映画館にて上映中の作品ですが、分析の都合上、ストーリーの核心について触れている箇所がございます。ご了承の上、お読み下さい。
公式サイト
https://ikiru-living-movie.jp/
一個人の感想
「好き」3 「作品」4 「脚本」4
黒澤の原作は昔に一度見ただけで、あまり覚えていないので朧気な印象との比較。古くさい演出は原作への敬意ともとれるが脚本のテンポの悪さとかみ合っていて違和感はない。音楽もいい。編集は一部で違和感があるも、個性的なショットなど好感が持てて作品全体としては良い。ただし原作もこんなかんじの怠いテンポだった気がするが、2023年のリメイク作品として踏襲するべきではなかったと思う。視点の取り方などブレたり、感情的なアークを途切れさせてしまっているのは構成としては失敗している。だが、カズオ・イシグロらしい価値観（紳士とか）、シーン単位では魅力もあり、脚本トータルとしては4をつけられる。ビル・ナイは良い演技をしているが、演技力を出し切るようなショットが足りないのがもったいない。カラスさんが「判断」と「叙述」と言っていたが（それについてはカラスさんが記事を書いてくれることを期待する）、映画は「叙述」によって映像で見せる方が効果的な場合が多い。本作ではカズオ・イシグロの「判断」が入りがちで説教くさい映画になっているのがもったいない。良くも悪くも小説的。要である公園のロケーションが悪いのがもったいない。本作と直接の関係はないが、予告編でほとんど興味をもてない邦画の予告編などを見させられているうちに、周りに降り回らされずに、自分の見たい作品、書きたい作品に向き合うべきだと感じたりしたのは、本作のメッセージに繋がるものがあったのを覚え書きとして残しておく。
イルカ 2023.03.31