脚本課題の実践編

※この記事は「ライターズルーム」において、「10分脚本」課題の100本以上の提出をした人向けの内容です。

ライターズルームメンバーへ

この記事にある課題について、提出はすべて任意です。課題の内容は、これまで「10分脚本」はたくさん書いてきたけど、長いものが書けない、どうしたらいいかわからないといった人向けのものです。書きやすい順に、だんだん分量が多くなるように並べていますが、必ずしも順番を守る必要はないので、自分に合いそうなものだけ自由にピックアップして取り組んでみてください。また一回出したら終わりというのでもなく、必要と思えば、同じ課題に何回取り組んでいただいても構いません。ご自身のスタイルで応募に取り組める人は、自由に書いていただいて一向に構いませんが、応募はしてるけど、なかなか受賞に繋がらないという時には、課題の活用も検討してみてください。実践編に相応しく、しっかりと受賞など狙っていきましょう。100本提出した上で提出された上で、以下の課題を提出する人にはイルカが必ずフィードバックします。まだ100本出していない人は、単純な実力不足の可能性が高いので基礎をしっかりするようにしてください。

実践編01「1分脚本」

「10分」の書き間違いではなく「1分脚本」です。テンプレートの1枚に収まる内容、つまりほぼワンシーンだけをあえて書く練習です。1枚で魅力的なシーンを作れるか、描写力アップの狙いです。1枚では構成が入る余地もないし、説明ゼリフなど入れていると、それだけで終わってしまうでしょう。バックストーリーを前提に、すでに何かが起きている状態のようなシーンを書くのが練習になるでしょう。提出があった場合、イルカからト書きやセリフの一字一句まで細かいフィードバックを返します。1枚ですので、10本やっても、すでに100本書いている人には大した文量ではないはずです。挑戦してみてください。この感覚が身につけば、動画サイトなどの「ショート動画」とかCM系とかに応募できるものがあるかもしれませんので、探してみてください。

実践編02「ショートフィルム脚本」

短編映画の定義として、アカデミー賞の基準では「エンドロール含めて40分以内」というのがありますが、15分ぐらいあれば、しっかりしたものは作れます。この尺は、エンドロールや映像的な間延びも含めた時間なので、脚本でいえば「10分脚本」で、少し枚数オーバーしてしまったぐらいの感覚で問題ありません。つまり、「10分脚本」と同じ感覚で良いということです。コンクールによって条件が違うので、要項を調べた上で、これまでの課題提出と同じ感覚で「10分脚本」を書いてみてください。これまで以上の「修正稿」の回数を重ねて、しっかり納得いくまで直すことで受賞確率は高まります。いままで書いた100本のなかで、良い出来だと感じられる作品、好きな作品、メンバーのフィードバックで反応が良かった作品などの、3回目の修正稿から始めるのも良いでしょう。過去受賞作品のチェック、選考委員がクリエイターならその人の作品に触れるといったことも役に立つことがあるかもしれません。また、「テーマ触
媒」の代わりに「フック」となる「題材」や「テーマ」などを見つけるのも効果的です。

実践編02「アニメ枠脚本」(20分脚本)

30分枠が、アニメに多いので「アニメ枠」と呼びましたが、アニメを書けという意味ではありません。「30分枠」ということです。ややこしいですが、30分枠の本編は20分程度です。なので「10分脚本」を2本で完結する話として書いてみてください。真ん中に1回CMが入るとして「前半の10分」(Aパート)のラストでは煽りを入れるイメージ。視聴者にチャンネルを変えられないように興味を引く終わらせ方をする。そして、CMが開けて、新たな展開にもっていく。そういうイメージで「10分脚本」を2本として書くのです。名探偵コナンの1話完結回とか、アニメでなくてもいいので「30分で完結するミステリー」の構成がわかりやすいので参考にしてみてください。「事件」が何分ぐらいで起きているか(PP1)。シリーズものではキャラ紹介は端折られていますが、シリーズの1話では「事件」と同時にキャラのセットアップをきちんと処理しているはずです。そして、「事件」が起きてからCMに入るキーバタン(※コナンの扉の閉まるアイキャッチの音)までに、どこまで捜査が進んでいるか(CMが入る前がプロットアークのMPと考える)。いくつかパターンはありますが、当たり前ですがCM前のAパートで事件が解決してることなどありませんから、後編が解決編。エンドロールが入ってからおまけのエピローグ。エピローグについては短さにも注目してください(初心者はエピローグにだらだら時間をかけすぎる)。ミステリーでは「事件」=メインストーリーでわかりやすいですが、ミステリー以外の話でも、30分枠なら構成は似てきます。なお、脚本提出時は2つのファイルに分ける必要はないので、AパートとBパートの切れ目にここでCMとわかるように書いておけばよいです。コンクールとしては30分ものは、短編映画の枠内になりそうなので応募するなら、そちらへ。

実践編03「テレビドラマ枠脚本」(45分脚本)

テレビ局のコンクールなどに多い分量です。「60分放送枠」の本編は45分程度なので、「30分枠脚本」をうまく書けるようになっていれば、そこからの応用で「60分枠」にもっていけます。「アニメ枠脚本」×2本と考えれば良いのです。コンクールではCMのタイミングは問われないので、記載は不要ですが、イメージとしては同じで10分ごとに煽って終わるようにして、CM開けには新たな展開にもっていくような感覚。CMのタイミング3回が、それぞれ「PP1」「MP」「PP2」がくるような構成を意識する。厳密に10分ごとでなくても構わないの「10分前後、展開を進める」という感覚で構いません。「テレビドラマ枠脚本」では、とりあえず、スリーポインツが守れていれば、構成上、その他のビートは意識しなくても大丈夫です。まずは構成上の大きな柱を固めて、あとは魅力的な描写や、クライマックスなどを繰り返して修正することで、良いものになっていくはずです。また、そもそもの「フック」を見つけるのは「ショートフィルム脚本」で書いたとおり、コンクール応募すべてに関わります。過去の受賞作を読めばわかるとおり、技術的にかなりレベルが低くても「題材」だけで評価されているものもあるぐらいですので、良い「題材」を、しっかり構成すれば、受賞は近きます。作品の参考としては、名探偵コナンにも「前後編」になっているような回がありますが構成が崩れてしまっていることが多いので、あまり参考にできないでしょう。むしろ、アメリカドラマなどの、この長さの良作はたくさんあるので、そちらのが参考になります(特にシリーズの1話目)。

実践編04「映画脚本」+「補助資料」

「映画脚本」は90~120分もの想定。ドラマの2時間ものと映画とでは、求められるものに違いがあるので注意が必要です。前者であれば、これまでと同じ流れで「テレビドラマ枠脚本」×2という感覚でも構いません。コンクール自体が映画を想定している場合、劇場でスクリーンで上映されることに見合ったスケール感が、より求められるといえます。「映画館で見たい!」と思えるか、「テレビや配信でいいや」の感覚が参考になるでしょう。映画脚本になるとビートシートが直接使いやすくなります。これまで「10分脚本」と合わせて相当数の分析もしてきているはずですので、書きたいものに似たジャンルや似、たテーマの映画の構成は、そのまま参考にできるはずです。「10分脚本×○本」という感覚で書けてしまうなら、それはそれで構いませんが、120分などは長いので、先に構成であたりをつけておいた方が書きやすくなるでしょう。それがプラスとした「補助資料」です。1つめは「ログライン」。自作に対してログラインを作る場合は、長さはあまり気にしなくても構いませんが、まずは骨格を表す「誰が、何して、どうなった」だけの1行に収まるようなログラインを意識すると良いでしょう。そのまま、各アクトの参考になるし、いろいろ考えているうちに間よったときに方向性を確認するコンパスのような役目を担ってくれるのがログラインです。2つめの「補助資料」は「ビートシート」です。ビートの意義や感覚が掴めている方であれば、ビートシートを作る(ビートを箇条書きにして書く)だけでも、作品の全体像がかなり掴めるはずです。未熟な人は、やはりスリーポインツから固めていきましょう。120分ものとしたら、30分、60分、90分の切れ目にどんな展開が起こるか。そこが全体の柱となります。
3つめの「補助資料」は「シノプシス」(あらすじ)。全体の文字数を決めて4分割で書くのです。たとえば、ワードの適当なテンプレートで4ページ分を全体として「PP1」までを1ページで書く。2ページは「MP」まで、3ページで「PP2」まで、4ページ目でアクト3とエピローグまでしっかり書く。このときは、主人公の心理(キャラクターアーク)にとくに注意して不自然な動きがないか、魅力的な活躍をしているかなどをチェックしておくとよいでしょう。一人称小説を書くような感覚で、主人公を視点をしっかりと守れているかが大事です。どこまで準備するかは、自分のやりやすい方法で構いませんが「行ける!」と感じるまでは無理に書き出さなくてもいいでしょうし、書き始めたら、途中で迷っても最後まで書き抜ける。初稿で不自然なところはあっても、しっかり直すと思えば問題ありません。むしろ、初稿で「すごい」なんて感じる方が、自己満に陥ってる危険性があります。その後、修正稿に入っていく手順は、他と変わりませんが「映画脚本」は分析が慣れている長さだと思うので、ビート分析の力を存分に活用できるのではないでしょうか。各ビートの検証は、「主人公のセットアップ」はしっかりできているか、「カタリスト」が遅くないか、アクト2ではテーマや題材の魅力を引き出せているか、「ビッグバトル」は盛り上がっているかなどを注意すると良いでしょう。

実践編05「ドラマシリーズ脚本」

魅力的なドラマシリーズを書くのは一番、大変かと思います。だらだらとページを埋めるだけであれば頑張れば応募できるかもしれませんが、それが面白いのか、魅力的なのかとなると別問題です。全体の構成はビートの構成が当てはめられます。1話分のしっかりした脚本が書けることも必要です。そういう意味で「テレビドラマ枠脚本」や「映画脚本」が書けないようでは、魅力的なドラマシリーズなど書けるわけがないと言えるかもしれません。さらに難しいのは、自然と登場人物が多くなり群像劇的になることが多いので、テーマがブレやすく、各話ごとのビートの当てはめ方にも柔軟性が求められます。単純に頁数が多いだけでも大変なのに、映画以上の技術も必要になってくるのです。とはいえ、プロでも充分に処理できていないことが多いので、ある程度は「頑張り」で乗り切るしかないともいえるかもしれません。また「フック」となるものも映画とは違ってきます。日本の地上波ドラマであれば収益構造からも、キャスティングの比重が多くなるのでキャラクター偏重が起こりますし、「題材」や「テーマ」の選び方でもシリーズに耐えうるものにする必要があります。構成で処理するテクニックもありますが、2時間の映画を引き延ばしただけの展開になっていると、間延びしてしまうことがあるのです。とにかく「ドラマシリーズ脚本」は、ある程度は応募を重ねてから手を出すとよいのかと思います。

イルカ 2025.11.20

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