取らずにあえてチーム=主人公として考えてみました。
チームとしてのWANTは「全員で甲子園に行く」。言い換えれば卒業のための花道、という感じかなと。
急に卒業式に入るので、試合中にポイントを取るか悩みました。
でも試合中は基本一進一退で救いがある状況に見えてしまって取りずらく……短いPP2にしました。
甲子園を常に掲げていくのであれば甲子園でのエピソードが必要だったのではないかと思います。
最終的に卒業に絡めて川藤への感謝を伝えるのも、もっと川藤に心動かされているシーンがあればもっと感動できそうでした。
ドラマの続編としての映画なので、ドラマから観ている人はもっと感じ方が違うかもですね。
せっかくの試合中の熱意やドラマが卒業への急展開でやや消化不良でしたが、試合中のテンポは見やすかったのでルールがわからなくても楽しめました。
(雨森れに、2022.9.24)
ご指摘の通りチームで甲子園出場を目指す「スポーツ羊毛」の作品だと思います。ですので、金のトロフィー、甲子園出場でBBとする見方もしてみました。
Catalyst:13分「平塚の嘘バレる」
Debate:13~25分「濱中、赤星の迷い」
Death:25~33分「御子柴骨折~川藤の激励」
PP1:34分「濱中、赤星練習参加」
Pinch1:41分「御子柴復帰」
MP:56分「決勝戦出場」
Fall start:66分「安仁屋走らずアウト」
Pinch2:72分「若菜指骨折」
PP2(AisL):80分「若菜選手交代」
BB(TP2)prepare:84分~「御子柴試合に出る、若菜審判に、円陣」
start:87分~「関川ヒット~赤星アウト」
twist:91分~「5点差~逆転ホームラン」
solution:107分~「最終回~予選優勝、甲子園出場」
BF:118分「卒業式」
SeriesPayoff:119分~「部室の川藤~」
マイナスからプラスに向かうビートが群像で重ねられて長めですね。夢を諦めないというテーマが強調されてるなと思いました。この映画はドラマシリーズの終章で、テーマである感謝の卒業式、フィナーレ部分が長くとってあるという感じになりました。ただドラマを見ている前提の演出だなと同感でした。