物語創作の学び方(文学#58)

何を、どう書けばいいのか?

どんなジャンルであれ、新しいものを学ぶとき、まずは学校のような教育機関を使うのは、とても便利だと思います。

高い授業料はかかりますが、カリキュラムが組まれ、最低限の水準までの知識と技術を提供してくれます。

小説でいえば、原稿用紙のルールから始まり、構成やシーンの組み立て、キャラクターの言動、そもそもの物語としての魅力など、言われてみれば簡単なことでも、意識が向かっていないがために、気付かないのが初心者です。

「守破離」という考え方で言えば「守」の段階で、「先生が○○と言ったから」という教えを守り、まずは基本を身につけることが大切です。

学校で教えられる程度の情報は、文章読本のような書籍を数冊でも読めば書いてありますし、ネット検索でも充分に情報は得られます。

独習力のある人であれば、この方が安上がりで、時間もかからないでしょう。

また、学校の利点としては「〆切を設定してくれる」という点があります。

プロの書き手でも言いますが、〆切なく作品を完成させるのは、なかなかむずかしいことです。

〆切を設定して、いったんはそこまで完成とさせて、次の〆切までに直したり、新しい作品へとりかかる。

この繰り返しはスポーツでいうトレーニングのようなものです。

完成させないまま、だらだらと引きずるのは、初心者の段階では弊害の方が大きいと思います。慣れた書き手が、じっくりと時間をかけるのとは訳が違います。

明確な目的意識があって、そのために時間をかけているのであれば、それは大切な創作時間になりますが、初心者では、見栄や恐れから、完成から逃げてしまっている場合も、よく見られます。

良い作品とは何か?

基本を身につけて、創作で注意するべきポイントがわかってくると、つぎに沸いてくるのは「良いとは何か?」という疑問だと思います。

物語の書き方について、基本的なポイントはつかめた。

では、どうすれば「面白くなるのか?」「良いと言われるのか?」「そもそ良いとは何なのか?」

こういった疑問が浮かぶと、既存の小説や映画を見る目が変わってきます。

それまでは観客の視点で、ただ面白い、面白くないといった全体的、主観的な感想しか抱けなかったのが、

「この作品は、面白くはないが、この部分は斬新だ」とか「話題になっているが、ここは不自然だ」といった細かいポイントを分けて捉えられるようになるのです。

たとえば、観光地にあるような歴史的建築物をみたとき、素人は「きれいだな」といった表面的な感想しか抱けないのに、建築を学んでいる人は専門的な技法などに目がいくのと同じです。

デッサンしたり、設計図に目を通したり、感動したものから技術を盗もうともするでしょう。

物語については分析することが、とても有効です。(参考記事→「物語を構成から分析する意義とは?」

この段階では、たくさんの作品に触れることが大切です。

いいものだけでなく、悪いものも含めて、たくさんの作品に触れて、見識が深まってくると「自分の好きなもの」がはっきりしてきます。

好きなものは「自分の書きたいもの」に繋がります。

それまでの指導者の意見と合わないところも出てくるでしょう。

「先生はこう言っているけど、自分はこの方がいいと思う」と、それまでの教えを破る段階に来るのです。「守破離」の破です。

オリジナルとは何か?

指導者の教えを破ったとき、指導者が頑なであると、折り合いがつかなくなるでしょう。

変にプライドの高い指導者には「自分が先生だ」という意識もあるかもしれません。そういう態度が煩わしく感じることもあるでしょう。

「お世話になったのは事実だが、この人の考えにはもうついていけない……」

自立が必要な段階にきているのです。

理系のような研究に施設が必要な分野では、指導者から離れることはリスクを伴うことがあるでしょうが、幸い、紙とペンがあれば物語は書けます。

自分らしいものを書くために、それまでの環境に弊害があると感じるなら、離れることも必要かもしれません。「守破離」の離です。

物語創作における自立とは、自分で「考えること」「求めること」「書くこと」です。

指導者から教えてもらう受け身の段階ではなく、能動的に、自分で考え、自分なりの答えを求めていくことです。

自分の問題意識に答えられるのは、自分だけです。

似たようなテーマを抱えた同志は必ずいます。身近にいなくても、古典を掘れば必ず見つかります。

けれど同じ人間はいないのですから、微妙なズレもあるでしょう。

そういうことを感じられるようになったとき、「自分にしか書けないもの」が何かわかってきます。

書くときは独りです。創作は、孤独な作業なのです。

支えてくれる人、手伝ってくれる人はたくさんいても、代わりに書いてくれる人はいません。

自分の作品を「書く」と強く思えるなら、あなたは何者にも代えがたい、一人の作家です。評価や知名度は関係ありません。

「自分にしか書けないもの」を目指していると、同じように書いている作家に気付けるようになります。

いま、この時代を生きて、物語を紡いでいる人を「同時代作家」と僕は呼んでいます。

僕のテーマは「いま」「ここ」を生きることなので「同時代作家」は大切な仲間だと思えます。

必要以上に、ベタベタ連む気はありませんし、各作家にはそれぞれのテーマがあるので、僕と噛み合わない場合もあるけど、尊敬の念は忘れないでいきたいと思います。

緋片イルカ 2021/12/30

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『物語創作の学び方(文学#58)』へのコメント

  1. アバター 名前:T.K. 投稿日:2022/01/09(日) 10:04:03 ID:f2f7852d7 返信

    日本とハリウッド 脚本の違い・・・わりにおもしろかったです。よろしければ・・・
    https://twitter.com/Yuki_Mats/status/1477601881967177728

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  2. 緋片 イルカ 名前:緋片 イルカ 投稿日:2022/01/09(日) 21:38:23 ID:d1ceb7d6e 返信

    ご紹介ありがとうございます。読んでみます。

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