映画『カーズ/クロスロード(カーズ3)』(三幕構成分析#125)

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【ビートシート】


(2017年)

感想・構成解説

マルチプロットはともかく、アークプロットで主人公が変わるプロットはかなり珍しい。「ビッグバトル」で主人公以外が活躍してしまうため、ブレて失敗しているという例はたくさんあるが、意図的にアクト3で世代交代をさせて、なかなかうまくいっている構成は初めて見た。スターウォーズみたいに作品ごと、シリーズを通して変えてしくパターンは多々ある。ホラーなど、プロットアーク中心で進む場合なら問題にならないケースもある(『ヴィレッジ』とか)。だが、一作品内でうまく世代交代させているのは面白い。『トイストーリー4』も失敗している。シリーズの3作目だからこそできる構成ではある。マックイーンのアークが「新旧交代への危機」なので、ラミレスに譲ることに違和感もない。シリーズ主人公であるマックイーンを葛藤させる背後で、ラストで主人公になるラミレスのアークを進行させるのは難しくない。「ビッグバトル」でラミレスが出るというときに、驚きとともに「ああ、なるほど」というターンオーバー的な効果が働いてる。ただし、新しい主人公となるラミレスが魅力的かには疑問。世代交代の意図が明確なら、登場は遅いし、wantのセットアップも早くしたくなるところだが、あくまでマックイーンのアークを崩さずに処理をしている。とはいえラミレスのwantの提示は重要なので、MP後に「フォール」を遅らせるほどの尺を使ってセットアップしている。ケンカしてすぐ仲直りするのはやや段取りくさい。もう少しスマートなやり方はあったと思う。同様に雑な点は目立つ。「メーターの言葉からスモーキーを思い付く」この展開はカーズシリーズあるあるなので、むしろメーターの役割として許容もできるが、スモーキーと出逢い、ハドソンの過去を聞くくだりなどは、かなり段取りくさい。ストーリー上、ラミレスに対するケアがあれば、世代交代のツイストがバレる可能性もあるが、心情的にはもっと入り込めたとも思う。構成上は世代交代の意図よりも、あくまで「マックイーンがレーサーから、指導者に変化するアーク」となってしまっている。この処理は上手くいっているが、ラミレスを魅力的できたら見事だった。この構成でうまく描写や処理をしていけば、カーズ4をラミレス主人公でやっていけるほどに立てられたはず(アマゾンのキャッチ画像にマックイーン中心のもの=吹替版と、ラミレス中心のもの=字幕版があるのは意味深)。描写や処理の甘さが原因。他にもストーム、スターリング、スモーキーはもっとうまくできたはず。もったいない点は目立つが、この手の構成は見たことないので参考に値する。レースシーンのスピード描写は相変わらず素晴らしい。

緋片イルカ 2023.3.3

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