書籍『コロンバイン・ハイスクール・ダイアリー』(読書メモ)

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感想:
犯人たちの言動がよくわかる。ドラマチックでもある。資料的に読んだので大きな感想はないが、付箋をつけたところを引用しておく。

「ブルックス、おまえのことは嫌いじゃない」あいつは言った。「ここから離れろ。家に帰るんだ」と。
 それが結局、エリック・ハリスがぼくに言った最後の言葉になった。(p.19)

 エリックとディランがテレビゲームの世界に入りこんでみると、その世界には明確なルールがあった。だから、あいつらはすごく気に入った。そのルールは事前に決められていて、破ることはできなかった。ぼくらがいたような世界に住む多くのキッズにとって、それは天の恵みだった。現実の世界では、ルールはいつも変わり、いきなりトラブルに巻き込まれることだってある。でも、テレビゲームは違う。(p.47)

 ぼくらはテレビゲームの画面上に現れる切れた脊髄がついた血まみれになったヴァーチャルの頭蓋骨を見て、笑うことができる。それが現実でないことを知っているから。それが想像の産物だと知っているから。
 現実の世界にある恐怖を笑うことは、そんなに簡単なことじゃない。(p.48)

ジョックスたちはトレンチコート・マフィアをクソみたいに殴って笑い、トレンチコート・マフィアは何人かの私立高校生をクソみたいに殴りに行く。彼らはジョックスたちとコロンバインでいじめをするやつらへの憎しみがあまりに強すぎて、自分たちが憎んでいる、まさにそのものに、自分たち自身が変わってしまうことを許した。(p.81)

トレンチコート・マフィアは、コロンバインでのいじめに対して立ち向かうことを選んだ。彼らのほとんどは、ぼくが4年生になった頃には、すでに卒業したか、いなくなっていた。でも、彼らの行動――そして受容――はエリックとディランの心に強く焼きついていた。あいつらは初めて、いじめにただ耐えることを選ばない、のけ者のグループを知った。初めて、あいつらはすぐにやり返すやつらを知ったんだ。
 2人ともその経験を忘れなかった。(p.81-82)

 ディランはコンピューター・デザインを勉強するためにアリゾナ大学に出願しようと思っていると言った。将来のための計画を立てているようだった。ぼくは、あいつを励ました。(p.117)

 ぼくはエリックに、仲直りしようと言った。ぼくらはあまりにも長い間、お互いをうんざりさせてきた。僕は言った。去年と比べでぼくはすごく変わったし、いろんな意味で僕は嫌なやつだったのもわかってるって。あいつにも、自分自身について同じように思っていることを願う、と。「ぼくらは2人ともガキだった」僕は言った。「もう気持ちを切り替えたいんだ」。
 エリックは驚いたようだった。あいつはぼくが仲直りを申し出るなんて思ってなかったし、まして自分が嫌なやつだったと認めるなんて思ってもいなかったんだと思う。あいつは肩をすくめて言った。「いいんじゃない」。
 それは不思議な感じだった。授業が始まる頃には、ぼくらは自分たちがどんなに馬鹿な子供だったかについて冗談を言っていた。たぶん今も、どこかで同じようなことをしている2人の2年生がいて、そいつらも4年生になるまで2度と話したりしないんだろうな、とエリックは言った。面白かった。ぼくらは笑った。(p.123)

ジュディは、ディランの父親が、秋に申し込んでいるアリゾナ大学へ彼を連れて行ったことを知った。ディランは彼の将来使う寮の部屋や学生用ラウンジを見て、キャンパス内の徒歩ツアーにも参加した。
「彼女はディランの様子にとても興奮していた」ジュディはディランの母親について回想する。「ディランは自分の部屋を選び、女の子たちを眺めて、その子たちのことを話していた。それは、今まであの子がほとんど1度もやらなかったことなの。彼は夫を突ついいて言ったわ。『あっ、今の彼女は素敵だったね。見た?』」。
「彼女は、『ディランが自分の道へ進んでいて夫はとても喜んでいる』と言った」ジュディは続ける。「彼女は、ディランに聞いた。『本当に、こうやって大きな大学に旅立ちたいの? もっとゆっくりと独立したいんじゃないの?』と。でも、彼は行きたがった。カフェテリアのそばになりそうな部屋を彼は選んだ。キャンパスがどんなにすごいかについて話し、わくわくしていた」。
「彼はコンピュータが大好きだったし、その時、コンピュータの学部に行くつもりだった。プロムにも行く計画を立てていた。こんな風に自分の殻から出てくる彼を見るのはとても珍しいことだったわ。彼は自分の道を見つけたみたいに幸せそうに見えた」。
 ジュリーは少し間をおいた。
「その間ずっと、あの子は大殺戮を計画していたのね」。(p.137-138)

 将来の計画を立てていたように見えたのは、ディランだけじゃなかった。エリックは海兵隊への入隊を志願していた。空軍の退役軍人の息子として、あいつはあの学期中、軍役に服すことへの情熱を話してた。それに、銃を持って走り回り、アメリカを守ることでお金をもらえるという考えは、あいつにとってかなり魅力的だった。
 1999年4月15日、エリックと両親は、エリックの入隊志願について話すため海軍の採用担当者と会った。うつ病治療するためにルボックスを服用していることについてウソをついたせいで、あいつの志願は拒否されたと告げられた。そのせいで――おそらくエリックが胸部奇形のための服用歴を明らかにしていなかったせいもあるんだろうけど――軍は彼を採用しなかった。
 エリックは次の日学校でそれに触れた。それは、コロンバイン襲撃の前の金曜日だった。あいつは、それを笑い飛ばすように話していたけれど、内心、落胆しているように見えた。(p.138-139)

 ディランは、自分を止められるものは何もなかった、と両親に断言する。『ロッキー・マウンテン・ニュース』の記事「戦争は戦争」によると、「おれたちが感じていることをおまえらは理解できない」とあいつは言っている。「どんなにできると思ったとしても、おまえたちには理解できない」。
『ロッキー・マウンテン・ニュース』は、エリックが自分の両親に賛辞を送っているところを引用した。「おれの両親は、おれの知るかぎり最高にイカした両親だ」あいつは言っている。「おれの父さんはグレイトだ。おれは自分が、ただの狂った反社会的人間だったらいいのにと思う。それならおれには良心の呵責がないだろう。でも、あるんだ。このことは力心を引き裂くことになるだろう。彼らは絶対に忘れることはないだろう」。
 警察の報告によると、エリックは他のテープでも同様に、哀惜の思いを表している。あいつは1人で車を運転しているときに、車の中で一部を録画していた。「2週間半後には死ぬことになるのをわかってるっていうのは、変な感じだ」あいつはカメラに向かって言っている。あいつは、自分が恋しく思うだろう仲間たちについて話し、ミシガンと〝昔の友達〟を再訪できたらよかった、と言っている。このテープを見た警察官は、「このとき彼はおとなしくなると、泣き始めたらしく、顔の横側から涙を拭いた。彼はカメラに手を伸ばし、そして電源を切った」と記されている。
 あいつらの最後のビデオは2分足らずのものだ。カメラの背後でエリックは「さあ、言ってやれよ」とディランに言う。
「じゃあ、母さん。もう行かなきゃ」。ディランはカメラに向かって言う。「おれたちのささやかな審判の日まであと30分ほどだ……(聞取不能)なかぎり、この最後の審判の日が引き起こすあらゆるクソみたいなことについて、ただ謝っておきたかった。おれはここよりもましなところへ行くんだってことをわかってほしい。おれは人生がそんなに好きじゃないし、どんなところへ行ってしまうにしろ、今よりは幸せになれるってわかってる。だからおれは行く」。(p.220-221)

ほんの些細な事でも思い出すんだ。例えば、新しい複数同時プレイ型ゲームを買って遊びだすと、突然、ディランならそれをどう思っただろうかと考えたりする。それから、エリックとディランがあんなに愚かで残酷なことをしてしまったことにまた腹を立てる。ぼくらはあんなに楽しい時間を過ごしたのに、それらの思い出は今、永遠に汚されてしまっている。こんな風に裏切ったから、ぼくはあいつらが嫌いだ。ぼくらみんなを裏切ったから。(p.284)

何か言葉をつけて片付けるのは簡単だ。だけど、言葉をつけたとき、言語ではすくいきれない感情が漏れていく。

緋片イルカ 2023.3.15

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