映画『コーダ あいのうた』(三幕構成分析#73)

※この分析は「脚本講習」の参加者によるものです。

※この作品は次回の「分析会」でとりあげる作品です。

※あらすじはリンク先でご覧下さい。
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【ログライン】

家族内で唯一健聴者のルビーは、人前で歌うことに自信がなかったが、V先生と出会い、歌声を認めてもらったことで、夢を見つけ、音大の試験に挑戦、合格し、旅立つ話。

【ビートシート】


Image1「オープニングイメージ」:「海」家族で漁の仕事をしているので、海のイメージが一番始めに出てくる。

CC「主人公のセットアップ」:「手話・授業中の居眠り・魚臭い」兄と手話で冗談を言い合っている。朝早い漁の仕事を手伝っているので、学校で授業中に居眠り。着替える暇もないので魚臭いとクラスメートに悪口を言われる。
マイルズを見つめていることで、好きなこと(気になっていること)も伝わる。
「ジャンルのセットアップ」

Catalyst「カタリスト」:「みんなの前で歌えない」合唱のパート分けをするためにハッピーバースデーを歌わされる。それぞれが自信を持って歌う中、ルビーだけが歌えず、その場から逃げ出す。
(※はじめは、V先生との出会いとしていましたが、カタリストはディベートのキッカケとなるとのことで、訂正しました)

Debate「ディベート」:「V先生と話す」過去に発声を馬鹿にされたことがあり自信がなく、そのせいでみんなの前で歌えなかったことをV先生に伝える。

Death「デス」:「」

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「みんなの前で歌う」ルビーが合唱クラスのみんなの前で歌うシーン。ルビーが一歩踏み出した部分だったので、PP1とした。

Battle「バトル」:「」

Pinch1「ピンチ1」:「」

MP「ミッドポイント」:「漁の合間に歌の練習・漁師共同組合を設立」曲が入ったこと、時間でMPだと考えた。また、このあとすぐにフォールが始まったため。

Fall start「フォール」:「遅刻を注意される」
V先生から遅刻を注意される。二度と遅刻しないと約束するも、その後両親のテレビ取材が入り、通訳を頼まれ、断りきれずに遅刻をすることになる。結局、その日はV先生のレッスンを受けられなかった。

Pinch2「ピンチ2」:「」

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「コンサート会場」
幕が開き、コンサートが始まったのと同時にここから父親(家族)に夢を認めてもらえる第三幕に入っていくと考えた。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「」

BBビッグバトル:「音大の試験」自分の夢を叶えるための試験。BBとしてはここ以外にはないと思う。

image2「ファイナルイメージ」:「手話」車の中から手話で「I love you」

エピローグ:

【感想】

ビート取りやすいと言われましたが、結構悩んでしまいました…
デュエット曲を歌っている時の音が消える演出は凄く好きでした。音が無い状態が分かりやすく、共感出来ました。原作のエールを見ていないのですが、母親の気持ちの変化は分かり難かったです。ベタですが、母親は最後まで反対していて、音大の試験場で手話で歌うところで心が動く構成でも良かったかと思いました。

(米俵、2022.10.9)

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『映画『コーダ あいのうた』(三幕構成分析#73)』へのコメント

  1. 名前:川尻佳司 投稿日:2022/10/15(土) 20:52:01 ID:5a79b4482 返信

    最後の父親の視点になるシーンはハッとさせられる演出でしたね。このシーンのためにこの女の子の物語があると思えるくらい印象的でした。わかりあえなさというのは「パワーオブザドッグ」でも強く感じたところで、近年の重要テーマですね。この映画ではわかりあえないからこそ愛が素晴らしいものとして感じられて良かったです。
    なので、父親をもっと出せばよりここに感情移入できるのではとか、そもそもなぜ漁をやれてたのだろうとか思ったり、後半分かりづらさがあったなと感じました。

    コーダと歌をテーマに少女の自立を描いた「ソロ羊毛」になるでしょうか。
    細かいビートについてはこんな見方もあるのではないかと思いました。

    Catalyst:13分「みんなの前で歌えない」コーダとしての恐れ
    カタリストはディベートのきっかけと考えています。

    Debate:13分~「湖での歌」「V先生との問答」

    Death:24分「みんなの前で歌う」コーダとしての恐れが一つ消えた

    PP1:25分「デュエットを任される」第二幕はV先生やマイルズと音楽の道に入ります

    Battle:32分~「V先生と音大の話」「母親から歌の否定」音楽とコーダとしての葛藤です

    Pinch1:43分「両親とマイルズとの話」音楽とコーダとの交差でこれをきっかけにまた歌えなくなりMPにつながります

    MP:48分「力強い声で歌う」コーダとしての恐れがまた一つ消え、音大への道が開けます

    Fall start:54分「遅刻を注意される」危険度アップです。レッスンも止まり、両親から進学を反対されます。

    Pinch2:71分「船の免許停止」(マイルズと仲直り)これをきっかけにPP2に向かいます

    PP2(AisL):75分「ルビーが漁を手伝う決意」(音大は後回し)外も真っ暗です

    DN:76分~「母との話」「兄との話」「合唱コンサート」「父への歌」父親が娘ののどに手を当てて、振動でも必死に聞こうとするところ、ここが一番暗く感じますね

    BB(TP2):92分~「父親の決意」「音大の試験」

  2. 名前:緋片 イルカ 投稿日:2022/10/28(金) 06:32:25 ID:6867be6f1 返信

    米俵さん、川尻さん、ありがとうございます。

    ●米俵さんへ:
    ログラインが以前より、かなりすっきりしてきましたね。

    アクト1「家族内で唯一健聴者のルビーは」

    アクト2「人前で歌うことに自信がなかったが、V先生と出会い、歌声を認めてもらったことで、夢を見つけ」

    アクト3「音大の試験に挑戦、合格し、旅立つ話」

    と分解してみると、まだアクト2がごちゃごちゃしているのが、よくわかるかと思います。
    まずはここを「一言で要約」できるようにしましょう。要約には文章のセンスも必要で、それこそが重要です。

    子供がお話するときに「今日はね、〇〇ちゃんの家に行ってね、××を食べてね、その後ゲームをしてね……」となってしまうのを、一言でいえば「友達と遊んだ」です。この感覚です。ルビーは、アクト2ひっくるめて「何をしたのか?」と考えて、それを「一言」で言語化するセンスを磨いてください。

    物語を「家」として喩えれば、ビートは家を支える「柱」のようなものです。
    その中でも「PP1」「PP2」は大黒柱です。この2つはログラインとも関連します。

    米俵さんの「PP1」「PP2」として選んでいる場所は、シーン自体はおかしくないので、演出としての三幕構成の感覚は掴めてきているはずです。ただ、それを言語化にするときには、もっと気を遣った的確な言い方を考えてみると良いのではないかと感じます。

    分析会でログラインのアクト2については、改めて質問いたしますので、お考えください。

    ●川尻さんへ:
    ビートはほぼ同感でした。捉え方の違いとして、サブプロット、ビッグバトルのとり方について、分析会でお話しようと思います。創作に応用する上では「こうやって捉えておいた方が良いよ」というかんじの話です。

    また、米俵さんの「オープニングイメージ」「ファイナルイメージ」、川尻さんはビートとしてとっていませんが何故か? この辺りの理由や意義、そもそも「イメージ」はどういう効果なのかを質問させていただきますので、考えておいていただければと思います。

    なお、お二人とも、当日、僕が話し忘れてたら質問してください!
    僕の分析表は『エール』と合わせてアップします。

    • 名前:川尻佳司 投稿日:2022/10/28(金) 08:25:33 ID:1477348d1 返信

      ここではオープニングイメージとファイナルイメージは省略してしまったもので、ビートとして取っていないわけではありません。失礼しました。映画全体の雰囲気、調子を表すのと最初と最後の変化を表すものと捉えています。

      • 名前:緋片 イルカ 投稿日:2022/10/28(金) 17:11:24 ID:6867be6f1 返信

        省略していけないとかではないですので、お気にはなさらずに。
        米俵さんの選んだ「イメージ」について、どう感じたか?
        「効果的なイメージとは?」といったことも話せたらと思います。