映画『リング』(三幕構成分析#230)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

テレビ局のディレクターである浅川玲子は、取材していた呪いのビデオの真相を追究する中で自らもビデオを観てしまい、一週間後に死ぬ呪いに掛かる。死から逃れるために元夫で強い霊感を持つ高山竜司と共に調べを進める中、ビデオの内容が大島の三原山噴火を予知した女・山村志津子に関係していることが明らかになるが、玲子の息子・陽一もビデオを観てしまい、呪いに掛かる。大島に向かった玲子と竜司は、ビデオに出てくる女が志津子の娘・貞子であり、呪いの元凶であることを突き止める。二人は貞子が非業の最期を遂げた場所である井戸の中から、彼女の遺骨を探し出し、無事に一週間後を迎える。ところが翌日、玲子より一日遅れでビデオを観た竜司が貞子に呪い殺される。呪いはダビングされたビデオを他人に見せて呪いを移すことでしか解けないと知った玲子は、陽一の呪いを解くため、ビデオのコピーを持って父の家に向かう。

【フック/テーマ】
呪いのビデオ/死の恐怖、子を想う親

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「荒波→テレビへ」激しい荒波がテレビ画面へと移り変わる。テレビの中に恐怖が潜んでいるというイメージの象徴。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「智子が呪い殺される」長めのトップシーン。「呪いのビデオ」について冗談めかしく話している智子と雅美だが、智子が野球中継を映しているテレビに何かの気配を感じた後、呪い殺される。ホラーとしてのセットアップ。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「ビデオの呪いから逃れることができるか?」

want「主人公のセットアップ」:「呪いのビデオについての取材」呪いのビデオについて、学生にインタビューをする玲子。テレビ局のディレクターとして、呪いのビデオについての真相を追っていることがセットアップされる(want)。

Catalyst「カタリスト」:「若い男女の変死体の新聞記事」インタビューに答えていた学生の話通り、変死体についての新聞記事を見つける。真偽の定かでない噂話として展開していた「呪いのビデオ」だが、真実味を帯び始める。

Death「デス」:「智子の葬式に参列」智子の葬式に参列する中で、件の変死体の身元が智子と同じ学校の生徒であると知る。参列していた智子の同級生から、呪いのビデオに関わった四人が同じ日の同じ時刻に死んだことを聞く。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「呪いのビデオを観て、無言電話が掛かってくる」伊豆の貸別荘で呪いのビデオを観てしまった玲子。噂通り、無言電話が掛かってきたことで、玲子は一週間後に死ぬ呪いに掛かったことを悟る。

Battle「バトル」:「竜司とビデオについて調べ、三原山と関係していることを知る」元夫で強い霊感を持つ竜司の力を借り、ビデオの内容がかつて大島の三原山の噴火について予知した女性と関連していることを知る。

MP「ミッドポイント」:「陽一が呪いのビデオを観てしまう」陽一を預けるために訪れた玲子の実家で、陽一が呪いのビデオを観てしまう。陽一は「智ちゃんが見ろって」と話し、同じく一週間後に死ぬ呪いにかかる。

Fall start「フォール」:「旅館での夕食」竜司と共に大島に行き、志津子のいとこにあたる山村敬の息子夫婦が営む旅館に泊まるが、なんの手がかりも得られていない中、呪い殺される日があと二日に迫っていることに焦る玲子。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「貞子の遺骨を見つけ、玲子は助かる」貸別荘の地下にある井戸が、貞子が非業の最期を遂げた場所であると突き止めた二人。井戸の水を抜き、必死に貞子の遺骨を探す。間一髪、玲子が貞子の遺骨を見つけ、呪い殺されるはずの一週間後の時刻を無事で迎えたことから、助かったのだと話す。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「竜司の研究室に貞子が登場」竜司の研究室に貞子が登場し、竜司は、あの時玲子が助かったのは貞子の遺骨を見つけたからではなかったのだと悟る。貞子に竜司は呪い殺される。

Epilog「エピローグ」:「呪いのビデオを持って車に」竜司の霊の啓示によって、呪いから助かるにはダビングされたコピーを一週間以内に誰かに見せなければならないということに気づいた玲子。陽一の呪いを解くために実家の父にビデオのコピーを見せようと、車に乗り込む。

【作品コンセプトや魅力】

 鈴木光司の同名小説が原作。日本ホラー史に残る有名作品で、リングシリーズの元祖。呪いがビデオというデジタル媒体を介して広まり、呪いを解くためにはダビングして誰かに見せなければいけないというコンセプトが斬新。

【問題点と改善案】(ツイストアイデア)

 ホラーでありながら、「どうすれば呪いから助かるのか」を謎として展開するミステリーの側面もある作品。一方で、仮の答えである「井戸から貞子の死体を見つければ助かる」という竜司の見立ての説得力の乏しさや、井戸から貞子を探すシーン自体があっさりと終わってしまう感じが、その後の「どんでん返し」の趣向を削いでいるように感じる。改善案としては、ミスリードのために竜司の推理をサポートするような根拠を登場させ、井戸のシーンでの緊迫感を高めるためのツイストを加えたらどうかと考えた。

【感想】

「好き」3「作品」3「脚本」3
 ラストのPP2以降など、淡々としている感じが後味の悪さに繋がっていると感じた。一方でスムーズに真実に迫っていく過程には少し物足りなさを感じて、調査過程での玲子の焦りや絶望にもっと寄り添いたかったという気持ちがややある。
 ビデオというデジタルな媒体を介して呪いが広がる、さらには幽霊がテレビから出てきて呪い殺すというアイデア自体は、現代でも翻案できそうな面白さを含んでいるように思うし、実際に後発のリングシリーズ内で、この趣向が手を替え品を替え受け継がれている。作り手としては、古典のコンセプトを現代のトレンドに適応させアレンジするという視点は常に培っていきたい。

(さいの、2025.07.08)

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