ドラマ『ブラック・ミラー』シーズン7「ベット・ノワール」(三幕構成分析#276)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

チョコレート会社の研究開発部で成功していたマリアは、高校時代にいじめていたヴェリティが部下になったことをきっかけに、現実が少しずつ狂い始める。同級生ナタリーの不審死から、ヴェリティの復讐だと確信したマリアは、ネックレスが現実を操作する装置だと突き止める。そして、自分の地位と命を守るため彼女を射殺し、その力を奪い、宇宙を支配する女帝となる。

【フック/テーマ】ガスライティング・現実を書き換える力/記憶の重さの違い・力は人間を変えるか、それとも本質を暴くだけか

【ビートシート】

want「主人公のセットアップ」:「研究開発部で地位を得ている」チョコレート会社の商品開発部で働くマリアは、革新的な商品を生み出すエースとして周囲の信頼と地位を手にしている。

Catalyst「カタリスト」:「ヴェリティが試食会に参加」ある日、新商品の試食会に、モニターとして高校時代いじめられていたヴェリティが参加する。

Debate「ディベート」:「ヴェリティがアシスタントに応募」トイレで再会した二人。ヴェリティは研究開発部のアシスタントに応募するつもりだと告げる。マリアは最近ルイーザを採用したばかりで募集はしていないと答えるが、後で確認すると、なぜかアシスタントの求人が出されていた。

Death「デス」:「ヴェリティの入社」ヴェリティの採用が決まる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ヴェリティが部下になる」ヴェリティの採用に不安を覚えたマリアは、上司に彼女の身辺を調べてから判断するよう訴える。しかし調査の結果、特に問題は見つからなかったと告げられる。ヴェリティがマリアの下で連絡係として働くことになり、マリアは過去にいじめていた相手と日常的に顔を合わせる状況になる。

MP「ミッドポイント」:「高校時代の同級生ナタリーの死」マリアは、高校時代の同級生ナタリーが自殺したことを知る。ナタリーはかつて、ヴェリティに関する噂を一緒に広めていた人物だった。彼女の死をきっかけに、これまでの不可解な出来事は偶然ではなく、ヴェリティによる復讐なのではないかという疑念が、マリアの中で確信へと変わる。

Reward「リワード」:「ヴェリティが原因だと確信する」

Fall start「フォール」:「ヴェリティと対峙」現実の書き換えによりチーム会議を締め出されたマリアは、ヴェリティと二人きりで向き合う。高校時代の噂について「子どもは残酷だから」と過去を免責しながらも、当時のヴェリティへの同情を口にする。しかしヴェリティはその言葉を受け流し、アーモンドミルクを目の前で飲み干す。そして、その状況をマリアのせいにし、更に彼女を追い詰める。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「ネックレスが原因だと気付く」監視カメラの映像を確認したマリアは、アーモンドミルクを飲んだのが自分に書き換えられ、ナッツアレルギーの存在も消されたことに気付く。そしてヴェリティが繰り返しネックレスを触る仕草を結びつけ、ネックレスこそが現実を書き換える装置だと確信する。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「ヴェリティの家へ侵入する」ネックレスの力を確信したマリアは、ヴェリティを待ち伏せして尾行し、彼女の家へ侵入する。室内にはネックレスの力で書き換え、宇宙飛行士や女帝となったヴェリティの姿を記録した絵や写真が並んでいた。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「ヴェリティを射殺し、ネックレスを奪う」マリアは警官の銃を奪い、ヴェリティを射殺する。そして、ネックレスを奪い、現実を変える。

【作品コンセプトや魅力】

いじめという極めて人間的な問題に、現実を書き換えるテクノロジーを掛け合わせた作品。復讐の途中でヴェリティは死に、過去と向き合いきれないままのマリアがその力を手に入れる。
この作品の恐怖は、現実が少しずつ書き換えられていく過程にある。店の名前やメールの内容といった些細な違和感から始まり、やがて周囲の記憶や記録までもが変化していく。主人公だけが、本当の世界を覚えている状況は、観客に強烈な不安を与えると同時に、現実とは何によって支えられているのかという問いを突きつけている。「現実が狂っていくサスペンス」と「力を奪う結末」は、記憶の重さの違いというシンプルな事実によって対比されており、加害者は忘れ、被害者は忘れられない。その構図は、どれほど強大な力を得ても覆らない。人間の不変性という側面が際立っている。
また、私は確認できていないが、この作品には視聴者を巻き込む仕掛けがあるらしい。Netflixがランダムに2バージョンを配信していて、店名がBARNIESからBERNIESに変わるバージョンと、その逆のバージョンが存在するという。誰かと話して初めて気づく仕掛けで、視聴者自身もガスライティングされる構造になっている。現実を疑わせるという体験を、画面の外まで持ち出してくる、ブラックミラーらしい意地悪で面白い仕掛けだと思った。

【感想】

「好き」4「作品」5「脚本」5
見終わった後、「子どもは残酷だから、考えずに行動する」と「記憶は消えない」というセリフが印象深かった。どちらの感覚も理解できてしまうという恐怖があったからだと思う。加害者にも被害者にもなり得る。その両方の感覚が自分の中にあると気づかされる居心地の悪さだった。現実を書き換える最強の力を手に入れても、傷を負わせた事実と傷を負った痛みだけは、心の最深部でアナログなまま残り続けるというのが深く刺さった。また、最後まで謝罪のなかったマリアが、力を手にした先でどうなるのか、見終わった後もしばらく考えてしまった。一方で、宇宙の女帝という結末のスケールが急すぎて、それまでのリアリティとのギャップでコメディのように感じられる部分もあった。

(米俵、2026.03.16)

『ブラック・ミラー』全作品採点

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