ざっくり読書6①『スキーマ療法入門』伊藤絵美(生得的気質について)

スキーマ療法について詳しく知りたいと思いつつも提唱者のジェフリー・E.ヤングの『スキーマ療法―パーソナリティの問題に対する統合的認知行動療法アプローチ』から入るのはハードルが高すぎるので、入門のついたこの本を読んでみました。著者の伊藤絵美さんはヤングの書籍の翻訳者でもあり、もちろんご自身がセラピストでもあります。入門書の内容に相応しく非常にわかりやすい言葉で書かれていました。

まとめておきたい箇所がいくつもあったので、何回かにわけて引用していきます。そもそもスキーマそのものついては「なんぞや?」という方はこちらの記事をご覧ください。

ヤングは生得的気質と幼少期の苦痛な経験が相互作用することによって、早期不適応的スキーマが形成されると述べている。早期不適応的スキーマに限らず多くのスキーマは、生得的気質とその人が生きていく中で経験したこととが相互作用する中で形成されるであろう。
ヤング自身は生得的気質に関する明確なエビデンスは現時点では「ない」としつつも、さまざまな研究を総合して、生得的な感情的気質の暫定的なリストを以下のように挙げている。

不安定な(labile) ←→ 安定した(nonreactive)
不機嫌な(dysthymic) ←→ 上機嫌な(optimistic)
不安な(anxious) ←→ 穏やかな(calm)
没入した(obsessive) ←→ 注意散漫な(distractible)
受動的な(passive) ←→ 攻撃的な(aggressive)
短気な(irritable) ←→ 朗らかな(cheerful)
内気な(shy) ←→ 社交的な(sociable)

また、注には著者の私見としてクロニンジャーのパーソナリティー理論についても提案されています。

クロニンジャーの提唱
4つの気質(temperament)
・新奇性探求
・損害回避
・報酬依存
・固執

3つの性格(character)
・自己志向性
・協調性
・自己超越性
特に前者の気質は生得的であるとされている。

キャラクター概論では、登場人物の言動を決定する要素の一つとして「気質」をあげました(キャラクター概論4「キャラクターの言動決定要素」)が、その参考にヤングのリストは使えると思います。

緋片イルカ 2019/08/19

全6回に渡ってスキーマ療法の理論部分を引用してまとめていきます。

ざっくり読書6①『スキーマ療法入門』伊藤絵美(生得的気質について)

ざっくり読書6②『スキーマ療法入門』伊藤絵美(中核的感情欲求と5つのスキーマ領域について)

ざっくり読書6③『スキーマ療法入門』伊藤絵美(18の早期不適応的スキーマ)

ざっくり読書6④『スキーマ療法入門』伊藤絵美(スキーマの作用「持続」と「修復」)

ざっくり読書6⑤『スキーマ療法入門』伊藤絵美(コーピングスタイルとコーピング反応)

ざっくり読書6⑥『スキーマ療法入門』伊藤絵美(スキーマモード)

●書籍紹介
スキーマ療法入門 理論と事例で学ぶスキーマ療法の基礎と応用
伊藤絵美が書き下ろす渾身の入門書。本書を通して、伊藤絵美と共に学び、実践する仲間になる。スキーマ療法とは,米国の臨床心理学者ジェフリー・ヤングが提唱した認知行動療法(CBT)の発展型である。認知の中でもより深いレベルにあるスキーマ(認知構造)に焦点を当て,CBTを中心に力動的アプローチほか非常に統合的な心理療法を組み合わせてスキーマ療法を成した。本書は入門テキストと事例集の二部構成となっており、特に日本でスキーマ療法を習得し,治療や援助に使いたいという方に向けて書かれた待望の書である。(Amazon商品紹介より)

専門書ですがスキーマ療法の提唱者ヤング自身の本はこちらです。
スキーマ療法―パーソナリティの問題に対する統合的認知行動療法アプローチ
スキーマは,その人の認知や長年培われてきた対処行動などを方向づける意識的・無意識的な「核」であり,〈中核信念〉とも訳される。本書は,幼少期に形成されたネガティブなスキーマに焦点を当て,その成長が健康的ではなかった境界性パーソナリティ障害や自己愛性パーソナリティ障害をはじめとするパーソナリティの問題をケアしていくスキーマ療法の全貌を述べたものである。
人には5つのスキーマ領域からなる18のスキーマがあるとされ,それぞれに際立ったコーピングやモードがあり,幼少期から周囲の環境に応じてパーソナリティを形づくる。こうして固まったパーソナリティの問題は,認知行動療法だけでなく,多くの心理療法や薬物療法でさえ,万全なケアができるとは言いがたい状況にある。スキーマ療法は,こうしたニードから生まれた統合的な認知行動療法アプローチであり,体験療法やエンプティ・チェアなどのゲシュタルト療法,精神力動的な方法といったさまざまな心理療法を加え,基礎的な心理学の知見をも加味して生まれてきたものである。
本書は,リネハンの弁証法的行動療法とともに,パーソナリティ障害をはじめとする人格の問題にアプローチする最良の方法の一つであり,理論的な入口の広さから多くの心理臨床家,精神科医,心理学者などに読んでもらいたい1冊である。(Amazon商品紹介より)

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