映画『ミッドサマー』(三幕構成分析#211)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

※この分析は「ライターズルーム」メンバーによるものです。

【ログライン】

家族を失いパニック障害になった女子大生ダニーは、傷心を癒すため恋人たちと訪れたスウェーデン奥地の因習村で夏至祭の恐ろしい儀式に巻き込まれるも、村人たちから認められて新しい家族に迎え入れられる。

【フック/テーマ】因習村の恐怖、共同体との関わり方、精神疾患を理解されない孤独感、男女の別れ

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「ダニーの電話」『妹から不気味なメールが来た』と、不安そうに両親に電話するダニー。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「不穏な空気間」序盤から不穏な雰囲気が続いており、サスペンス及びホラーに属することが示唆される。(ダニーの家族の死体の描写や、彼らの死を嘆いてパニックになるダニーなど)

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「クリスチャンとの関係を続けるか?」

want「主人公のセットアップ」:「パニック障害」心理学専攻の女子大生ダニーは、妹が両親と無理心中してしまったことによりパニック障害を患っている。その恋人であるクリスチャンはダニーを煩わしく思っているが、優柔不断な性格故別れを切り出せないでいる。

Catalyst「カタリスト」:「スウェーデン行き」 クリスチャンが友人であるスウェーデンからの留学生ペレの誘いで、彼の故郷スウェーデン奥地のホルガ村に行く予定だと知る。

Debate「ディベート」:「痴話喧嘩」ダニーは、クリスチャンが自分に内緒で旅行に行こうとしていたことに怒る。痴話喧嘩の結果、ダニーもなし崩し的に同行することになる。他のメンバーには、田舎の風習を研究しているジョシュに、女とドラックにしか興味のないマークがいる。

Death「デス」:「ヘルシングランド到着」一行はホルガ村からは少し離れたヘルシングランドの草原に到着。そこでホルガ村の村人や、別の旅行者たちと出会い、ドラックをやったりして過ごす。また、白夜のために夜でも明るいという状況に、彼女らは戸惑うことになる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ホルガ村到着」ホルガ村に到着すると、ダニーたちは村人たちから歓迎される。皆白い装束を着ていてカルトのような異様さがあったが、共同体全体が家族と認識し合っているその様子を見て、ダニーは魅せられたように笑っている。やがて号令がかかり、90年に一度のホルガ村夏至祭開始の儀式が行われた。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」/Battle「バトル」:「クリスチャンとの関係」ペレが誕生日プレゼントに絵をくれたのに対しクリスチャンは 誕生日そのものを忘れてしまっていたり、村を出ていくのを引き止められた際にペレから『クリスチャンに守られていると感じるか?』と問われたり、作中でダニーは何度もクリスチャンとの関係性について悩まされることになる。

MP「ミッドポイント」:「老夫婦の飛び降り」翌日の朝食会にて、いかにも『本日の主役』とでもいった様子で一組の老夫婦が現れ、食事の後に奇妙な歌を歌う。そして座っている椅子ごと崖の上に連れていかれ、奇妙な儀式を行った後、二人とも飛び降りたのだった。村人曰く、。『彼らは生命のサイクルを終えたので、新しく生まれる命のために自ら死んだ』のだと。
ここに来て、大祝祭がただの祭などではなく、人死にが出るような残虐な儀式を孕むことが明らかになった。ダニーは完全に参ってしまっている。しかし一方でクリスチャンはどこか興奮した様子だった。

Reward「リワード」:「村の異常性」 村の祝祭の異常性が発覚する。

Fall start「フォール」:「トラブル多発」 飛び降り儀式の後、トラブルが連発することになる。クリスチャンとジョシュは、後出しでクリスチャンが『ホルガ村の儀式を論文のテーマにする』と言い出したことで揉めることになり、村の神聖な木に立ちションしてしまったマークは村人たちに酷く怒られ、さらに村を出ようとした別の旅行者たちは行き違いになってしまったという。しかし、そんな状況にもクリスチャンはあまり頓着せず、焦ったようにレポートの取材をしている。ダニーにもよそよそしい。一方で、村の女の子たちはダニーを優しく受け入れ、しばしば共同作業を行っていた。その夜、とうとう事件は起きた。知的欲求に負けたジョシュが撮影の禁止された『ルビ・ラダー』をカメラに収めてしまい、村人に殴り倒されたのだ。そしてその男はマークの顔の皮膚を被っていた。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「メイクイーンに」翌日、ダンス大会にて、幻覚剤のようなものを飲まされたダニーは、村の女の子たちとダンスを楽しみながら、気付いたら優勝していた。ここで『村の客人としてもてなされていた』アクト2が終わり、彼女はメイクイーンに選ばれる。

DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「祝福」花で着飾られ、村人たちから祝福を受けるダニー。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「村を周遊」馬車に乗せられ、村を周遊させられるダニー。

Twist「ツイスト」:「性儀式」周遊の途中、物音に招き寄せられたダニーは、建物の中で、性儀式に参加させられているクリスチャンを見てしまう。恋人の裏切りにパニックになるダニー。また、彼女の悲しみに共鳴したようにむせび泣きながら、村の女の子たちはダニーを慰める。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「生贄の選択」捕らえられたクリスチャンか、抽選に当たった村人か、最後の生贄をメイクイーンであるダニーが選ばなければならないという。裏切られた憎しみもあってか、生贄にはクリスチャンが選ばれた。彼は熊の皮を被せられ、神殿の中で焼かれてしまう。

Image2「ファイナルイメージ」:「ダニーの笑顔」焼ける神殿を前に慟哭する村人たち。ダニーは泣き顔から徐々に笑顔になる。

【作品コンセプトや魅力】

激しくリアルなスプラッタ描写。基本的に明るい場面で恐ろしい出来事が起こるという特異な演出。

【感想】

「好き」5「作品」4「脚本」3
明るい場所で恐ろしいことが起きるというミスマッチな演出が不気味さを引き立たせている点、ジャンルがホラーでありながらメインのストーリーラインに男女の別れといった人間的なものを取り入れている点に、新鮮さや魅力を感じた。また、スプラッタ描写も非常に気合が入っていて見応えがあった。半面、中盤以降の展開は少しありきたりに感じてしまったのが残念だった。

(脚本太郎、2024年12月1日)
2024.12.13アップ
2024.12.17ビートシートの誤字脱字修正

イルカの補足は
映画『ミッドサマー』(ショット5)

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