『古事記』のおはなし②イザナキとイザナミの国生み(文学史6)

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おのごろ島

イザナキとイザナミは神々の命を受けて、地上世界にやってきます。

天の浮橋という空中に浮いた橋に立って、どろどろした海に矛を突き刺して、掻き回します。

矛を引き上げると、矛の先から滴り落ちた固まりが島になります。

これが「おのごろ島」という最初にできた島です。「自ず(おのず)」も「ころ」も自分からという意味をもつ言葉です。

二神はその島に下りて、天の御柱と神殿をつくります。

神話の創生期は「一」から「二」へと分かれていく構造があります。

虚空から陰と陽が分かれたり、無から光と闇が生まれたり、天と地に引き裂かれたりといった具合です。

男と女というペアが生まれるのも、そのひとつです(※それ以前の神は両性具有として表現されることもよくあります)。

また、世界を産む際の描写に「どろどろしたものに、棒を突き刺す」というものは、よくあるそうです。

男女の結合と出産をモチーフにしていることは言うまでもありませ。

「おのごろ島」が「一」として、まず出来ました。

次の章でイザナキとイザナミは男女として「二」へと分かれ、島を生んでいきます。

結婚

イザナキとイザナミはお互いの肉体の違いに気づきます。

女神イザナミ「吾が身は成り成りて、成り合はぬ処、一処在り」

男神イザナキ「吾が身は成り成りて、成り余れる処、一処在り」

お互いの肉体を合わせようと、誘います。

「天の御柱を左右から回って、出会ったところで結婚しよう」

二神が柱を回って、

女神イザナミ「あなにやし、えをとこを(ああ、愛しい人)」

と、先に声を掛けました。

二神の間に水蛭子(ひるこ)が生まれ、葦の舟に入れて流してしまいます。つぎに淡嶋(あはしま)が生まれます。

「この子たちは不吉な子だ。天つ神のもとへいって相談しよう」

そして、占いによって、

「女人が先に声をかけたことがいけなかった。やり直しなさい」

と言われたのでした。

太古の物語は、ニュースや知識をつたえる役割も担っていました。

紙は高価で、文字すらなかった時代を想像してください。知識を伝えるのに、物語の形式にすることは暗記のしやすさもあったのではないでしょうか。

性教育、恋愛、結婚作法などが含まれていると考えてよいのではないでしょうか。

水蛭子は「蛭のような子」、あるいは「干る」(乾いた)か「放る」(捨てる)でしょうか(※いずれも読みは「ひる」)。

捨てられたのち、七福神の「えびすさま」になったという俗説もあります。

「淡島」の「あは」には不満という意味があるそうです。どちらも子ども=国土として認めないということになります。

国生み

二神は地上にもどって、結婚をやりなおしました。

こんどは、男神イザナキから声をかけました。

そして、数々の子ども=神=国土を生んでいきます。

最初に淡路島。それから四国、九州、対馬……などなど、国ができていったのでした。

兵庫県の淡路島には、イザナキとイザナミを祭る伊弉諾神宮(いざなぎじんぐう)が今でも残っています。

緋片イルカ 2021/01/03

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