「ライターズルーム」における提出脚本のためのヒントです。
061「大きな決断」
主人公が何かを決断するシーンを描いてください。
ビートでいえば「デス」や「ビッグバトル」開始の局面で、主人公は決断をします(下降のアークであれば「フォール」で決断して上昇に転じるパターンもあります)。
何かを決断するとき、作者自身の決断する気持ちや、決断をした過去を思い出してください。
決断という言葉は「断つことを決める」と書きますが、断つとは何かを捨てる決心でもあります。新しい自分になるためには、古い自分を捨てる必要があります。
テーマとして「大きな」決断としましたが、客観的な事実として大きな決断である必要がありません。例えば、大統領が決定を下すような(もちろん描けるならそういう作品でも構いません)。
大統領であろうが、小市民であろうが、主観的に決断する心は同じです。
他人から見てどんなに小さな決断にみえても構いません、主人公にとっての「大きな決断」を描き、観客にも「大きな決断」と見えるように描くことが大切です。
ヒントはその前の「ディベート」のシーンにあります。
分析を積みあげてきている作者なら、その意味がわかるはずです。
062「登頂」
登頂は山の頂上に登ることです。これは「ミッドポイント」の喩えです。
何かの大会やコンクールで勝利したり優勝したり評価されたり。
人間関係を軸としたドラマでは、関係性が最高潮に達したシーン。
「これ以上の上はない」という頂上感をしっかり出してください。
それを演出するには、どういう場所で、どういう状況が相応しいのかを考えてみてください。
「ミッドポイント」としての演出ができているなら、文字通り「山の頂上に到達したシーン」を描いても構いません。
063「どん底」
これはもう一つの「ミッドポイント」です。
「登頂」は上昇のアークでの「ミッドポイント」ですが、「どん底」は下降のアークでの「ミッドポイント」です。
前回の「登頂」同様に「これ以下はない」、落ちるところまで落ちたかんじを、しっかり演出してください。
ただし、1つだけ条件を足します。「主人公が死ぬ展開はなし」とします。
主人公を死なせることは創作上は簡単で、安易です。
人間には「死にたいほど苦しいこと」や、ときには「死ぬより苦しいこと」があります。
それでも、生き続ける主人公はどんなでしょうか?
落ちるところまで落ちた人間はどうなるでしょうか?
そんな主人公をきちんと描ければ、必ず魅力的になります。
ここでも、「大きな決断」同様、観客がしっかりと「主人公のどん底の気持ち」に共感できるように描くことです。
観客が冷めた感情で見ていると、苦しんでいる主人公を「ウザい」と感じたり「勝手に死ねば」と思いかねません。観客は物語の人物には極めて冷酷です。
064「夢オチ」
いわゆる「どんでん返し」。
「実は、すべて〇〇でした」というちゃぶ台返し。
その最たるものが「夢オチ」ですが、「妄想オチ」とか、SF的な「脳が見せてる世界オチ」など、オチ自体は安易なもので構いません。
こういうものは、作者は一度は書きたくなるもので、意外性として面白さは担保できるものの、プロの世界では甚だしいクリシェです。
10分脚本はしょせん練習ですので、一度書いてみるというのは悪い経験ではないと思います。
書いてみて満足する部分と、自分で思っているより観客の反応は良くないことを経験するのもよいでしょう。
もし、最高に面白いアイデアが思い付けば、それだけで大ヒット作品につながるかもしれません。
どうすれば「どんでん返し」を面白くできるかと向き合ってみてください。
イルカ 2024.4.10
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※書き方のルールなどについては「脚本作法」の記事も参照してください。