ミニプロットについて(中級編13)

三幕構成 中級編(まえおき)

三幕構成の中級編と称して、より深い物語論を解説しています。

中級編の記事ではビートを含む用語の定義や、構成の基本、キャラクターに対する基本を理解していることを前提としています。しかし、応用にいたっては基本の定義とは変わることもあります。基本はあくまで「初心者が基本を掴むための説明」であって、応用では例外や、より深い概念を扱うので、初級での言葉の意味とは矛盾することもでてきます。

武道などで「守」「破」「離」という考え方があります。初心者は基本のルールを「守る」こと。基本を体得した中級者はときにルールを「破って」よい。上級者は免許皆伝してルールを「離れて」独自の流派をつくっていく。中級編は三幕構成の「破」にあたります。

以上を、ふまえた上で記事をお読み下さい。(参考記事:「三幕構成」初級・中級・上級について

超初心者の方は、初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」から、ある程度の知識がある方は三幕構成の作り方シリーズか、ログラインを考えるシリーズからお読みください。

アークプロットとは?

アークプロットというのは、初級編からずっと提示してきたふつうの三幕構成のことです。確認してみましょう。

ロバート・マッキーの『ストーリー』には、アークプロットの説明が以下にようにあります。

能動的な主人公がみずからの欲求を達成するために、おもに外的な敵対勢力と戦う。ストーリーは連続した時間に沿って、因果関係の明確な矛盾のない架空の現実のなかで展開し、絶対的で不可逆のクローズド・エンディングへと向かっていく。(p.60)

情報量が多くて一息には理解しづらいので分解してみましょう。

能動的な主人公が=主人公のセットアップです。

みずからの欲求を達成するために=wantです。

おもに外的な敵対勢力と戦う=バトルです。

ストーリーは連続した時間に沿って=「時間が遡ったりする特殊な構成はいったん別にしましょう」ということです。

因果関係の明確な矛盾のない架空の現実のなかで展開し、=これについては、後述します。

絶対的で不可逆のクローズド・エンディングへと向かっていく=ビッグバトルに勝利あるいは敗北して、ハッピーあるいはバッドエンドを迎えるということです。

これが、わからない方は、どうぞログラインを考える1「フックのある企画から」からご覧下さい。

今回はそのアークプロットに対する、ミニプロットについて考えてみます。

ミニプロットとは?

『ストーリー』にはストーリートライアングルという△の図で、プロットの種類を分類しています。「アークプロット」は上の頂点におかれています。

「アーク」には、辞書にもあるとおり、「同種のほかのものよりまさる」という意味合いがある。
 しかし、アークプロットがストーリーテリングの至高の形というわけではない。(p.61)

という前置きのあと、△の左下の頂点「ミニプロット」について触れます。古典的設定=アークプロットです。

その名のとおり、脚本家は古典的設定の各要素からはじめて、それを最小限にしていく――アークプロットならではの特徴を縮めたり押し固めたり、切りつめたり刈りこんだりする。こうしたミニマリズムのさまざまな具体例を、わたしは「ミニプロット」と呼ぶ。ミニプロットはプロットが不在ということではなく、アークプロットと同じようにストーリーが美しく語られなくてはならない。簡潔さと無駄のなさを追究しながらも、観客が満足して「なんてすばらしいストーリーだ!」と思いながら映画館を出ていけるように、古典的な部分をじゅうぶんに残している。(p.61)

△の右下の頂点「アンチプロット」、その下層に位置する「ノンプロット」については、今回の記事では省略します。

『ストーリー』にミニプロットの作品例として挙げられているものをいくつか引いておきます。本が古いので例も古いですが、

テンダー・マーシー [DVD]

サクリファイス  スペシャル・エディション (2枚組) [DVD]

パリ、テキサス(字幕版)

リバー・ランズ・スルー・イット(字幕版)

Shall we ダンス?

DVDしかないものが多いですが、他にも挙げようとしたけどDVDにすらなっていないものもありました。つまり、一般的には売れない作品が多いのです。

アークプロットとミニプロットの違い

『ストーリー』では「ストーリー・トライアングルに見られる形式の相違」という章があります(p.64)
アークプロットとミニプロットの違いを考えるとっかかりに、その章の小節を引用してみます(?はイルカが付記)

クローズド・エンディングか? オープンエンディングか?
外的葛藤か? 内的葛藤か?
単独の主人公か? 複数の主人公か?
能動的な主人公か? 受動的な主人公か?
直接的時間か? 非直線的時間か?
因果関係か? 偶然か?
一貫性のある現実か? 一貫性のない現実か?

これらの問いかけのうち、前者が「アークプロット」、後者は「ミニプロット」にあたるというのが、ロバート・マッキーの考えです。彼の考えが知りたい方は『ストーリー』をお読みください。

ロバート・マッキーに限らず、ストーリーコンサルタントなどを職業にしている人は論理的です。仕事上、クライアントや受講生を納得させなければいけないため、論理的になるのだと思います。理屈が甘いと、信用を失い兼ねません。

ロバート・マッキーに対する、僕の印象は「完全な論理」です。造詣が深く、隙のない論理ですが、その反面、いざ創作に使おうとすると、なかなか扱いづらいところがあります。

その対極にあるのはブレイク・スナイダーのセーブザキャットだと思います。

ビートシートの考え方は、実用的で、使えば「誰にでも書ける」感じがします。けれど、単純な分、問題点も多く潜んでいます。

ちなみにリンダシガーは「直感的」で他の本にないような鋭い指摘が多くあります。セーブザキャットの欠点を埋めるヒントにも有効です。

僕はビートシートから入って、不足部分を補強してきた経緯があるので、このサイトでも、そうしています(以前は翻訳本が少なかったというのもありますが)。

ロバート・マッキーの理論から入って、実用レベルまで落とし込める人もいるかもしれませんが、下手をすると「研究に陥る」危険もあると思います。

(参考:三幕構成の本を紹介(基本編)

僕自身、ときどき、お話はいただくこともあるのですが、コンサルタント本業になるつもりはなく、あくまで作品を作るための理論だと思っています。「面白い作品を作れない理論など、屁理屈に過ぎない」と自戒を込めて考えるようにしています。

その立場から、次回以降、ミニプロットとアークプロットの形式の違いについて具体的に考えていきたいと思います。

緋片イルカ 2022/02/11

次→プロットの形式①プロットの尺度(中級編14)

目次:
①プロットの尺度
②「クローズド・エンディング」と「オープン・エンディング」
③「外的葛藤」と「内的葛藤」
④主人公の数
⑤キャラクターコアとwant
⑥時間の扱い
プロットの形式⑦「因果」と「偶然」

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