イルカの「満点映画」紹介

採点制度「好き」「作品」「脚本」(文章#43)の記事で「好き」と「作品」を客観的に評価することが大切だと書いた手前、僕の5点満点の映画も、きっちりと書いておこうと思います。

ここに紹介するのは僕が「好き」「作品」「脚本」すべてにおいて5点満点だと思う映画です。

※あらすじはリンク先でご確認ください。

『トイ・ストーリー』1995/『トイ・ストーリー2』1999

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世界初のフルCGアニメーションとして評価されたのは、技術以上に脚本の力があったと思います。ときどき「CGアニメ」というものが苦手という方には仕方ないかもしれませんが、今見ても楽しめるのはストーリーの力だと思います。CGの荒さを目立たないような演出や、オモチャという企画にしたところも、そもそも成功の要因だと思います。トイストーリーシリーズで脚本賞にノミネートされているのは1だけです。「好き」だけでいえばトイ・ストーリー2のが好きですが、やや脚本にムダを感じます。四捨五入すれば、1も2もオール5です。CGアニメは予算の問題はともかく、ショットやキャラクターなど脚本をダイレクトに作品に反映しやすいので、脚本の力が影響しやすいと思います。
参考:「トイ・ストーリー」興収資料

『リトル・ミス・サンシャイン』2006

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ホームドラマ・コメディとして満点作品です。低予算で作られて、これだけ評価されるということ自体に脚本の力を感じます。脚本家はデビュー作で100万ドルを稼いだとか。その後、スカウトされて『トイ・ストーリー3』の脚本を書いています。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』1985

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作品についての解説はいらないかと思います。小ネタのセットアップ・ペイオフ、フォール以降の展開など、ビートシート以前の脚本ながら、素晴らしいヒントが隠されています。いまだに愛されているのは演出や演技もいいのはもちろん、脚本としても完璧な映画だからだと思います。個人的には3も好きです。ここまでの三作品は

『セブン』1995

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多少、グロさを感じる人がいるかと思いますが刑事物サスペンスとしての素晴らしい作品だと思います。デビッド・フィンチャー監督の演出は言うまでもなくPP2での変調も素晴らしい脚本だと思います。

『ショーシャンクの空に』1995

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これも有名映画なので、とくに説明はいらないと思いますが、徹底されたミスリードの脚本は完璧だと思います。『セブン』とともに、きちんとテーマやドラマがあるところも素晴らしいです。

『パルプ・フィクション』1994

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『パルプフィクション』のような「らせん型構成」で成功しているものは他に見あたりません。タランティーノ監督はアカデミーを受賞し始めた頃より、初期の脚本の方がすばらしいです。そもそもが『レザボア・ドッグス』の脚本を評価されて出てきたような方です。レザボアも面白いけど、それを参考にしたと思われる『ソウ』の方が「作品」としての完成度は高いと思います。ソウは人気シリーズにもなって「作品」5、「脚本」5でもいいと思うけど「好き」は3ぐらい。タランティーノは『イングロリアス・バスターズ』を書くときに『パルプフィクション』を脇において書いたらしいですが、自身では「らせん型構成」による力学を理解してない、偶然の産物なのかもしれないと思います。個人的な好きは『キル・ビル』(とくに2が良い)、『デス・プルーフ』だけど「脚本」的には評価しづらい。

『アニー・ホール』1977

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監督・脚本(この作品では主演)のウディ・アレンは諸問題から嫌われることが多い人ですが、世界一脚本が巧い人です。アカデミー賞に最多の24回ノミネート、監督賞を1回、脚本賞を3回受賞しています。多作な分、作品にムラがあって「脚本」3ぐらいの作品もある一方、5をつけられる作品もたくさんあります。近年だと『ミッドナイト・イン・パリ』が有名ですが、一昔前だとやはり『アニーホール』になるのかなと。個人的な「好き」でいえば『ブロードウェイのダニー・ローズ』。他に、好き嫌いなく万人受けしそうなのは『ブロードウェイと銃弾』『カイロの紫のバラ』『マッチポイント』あたりでしょうか。
参考:映画『女と男の観覧車』:赤と青の意味(三幕構成分析#33・音声)

『アパートの鍵貸します』1960

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名作を挙げだしたらキリがないのですが、ウディ・アレンを挙げるならビリー・ワイルダーも挙げざるを得ないというかんじがしたので1つだけ入れておきます。ツイストのお手本のような脚本。

『レベッカ』1940

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流れでヒッチコックも一つ挙げるならということで。このあたりの古典のすごいところは、何より「今見ても楽しめることです」。演出はベタに見えるかもしれませんが、それは後世の演出家がヒッチコックを真似たからです。

『ローマの休日』1953

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古典はシナリオスクールなどで講師が勧めがちなのでキリがないのですが、ロマコメとしてはコレを。演出として名シーンと言われるオシャレなシーンと、ラストまで引っ張りきる感情ドラマは脚本の力は、脚本家を目指すような人間なら見なくてはならないと思います。

『東京物語』1953

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小津より脚本家の野田高梧の力だと思っています。シナリオ構造論を読むと、この人が構成の力学を理解していたことがわかります。もちろんビートシートはおろか、三幕構成すらなかった時代です(キャンベルのモノミスは1949年ですが読んでいたとは思えない)。分析会で5・5・5を点けてしまったので入れておきます。脚本でいえば四捨五入すれば5という感じ。名シーン、名セリフのポイントが高いです。
参考:映画『東京物語』(★4.33)(三幕構成分析#101)

『タイタニック』1997

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ある時代の人には言うまでもない作品ですが、最近では見たことがないという若い世代も増えてきているので一応。『アバター』の監督ですよ?と言っておいた方がいいのかな笑 『タイタニック』も「脚本」5をつけて良いレベルですが、この作品のせいで完全に埋もれてしまった『タイタニックの最期』の方「脚本」だけは上だと思います。

『サウンド・オブ・メタル』2020

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最近の映画も挙げておこうと。ミニプロット系でギリギリエンタメ性を保っています。近年、聴覚障害者ものの作品が増えてますが、設定上の要素だけでなく人間的テーマまで落としこんでいる名作です。アカデミー賞の受賞・ノミネート歴からも「作品」としての高さも窺えます。

『スパイダーマン』2002

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アクションなど、この手のジャンルはキャラに頼りがちで構成がブレがちですが、サム・ライミ監督の初代スパイダーマンはスーパーヒーロープロットのお手本のような完成度だと思います。近年のマーベルシリーズは、見るのが途中で止まってしまっているので評価しづらいのですが、ファン映画だけじゃない名作もあるのだと思います。『スパイダーマン2』の脚本はアルヴィン・サージェントが書いていることと、『アメイジング・スパイダーマン』をマーク・ウェブ監督が撮っていることを比べたとき、脚本と監督とどっちが重要かがよくわかると思います。ちなみにアメイジングも途中からリライトのためにアルヴィン・サージェントを呼んだそうですが、作品を見ると時すでに遅しだったのだろうなと思います。脚本家よりもリンダ・シーガーのような優秀なアナリストに頼るべきだったのでは。

『セブンス・コンチネント』1989

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ミヒャエル・ハネケはミニプロット系の最高峰だと思います。ミニプロット自体、「好き」で評価されがちのものですが、この監督のカンヌやアカデミーの映画賞の受賞歴を見れば「作品」として評価されていることが理解できるかと思います。サスペンス好きなら『ファニーゲーム』、ドラマなら『愛、アムール』を勧めるところですが、個人的に好きなのは『71フラグメンツ』。脚本としては評価しづらいので『セブンス・コンチネント』を選びました。いや、贔屓が入ってるかな笑

『塔の上のラプンツェル』2010

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過去に記事でとりあげているので詳細はそちらをご覧下さいという感じですが、ビートの勉強を始めたい人へのオススメとして入れておきます。三幕構成といえばヒーローズジャーニー、ヒーローズジャーニーといえば『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』ということになりがちですが、個人的には「好き」3ぐらいですし、今見るとそれほど面白くないと思うところも多々あります。それなら同じヒーローズジャーニープロットのラプンツェルの方が勉強に向いていると思います。ミュージカルなのでビートがとりやすい(一つのシークエンスが長い分、シーンが少ない)のも良いかと。アクト3のツイストも効いているし、ドラマもしっかりしていて感動的だし、素敵なシーンもあるし、脚本としての完成度はCGアニメの中でも群を抜いて高いです。

参考:映画『塔の上のラプンツェル』:完成度の高いヒーローズジャーニー(三幕構成分析47)

思い出すままに挙げてみたら、結局、名作といわれるものばかりですが、その中でも「脚本」に優れているものを意識しました。
5の中でも、4.5と4.9とかの差はあるけど、なかなか5をつけないような批判的な人間ではないので、いいと思ったものは素直に5でいいと思っています。
「好き」5の映画はたくさんあるので正直、紹介しきれません。
また思い出したら、第二弾記事を書こうと思います。

緋片イルカ 2022.12.25

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