映画『マイ・エレメント』(三幕構成分析#182)

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【ビートシート】

イルカの感想

「好き」4 「作品」4 「脚本」3

完全に子供向けのアニメと捉えれば作品5でもいい、ピクサー映画、大人も見れるアニメと考えると4。CGアニメというジャンルは両立は可能なので残念。CG描写は素晴らしいし、世界観、テーマなど、それなりに明確だが、キャラクターに感情移入できず、感動しない。見たことない世界を見たなという満足感はあるが、良い映画を見たという満足感がない。要因などは以下のツイストアイデアにて。

ツイストアイデア

・PP1が遅れることはピクサーあるあるで、オリジナルな世界観をセットアップするためで魅力的であれば、遅れても全く問題ないが(トイストーリーなど)、MPのステークの低さ、PP2の遅れは致命的なレベルの構成の悪さ。キャラクターの内面を大事にしているのはわかるが、アークとして描こうというより、セリフで説明することで誤魔化している。キャラクターアークを分析できる人間がピクサーにいないのか。

・母の冒頭での描写と占い師の繋がりがスムーズでない。しっかりセットアップする。

・(許容範囲ではあるが)燃える燃えないのルールがやや曖昧。インターホンは燃えるのに、ベンチに座っても燃えないの?とか。

・火と水の対立をメインとして描くのは間違いじゃないが、サブとしての木や風の使い方がお粗末。サブプロットとして機能していない。例えば、火と水だけでなく、木と風(この両者が対立関係というフリはないが)も仲良くなれるとか。

・「店を継ぎたくない」が唐突。フリを入れるか、迷いをしっかり描写するべき。

・MPにあたる目的、壁を止めるが簡単過ぎて、葛藤が弱い。ガラス化する能力はすでに見せてるので、最初から壁をガラスにしろよと思ってしまう。後で、ひび割れるタイミングもご都合展開。ウェイドが職人と喧嘩したとか街のシステムなども杜撰。CG表現だけでなく、しっかり街の設定も固めるべき。

・ラブのバディプロットとして考えても関係や、火と水が分りあうことの難しさなどが弱い。アクト2のバトルが弱いとも、MPのステークが低いとも言える。MPを修正するだけでも、かなり変わるはず。土囊で塞いだあと、デートシーンのモンタージュについて、描写自体はとても素晴らしいし、モンタージュを入れるタイミング(壁塞ぐのを達成した後)としても間違いではないのだが、全体の構成から考えたタイミングとしては早すぎる。MPではないし、ああいった火と水の差異や苦労をしっかりシーンとして描写するべき。上手くいかないフリがあって、MPの後には、うまくいっているモンタージュを入れるなら大正解。

・花を見にいくタイミングも構成的に不自然。サブストーリーとしての機能もしていない。どんな環境でも咲く花というモチーフは良いが、設定の残骸のように差し込まれているだけ。花を見る体験が、夢への気持ちとか、ウェイドとの関係を進める勇気とか、何のためのシーンなのかが考えられておらず、綺麗だから残したという印象。使うならちゃんと使う、使わないなら切るべき。

・手を合わせるタイミングも遅いし、あっさり成功すぎる。全体やテーマ次第だが、MPで手を合わせても十分。無駄に遅らせている。

・ビッグバトルが短く、しょぼい。テーマやアークを掘らず、鉄砲水のCGとウェイドが死ぬということしか考えていない表面的なビッグバトルになっている。MP、PP2がしっかりすれば、アクト3も変わってくる。

・あ、音楽はよかった。

イルカ 2024.2.7

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