執筆プランの立て方

「出したいコンクールがある。でも間に合うかな?」

こんなことを考えることがあると思います。

そういうときに、どういう計画を立てていくべきかを考えます。

自由時間の把握

まずは「執筆にとれる時間」が、どれだけあるのかということを考えなくてはいけません。

一日は24時間。そのうち睡眠、食事、風呂やトイレといった時間を欠かすことはできません。多くの人は仕事の時間も拘束されます。

仮にですが、

睡眠:7時間
食事:40分×3回
風呂やトイレ合わせて:ざっくり120分

合計:7+2+2=11時間

としてみます。

食事は朝など数分で済ませてしまうかもしれませんが、食べる準備や、食べた後にくつろいでしまう時間も含めます。風呂やトイレも同様です。風呂からあがった後に、ストレッチをしているとか、そんなのがあれば含めてざっくり計算してしまいます。

仕事は8時間勤務だとして、行き帰りの移動時間も含めると10時間といったところでしょうか。

これらを24時間から引いてみます。

24-11-10=3時間

少ないようですが、働いている大人が平日に使える時間というのは、実際はこの程度ではないでしょうか? 

この3時間をダラダラとテレビや動画を見たり、仕事帰りに呑みにいったりしていると、一日はすぐに終わってしまうのです。好きなことをはじめて、楽しくて止められなくて、3時間をオーバーした場合、睡眠時間が削られたり、寝坊して食事時間が減って(場合によっては仕事に遅刻して)、どこかで帳尻を合わせることになるのです。

休日であれば、仕事の10時間分がプラスされますが、家族サービスなどしなくてはいけないことが代わりに入るかもしれません。

ともかく平日と休日、一週間単位で「執筆にとれる時間」がどれだけあるのかは知っておかなくては、どんな計画も立てられません。あくまで仮の数字で立てましたが、この「自由時間」は人それぞれ違います。もしも、これが一週間通してゼロの人は、環境から変えなくては新しいことはできません。

時間を確保した上で、つぎに考えるのが、どれだけを執筆に当てていけばいいのかということです。

1日、何枚を書けばいい?

たとえば、100日後にコンクールの〆切があるとします。募集要項は100枚~200枚として、まだ1枚も書いていないとします。

初めての応募であれば、最少枚数の100枚以上、書いて「応募すること」を目標とします。それなら100/100で1日1枚、書いていけば間に合います。
10日サボれば1日1.1枚、50日サボれば1日2枚書かなくては間に合わなくなります。式にすると以下です。

公式1「募集要項の最少枚数/〆切までの日数」

しかし、締め切り日と枚数を単純に割るのは現実的ではありません。
かならず、どこかで不都合がでてくるはずです。

・体調をくずす。

・ヤル気がでない。

・仕事や遊びで書けない日ができる。

・ストーリー展開に迷って、進まなくなる。

こんなことはよく起きますし、そもそも募集要項の最低枚数の100枚ぴったりで終わるということはなくてオーバーするでしょうし、ここには推敲の時間もまったく入っていません。

ならば余裕をもった計画にする方が安全です。

募集要項の最多枚数の200枚に合わせて、さらに推敲の時間として2倍します。
200×2/100となり、1日4枚となります。

公式2「募集要項の最多枚数×2/〆切までの日数」

公式1と2を合わせると、1日1~4枚というのが目安になります。

ヤル気がないときでも1枚は頑張って書こう、4枚以上書けているときは調子がいいと思っていいのです。

1枚、何分で書いている?

1日1~4枚書くという一つの目標は立ちました。つぎは、その1~4枚を書くにはどれくらいの時間がかかるかに換算していきます。

これには1枚を何分で書けるかというデータが必要です。

1枚といっても、筆がのっていたり、会話や改行が多いシーンでは速く進みますし、反対にしっかり説明したり描写を書き込むシーンなどでは時間がかかります。一概には言えないのは当たり前です。それでも目安をもっておくことは計画を立てる上でとても有効です。

これを計るには、まず原稿を書くときに1ページ400字フォーマットを使うことが必要です。

1200字フォーマットで3枚と数えるなら、それでもかまいません。ただ、400字というのは応募枚数を換算するときにも便利ですし、文章のリズムとして400字に一回ぐらい変化をつけることで、物語にメリハリがつくのでオススメです。

400字フォーマットをつくり、執筆作業を開始したらタイマーを動かし、書き終えたら止めます。

これを以下の式に当てはめます。

公式3「作業時間/書いた枚数」=1枚の執筆時間

これで1枚書くのにかかる時間がわかります。サンプルをたくさんとれば平均が出せるので、より精度が上がります。

ちなみにイルカの過去2年の1枚執筆時間の平均は「16.0分」です(初稿と推敲の時間は別にとっているので推敲時間は1枚直すのに「12.4分」)。

これを1日1~4枚という目安とかけ算すれば、1日16分~64分は原稿に向かわなくてはいけないということになります。

さきに考えた「自由時間」3時間と合わせても、平日でも現実的な数値です。3時間を超えるようであれば、そのコンクールへの応募は怪しくなってきていると計算できます。計画の見直しが必要かも知れません。

1週間で、どれくらい書いてるの?

1日1~4枚、時間にして16分~64分という目安は立ちました。

これだけの基準で、コツコツ書いていける人もいるかもしれません。そういう方は夏休みの朝のラジオ体操に欠かさず参加したり、テスト勉強なんかでも計画的に進められた人だと思います。

僕は苦手です。テスト勉強は一夜漬タイプでしたし、夏休みの宿題は8/31に片づけるタイプでした。執筆に関しても、まったくやらない日もあれば、集中してると10時間ぐらいぶっつづけで書いたりもします。

脚本を書いていたときは2~3日で書き上げられました。これは、脚本がせいぜい50枚だからです。
「50枚×16分=800分=13.3時間」です。
13時間は週末だけでも書き上げられます。

しかし200枚となるとこの4倍で53.3時間。眠らずに集中でできる時間ではありません。仕事がなければ、一週間ぐらいで書き上げることもできるかもしれませんが、日常生活をしながらこれだけの時間をまとめて確保するのは難しいでしょう。やはり、ある程度はコツコツと書いていかなければなりません。

そこで重要になってくるのは「1週間でどれくらい書いているのか?」という基準です。

これには「タイマーの時間」を、一週間分のサンプルをとらなくてはなりません。
一週間分を合計した執筆時間を7で割れば「実質執筆時間」がでます。

公式4「作業時間の合計/作業日数」=「実質執筆時間」

たとえば月~金曜まで16分ずつで、土日60分書いたとします。
プランA:(16+16+16+16+16+60+60)/7=28.5分

では月~金はやらないけど、土日は120分ずつやったとします。
プランB:(120+120)/7=34.2分

トータルではプランBのが多くなります。

一週間何も書かないと、書いているときのリズムを忘れていまうといった感覚的なデメリットもありますが、土日2時間ずつやるぐらいであれば現実的な計画といえます。どちらがいいかは、それぞれの生活や性格による好みです。

実際の生活では「月火水木と4日間は頑張ったけど、金は遊びにいってゼロだった。その分、土日は頑張った。」
とか、こんなものではないでしょうか?

きちんと計算していない人は、土日の頑張りだけで「いい調子だ!」なんて思ってしまうかもしれませんが、1日に必要な作業時間16分~64分を超えてなければ、本当にいいペースだとは言えません。逆に、ペースに余裕があることが数字でわかっていれば、体調の悪い日などムリせず安心して休むことができます。

生活自体が規則正しい人には、この実質作業時間を考える必要はないかもしれませんが、僕みたいなナマケモノにはこれがとても参考になります。

「1日30分やれば応募可能」という計算がでたとします。

これは感覚的に可能な数字といえそうです。しかし、実質の作業時間が「1日15分」しかない人にとっては、今までの生活の二倍頑張らなくてはいけません。仕事で考えてもわかりやすいと思います。1日30分残業するぐらいは、たいしたことではないでしょう(嫌ですけどね)。でも、毎日30分の残業を100日間、続けなくてはいけないと考えたらどうでしょう? これは大変なことです。

実質執筆時間は、現状の体力ともいえるかもしれません。

書けば書くほど、数字はあがっていきます。2週間、3週間、1ヶ月、半年……とつづけば、平均値が上がり、習慣となっていくことで、基礎的な書く体力がついたということになるのです。スポーツで基礎体力を養うのと同じです。

プロの作家としてやっていくということを考えれば、書きつづけていくことは必須の条件です。

実質執筆時間が少ないうちは、作品の質を考えるよりも、この体力づくりから初めていいと思います。コンクールに受賞することを目標とせず、まずは本数を応募することを目標にしてもいいのです。書いているうちにスピードも質も上がるでしょうし、運がよければひょっこり受賞できてしまうかもしれません。

一人で応募を続けられない人はスクールに通うという方法があります。スクールでは課題を出されるので、半強制的に体力作りをさせられます。これはスポーツジムへいってトレーナーがついてくれるようなものです。

長期目標を立てる

公式なんて、かっこつけた呼び方をしましたが、やっていることは小学生の算数でできる計算ばかりです。それでも、数値化してみることで見えてくることがたくさんあります。〆切を設定するのは、とても重要です。「書きたいものがある」「構想を練っている」などといって、いつまでも書き上げない人は山ほどいます。完成しなければ他人に読んでもらうことすらできません。

コンクールの〆切は何ヶ月も前から公表されているので、早めにどれに出そうか決めて、基準を数値化することは必ず参考になります。基準があれば、変に慌てたり、不安になったりする必要もないし、逆に間に合いもしない目標を立てて失敗することもありません。計画がないのは「無計画」、ムリがあるのは「無謀な計画」です。目標設定に問題があります。計算上では応募できたのに間に合わなかったなら、それは「努力不足」です。反省する点がちがいます。

一つのコンクールへの応募計画の考え方を延長して、長期的な計画を立てていくこともできます。

目標設定のいコツはコントロールできない要素を入れないことです。

たとえばダイエットでは「5キロ減らす」ではなく「1日15分運動する」などとするのです。
運動したかどうかは自分の行動次第です。運動した結果、希望の「5キロ」まで減るか、「1キロ」しか減らないかはわかりませんが「1日15分運動する」が達成できたのであれば、成功です。自分を褒めていいでしょう。その後も続けていけばいいし、慣れてきたら「1日20分」に増やしていけばいいのです。

しかし「5キロ減らす」を目標にしてしまうと、その数字ばかりに目がいってしまい、減らないことに焦ったり、やっぱりダメだと諦めたり、ムリして食事を抜いたりして健康を損なう可能性があります。目標設定が悪いのです。「体重を減らす」というのは、カロリー計算をしっかりできない人には、コントロールできない要素だからです。

僕の2020年の目標は「10本応募する」です。もちろん受賞はしたいけど、そこには運の要素もあります。選んでもらうものなので、自分の努力だけでは受賞できません。だから、目標は「受賞」ではなく「10本応募する」なのです。「○○枚書く」とかでも構わないと思います。行動として、やるかやらないかだけで、達成可能なものを目標の数値にするべきなのです。

やることをやらずに願っているのは「神頼み」しているだけです。神様に「痩せますように」と祈っていても、ぜったいに痩せません。やるべきことはやって、あとは待つしかないのです。ことわざでいえば「人事を尽くして天命を待つ」。

10本応募して、すべて落ちたとしても目標は達成したことになります。それは自信にしていいし、それだけ応募していれば気付きや成長が必ずあるはずです。落選しても落ち込む必要もありません。もちろん、がっかりはします。けれど、才能がないとか、もうダメだとか言っている暇はないのです。あくまで、成長の途中であると思えば、結論をいそぐ必要はありません。人生はまだまだ長いのです。


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↑上記を自動計算できるエクセルシートです。興味のある方はご自由につかってください。

緋片イルカ 2020/04/03

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