「力量の問題」と「ビートが機能しているか?」2つの原因が考えられると思います。
「力量の問題」は描写力、文章力等です。
落語や歌舞伎のような古典芸能なんかを思い浮かべていただけるとわかるかと思いますが、基本的なストーリーの流れは同じでも、演者の力量によって面白さが全く変わります。
歌でもそうですね。同じ歌でもプロの歌手が歌うのと、別のプロが歌うカバー曲や「歌ってみた」では良くも悪くも味わいがかわります。
これらを作者の力量といってしまえば、その通りでもあります。
とくにセリフや文章表現の上手い下手などは、指導でどうこうなるというよりは、もっと読み書きをたくさんして練習してくださいとしか言いようのない場合もあります。
「ビートが機能しているか?」という問題を考える前に、ビートシート通りに作るだけで面白くなるのか?という点があるかと思います。これは構成やビートシートを批判する人の主張するところでもありますが、僕は本質的なビートの意味をわかっている(機能している)かどうかが重要だと考えています。
そもそも、ビートシート通りで面白くなると考えられていたのは構成論が未熟な時代で、作者の思いつきでやみくもに物語をつくるよりは、パターン化された型をつかった方が面白くなるという一時の流行のようなものだったと思います。以前、お話した古いアクション映画の頃とかです。(※「キャラクターアークとは?」(三幕構成5)に補足コメントにあります)
ちなみに日本では新しい理論に感じられているセーブザキャットの一冊目(SAVE THE CATの法則 本当に売れる脚本術)ですら、もう15年も前の本です。同じ著者のセーブザキャット三冊目(SAVE THE CATの逆襲 書くことをあきらめないための脚本術)ではビートシートだけでは足りない部分の補足も書かれています。
ビートの機能について卑近な例をあげるなら「死亡フラグ」なんて言葉がありますが、こういう言葉がなかった時代には悲しさを盛り上げるテクニックとして充分に機能していたけど、いまではフラグが立った瞬間に、観客の方は「ああ、死ぬな」と思ってしまうので、驚かせるにはさらに観客の裏をかかなくてはいけません。
では「死亡フラグ」はもう使えないかというと、そんなことは全くなくて観客にバレないようにフラグを立てることで悲しい気持ちにさせるシーンは作れるのです。
かっこつけてフラグを立てないよりは、ベタベタでも立てた方がいいし(あまりに下手すぎるのはギャグになってしまいますが)、理想はバレないように立てることです。
構成の上での上手い下手というのもあって(構成の力量と言えるかもしれません)、それはビートの本質を理解できているかによるところがあります。僕はビートはあるかどうかだけでなく効果的に「機能しているかどうか?」という観点を持つようにしています。アメリカの商業映画でも、いかにもビートっぽいシーンはあっても、この流れでは、機能していないなと思うことがよくあります。
またフックについては、今の時代や世の中の興味とマッチしているかどうかという点があると思います。
たとえば「アラフォー」という言葉が流行った頃には「働く女性が仕事を選ぶか、恋愛・結婚・子育てを選ぶか?」という問題が現実社会にあって、だからこそ「アラフォー」という言葉も流行語になったのだと思います。
一度、流行ると二匹目のどじょうを狙うかのごとく、同じテーマにした物語がつくられていきます。
そうなると「死亡フラグ」と同じで、見る方も飽きてくるので、新しい要素をくわえる流れになっていきます。
いまも「働く女性」というテーマは続いていると思いますが、ただシンプルに「仕事か?結婚か?」を問うだけでは、現代ではフックとして弱いということになります。
また、当時でも今でも、その手のドラマを子供や高齢男性が見るかというと、なかなかフックされないとも思います。
少なからず好みというものも入ってくると思います。
フックはプロデューサー的なセンスに近い部分があると思います。
時代性や、性別や年代によっても変わってしまうのでフックが弱い強いを判断するのは、一概には言えないと思います。
小説や映画に興味ある方は、こちらも覗いてみてください。
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の本についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
キャラクター論についてはこちら→キャラクター分析1「アンパンマン」
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