帰り道、気まぐれに神社に寄ってみようかと、思った。
あと数分に迫り、白い息を吐いて凍えた手をこすりながら、除夜の鐘を待つ笑顔に満ちた人の列。みな友達か恋人か家族がいて、わたしだけこの群衆の中にいて、独りだった。
終わりをつげる鐘。
今年がよかった人もよくなかった人にも時は等しく流れ、今年は終わる。
始まりの鐘。
新しい門出を祝って、また頑張ろうと誓う。
どうしてこんな列に並んでしまったのかと後悔した。
わたしにとって昨日も今日も、年の変わった明日も、一年前の元日も同じように頑張ってきたし、これからも頑張っていくつもりでいる。
誰かのことをとやかく言っているんじゃない。
自分自身がとことん嫌なのだ。
わたしはそっと列から逃れて明けを待たずに家へと歩いた。
いつもの人のいない道に、今日だけは初詣に出かける人がいて、自分の道がわからなくなってしまった。
背後からゴーンと一つ目の鐘の音が聞こえた。
わたしは明日も変わらずこの道を通り仕事に出かけるのだ。
(了)