映画『ダイ・ハード』(三幕構成分析#102)

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

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【ログライン】

頑固でサバイバル能力の高い警官ジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)が強盗を追い詰め、大金を持って逃げるのを阻む。

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「飛行機嫌いを乗り越える方法」ロサンゼルス国際空港に飛行機が着陸する。主人公のジョンは隣の男性客に飛行機嫌いを見抜かれ、裸足になって指先を丸めるという方法を教わる。ピンチを乗り越えられるのかがこの映画のテーマだ。

CC「主人公のセットアップ」:「離婚の危機に瀕したジョン」ニューヨーク市警官のジョンはセンチュリー・シティの高層ビル、ナカトミ・プラザに向かう。ナカトミ商会は妻のホリー・ジェネロ=マクレーン(ボニー・ベネリア)が副社長タカギ(ジェームズ・シゲタ)、コカイン中毒の国際部長ハリー・エリス(ハート・ボックナー)と働いている。リムジン運転手のアーガイル(ハート・ボックナー)のおしゃべりにジョンは妻のホリーがキャリアウーマンで成功したために別居していることを明らかにする。 家には二人の子どももいる。ジョンがビルに到着し、ホリーらに会うと、彼女が旧姓を使っていることを知る。仕事を優先することが許せないジョン。二人の結婚に対する考え方の違いから口論となる。

Catalyst「カタリスト」:「強盗達のトラック到着」。17分たったところで、ビルに謎のトラックが到着する。「突然」に、強盗集団が入ってきてロビーの守衛を殺し、ビルを閉鎖、電話回線を切断される。ナカトミ商会のクリスマスパーティは襲われて、悲鳴と銃撃が飛び交う。

Debate「ディベート」:「ジョンのローテクな戦い方」 騒ぎに気付いたジョンは上階へと逃げ、強盗達の様子やビルの内部をうかがう。強盗集団のリーダー、ハンス・グルーバー(アラン・リックマン)は強欲なナカトミ商会に制裁するテロリストに扮し、副社長タカギを見つけ出し、社長室に入る。ジョンもそこへ忍び込む。

「ジャンルのセットアップ」「アクション」)

Death「デス」:「タカギ射殺」ハンスは金庫の6億4千万ドルの無記名債権を得るため、鍵の暗号をタカギから聞き出そうとするが、拒否される。3つ数えたハンスはためらうことなくタカギを射殺すると、ジョンは声をあげてしまい、気づかれる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ジョン火災警報器を鳴らす」何とか切り抜けたジョンは34分たったところで、独り言を言いながら必死に手立てを考え、火災警報器を鳴らすことを思いつき、第2幕の「警察とともに戦う世界」に入る。

Battle「バトル」:「警報は誤報、トニーとの戦い」「無線で救援要請、銃撃戦」「市警官パウエル到着、銃撃戦」犯人らの通報で、警報は誤報にされてしまい、ジョンは32階の捜索に来たトニーとの戦いになる。トニーは階段から落ち、首を折る。ジョンは彼から無線、ライター、機関銃を手に入れるが、靴は合わず裸足のままだ。
ジョンはトニーの死体をEVにのせ犯人たちを挑発し、会話から名前をメモする。弟を殺されたカールは激怒する。
ジョンは屋上から無線で救援要請し、カールらと銃撃線になる。
ジョンはエアダクトに逃げ込み、ライターで照らし、「西海岸はいいところだぜ」と言う。このバトルがこの作品の「お楽しみ」でもある。
LA市警のパウエル巡査部長(レジナルド・ヴェルジョンソン)が到着するが、守衛を装った犯人のせいで一向に埒が明かない、ジョンはしびれを切らし暴れて、犯人たちと銃撃戦になる。

Pinch1「ピンチ1」:「無線で救援要請」屋上からの無線の救援要請で妊娠した妻のためにドーナツを買ったパウエルがビルに現れる。パウエルとのサブプロットが「台風の目」だ。パウエルのお陰でやっと警官たちがやってきてミッドポイントになる。

MP「ミッドポイント」:「警官たちビル到着」ジョンは帰ろうとするパウエルのパトカーに犯人の死体を落とし、蜂の巣にする。直ちに警察は応援要請され、マスコミにも知れる。「まやかしの勝利」を得たジョンは自ら「危険度アップ」させ、無線でハンスに犯人を3人殺したこと、警察を呼んだこと、起爆装置を手にしていることを伝える。
ジョンはハンスにカウボーイ気取りといわれ、「イピカイエ」と叫び、「ロイ・ロジャース」を名乗る。

Fall start「フォール」:「警察たちがビルに突入しようとして返り討ちに」75分たったところで警察の装甲車がミサイルで炎上し、ジョンは警察を助けるためにエレベーターシャフトにプラスチック爆弾を落とし、ビルのフロアごと爆破し犯人を2人殺す。

Pinch2「ピンチ2」:「エリスの取引」ピンチ1の対としてパウエルがジョンと子どもの話題にふった後、国際部長のエリスがハンスと取引するため友人のジョンを説得するといい、ジョンは受け入れることはできず、エリスは殺されてしまう。ジョンの素性が知れて、PP2でハンスはジョンが誰かを知ることになる。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「起爆装置がハンスの手に」テロリストのふりをした、革命家釈放の要求にFBIが到着する。ビルの中で爆薬を探していたハンスはジョンと出くわし、人質のふりをする。ハンスはジョンが裸足であることに気づき、カールが銃でガラスを壊して、起爆装置を取り戻す。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「パウエルの過去、ジョンの妻への謝罪」ジョンが足のガラスを抜いていると、パウエルが誤って子どもを撃った未精算の過去を打ち明ける。マニュアル通りのFBIがビルの電源を落とすことで金庫のタイムロックが開く、ハンスたちは無記名債権と起爆装置を手にして逃げるだけになる。ジョンは遺言のように妻への謝罪をパウエルに伝える。

BBビッグバトル:「ジョン一人で犯人たちを止める」ジョンが屋上を調べると爆薬に気づくが警察に伝える前にカールと戦闘になる。ハンスはテレビニュースでホリーがジョンの妻と知り人質にする。ジョンはカールをチェーンで吊り、屋上で人質たちを階下に逃がす。ジョンも階下に逃げ、ハンスと対峙する。ジョンは高笑いし、Xmasのテープで隠していた銃で撃つ。ハンスは窓から落ちそうになるところ、ホリーの手首をつかむが、ジョンがホリーの手首の会社から送られたロレックスの時計を外し、ハンスはビルから落ちる。

image2「ファイナルイメージ」:「パウエルの銃撃、ジョンとホリーの復縁」ジョンとホリーはパウエルと対面するが、生き延びたカールが襲い掛かる。パウエルが射殺して、彼は過去を乗り越える。ジョンとホリーは夫婦の危機を乗り越え、「レットイットスノー」がかかり、仲良くリムジンで家へ向かう。

【感想】

「好き」3点 「作品」4点 「脚本」4点
ブレイク・スナイダーがストーリータイプ「難題に直面した凡人」の「法執行困難」の代表例として解説している作品。
性愛を動機として、しっかりと対立されたテクノロジーや人物の優れた設定とプロットが現代のカウボーイ作品として古典的に扱われ、多くの後継作品を生んだとされる。
しかし、作劇性が目立っていることと現代における射殺の生々しさに抵抗があると、あまり共感性がないと感じもした。

(川尻佳司、2022/12/23)

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『映画『ダイ・ハード』(三幕構成分析#102)』へのコメント

  1. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2023/02/26(日) 15:45:17 ID:71f16c3b7 返信

    『ボクらを作った映画たち』シーズン1
    https://www.netflix.com/title/80990849

    で扱われていますので、合わせて見てほしいところです。「作品」5に値すると感じるかもしれません。
    どうして「難題に直面した凡人」タイプのベースに当たるのかもよくわかると思います。それまでのアクション映画と何が違ったのか、どうして「凡人」なのか(日本人からするとブルースウィルスもマッチョに見えかねませんが)。ポスター画像の意味もわかって面白いです。