高橋先生のリストにつづいて、斎藤美奈子さんのリストの紹介です。
※説明文はすべてAmazonの商品紹介より。画像はAmazonnへジャンプします。
斎藤美奈子が選んだ「平成を考えるための10冊」
松浦理英子『親指Pの修業時代』1993(+『犬身』2007)
どこにでもいる無邪気で平凡な女子大生、一実。自殺した親友の四十九日の翌日、眠りから目覚めると、彼女の右足の親指はペニスになっていた。突然現れた親指Pに困惑し、揺れ動く人々。そして無垢だった一実にも徐々に変化が訪れ―。驚くべき奇想とユーモラスな語り口で大ベストセラーとなったあの衝撃の作品が、待望の新装版に。
笙野頼子『タイムスリップ・コンビナート』1994(+『なにもしてない』1991)
海芝浦に向かう「私」を待ち受けるのは浦島太郎、レプリカント、マグロの目玉…。たどり着いた先はオキナワか?時間と空間はとめどなく歪み崩れていく。言葉が言葉を生み、現実と妄想が交錯する。哄笑とイメージの氾濫の中に、現代の、そして「私」の実相が浮び上がる。話題騒然の第111回芥川賞受賞作の他、二篇を収録。
桐野夏生『OUT』1997
深夜の弁当工場で働く主婦たちは、それぞれの胸の内に得体の知れない不安と失望を抱えていた。「こんな暮らしから脱け出したい」そう心中で叫ぶ彼女たちの生活を外へと導いたのは、思いもよらぬ事件だった。なぜ彼女たちは、パート仲間が殺した夫の死体をバラバラにして捨てたのか?犯罪小説の到達点。’98年日本推理作家協会賞受賞。
矢作俊彦『あ・じゃ・ぱん!』1997(+『ららら科學の子』2003)
昭和天皇崩御の式典が行われている京都の街中で、偶然、テレビカメラに映し出された一人の伝説の老人。「この男からインタヴューを取ってもらいたい」と上司から指示された人物は、新潟の山奥で四十年もゲリラ活動を展開してきた独立農民党党首・田中角栄その人だった。しかし、私の眼は、老人の側に寄り添う美しい女にくぎ付けになっていた。その女こそ…。来日したCNN特派記者が体験する壮烈奇怪な「昭和」の残照。
高見広春『バトル・ロワイアル』1999
西暦一九九七年、東洋の全体主義国家、大東亜共和国。城岩中学三年B組の七原秋也ら四十二人は、修学旅行バスごと無人の島へと拉致され、政府主催の殺人実験を強制される。生還できるのはたった一人。そのためにはただクラスメイト全員を殺害するのみ―。現代日本を震撼させたジェットコースターデスゲーム・ノヴェル、ついに文庫化。
三崎亜記『となり町戦争』2005
ある日、突然にとなり町との戦争がはじまった。だが、銃声も聞こえず、目に見える流血もなく、人々は平穏な日常を送っていた。それでも、町の広報紙に発表される戦死者数は静かに増え続ける。そんな戦争に現実感を抱けずにいた「僕」に、町役場から一通の任命書が届いた…。見えない戦争を描き、第17回小説すばる新人賞を受賞した傑作。文庫版だけの特別書き下ろしサイドストーリーを収録。
古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』2005
キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、“戦争の世紀=20世紀”を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテインメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新に収録。
津村記久子『ポトスライムの舟』2009
29歳、工場勤務のナガセは、食い扶持のために、「時間を金で売る」虚しさをやり過ごす日々。ある日、自分の年収と世界一周旅行の費用が同じ一六三万円で、一年分の勤務時間を「世界一周という行為にも換金できる」と気付くが――。ユーモラスで抑制された文章が胸に迫り、働くことを肯定したくなる芥川賞受賞作。
松田青子『スタッキング可能』2013
5階A田、6階B野、4階C川、7階D山、10階E木…似ているけれどどこか違う人々が各フロアで働いているオフィスビル―女とは、男とは、会社とは、家族とは…同調圧力に溢れる社会で、それぞれの『武器』を手に不条理と戦う『わたしたち』を描いた、著者初の小説集。文庫本書き下ろし短篇「タッパー」を収録。第4回Twitter文学賞(国内部門)第1位。キノベス!2014第3位。
木村友祐『イサの氾濫』2016
40代になりいよいよ東京での生活に行き詰まりを感じていた将司は、近ごろ頻繁に夢に出てくるようになった叔父の勇雄(イサ)について調べるため、地元八戸にむかった。どこにも居場所のなかった「荒くれ者」イサの孤独と悔しさに自身を重ね、さらに震災後の東北の悔しさをも身に乗り移らせた彼は、ついにイサとなって怒りを爆発させるのだった。──上々颱風の人気ヴォーカリスト、白崎映美を震撼させ、新たなバンド「東北6県ろ~るショー!!」をつくるきっかけとなった幻の作品、待望の書籍化!
*おまけ
奥泉光『バナールな現象』1994、『雪の階』2018
白岩玄『野ブタ。をプロデュース』2004
橋本治『巡礼』2009
※ちなみに斎藤美奈子さんには『日本の同時代小説』や『文章読本さん江』などの文学史や文芸批評の書籍があります。
緋片イルカ 2019/11/16
構成について初心者の方はこちら→初心者向けQ&A①「そもそも三幕構成って何?」
三幕構成の書籍についてはこちら→三幕構成の本を紹介(基本編)
三幕構成のビート分析実例はこちら→がっつり分析シリーズ
文章表現についてはこちら→文章添削1「短文化」
文学(テーマ)についてはこちら→文学を考える1【文学とエンタメの違い】
キャラクター論についてはこちら→キャラクター概論1「キャラクターの構成要素」
「書く気がおきない時の対処法」などの掲示板もありますので、あなたのご意見なども聞かせてください。