映画『LAMB』(三幕構成分析#109)

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

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【ログライン】

子供を亡くしたマリアが羊から生まれたアダの母親になるが、本当の親(羊人間)が現れアダが連れ去られる。

【ビートシート】


Image1「オープニングイメージ」:「雪原を歩く何か」
雪の中で鼻息が響き、カメラを避けるように馬たちが逃げる。
動物が逃げることから、何か恐ろしいものがいるという現れ。モンスターや殺人ものに多い表現。

CC「主人公のセットアップ」:「農場で穏やかに暮らす女性」
夫と2人で羊たちの世話をしながら穏やかに暮らしている。
「ジャンルのセットアップ」
羊小屋の様子。逃げ惑う・倒れる、そしてOPイメージに続き鼻息もする。
羊農場で起こるホラー。

Catalyst「カタリスト」:「時間旅行」
理論上の時間旅行の話をする。
過去に戻れるようにもなるということかとマリアが尋ねる。
→WANTとして子供を失ったことから、子供を失う前に戻りたいという気持ちを含んでいる。
子供に対しての思いを呼び起こすことからカタリスト。

Debate「ディベート」:「出産間近の羊」
落ち着かない羊を宥める。
→日常生活だが、羊の出産が絡んでいるため=子供を彷彿させている。

Death「デス」:「羊人間が生まれる」
犬の鳴き声で母羊から子羊の頭が出ているのを発見。手伝う。
産み落とされた子羊へのショットはなく、夫婦の驚愕だけが伝わる。
マリアが子羊を毛布に包んで家に消えていく。
→子供を得て育てる。母親になれなかったマリアが死ぬ。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「家の中で世話」
自宅で世話をする。外では母羊が鳴き続ける。
→母親になろうとする。生みの親である母羊が邪魔になってくる。

Battle「バトル」:「母羊」
子供を探し回る母羊を追い払う。

MP「ミッドポイント」:「母羊を殺す」
母羊を殺すことで、母親がマリアだけになる。

Fall start「フォール」:「ペトゥール登場」
道に捨てられたペトゥールが夫婦の家に着くと、ちょうど母羊を処分するマリアが。
→他者の介入が始まる。のちに母羊の件で揺すられることにもなる

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「娘アダの墓参り」
ペトゥールもアダを受け入れ、子供のいないマリアが消える。

BBビッグバトル:「羊人間」
アダの本当の親、羊人間がイングヴァルを撃ち殺す。

image2「ファイナルイメージ」:「アダが連れ去られる」
イングヴァルが虫の息になり、アダが連れ去られる。

エピローグ:
マリアが到着。夫が死にアダもいない。絶望する。

【感想】

イルカさんのよく仰る「お客様はわりと脳内補完してくれる」が頭を過ります。
脳内補完が大前提の、余韻や考察を楽しむタイプの映画でした。
女神の継承のように観るたびに気付きがあれば更に楽しめたかもしれません。
羊の絵や犬のおもちゃ、鏡、見せるだけでなくて、いろいろと映像的に遊べたのではないでしょうか。
高原らしい表現なのかもですが、青トーンが強すぎて昼夜の感覚がつかめなかったのが、頭を混乱させます。
会話の少なさも気になるところでした。
人間が2人でいるのに無言が多い。無言のシーンに会話を入れることで、行動の疑問がかなり解消される部分もあると思います。たとえばなぜ育てようとしたのか、なぜ義兄がアダをかわいがりはじめたのか。少しでも会話で心を見せてほしかったです。
あとは羊人間が急に登場する部分についてが突拍子もなくて……気配だけで存在感出していたのにいきなり出てきたらダメな気がします。
当たり前かのように銃扱って、全裸。そしてアダを攫って行く。撃った理由もタイミングも意味不明。
もっと気配以外の存在感出したり、最後の登場させるなら無言シーンや農場シーンもう少し削ってBBの時間を増やしたほうが違和感は少ないと思いました。
羊人間出てくるまでは好きだったので残念です。

(雨森れに、2023.01.07)

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