映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(三幕構成分析#232)

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※あらすじはリンク先でご覧下さい。

※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。

【ログライン】

アスペルガー症候群の特徴がみられるオスカーは、9.11で亡くなった父親のクローゼットで鍵を見つけ、どこのものか知るためにブラック氏を見つけようと調査探索をし、鍵と父親は無関係だったと知りショックを受けるが、探してきたことに意味があるのだと気づく。

【フック/テーマ】
調査探索、生きづらさを抱える人々、9.11/失ったものと向き合う

【ビートシート】

Image1「オープニングイメージ」:「落下する男」
9.11でビルから落下した人間を彷彿させる画。男は父親であり、セットアップの要素になっている。

GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「遺体のない葬式」
9.11で行方不明のまま、遺体のない葬式をする。オスカーは父親の死を納得できていない。

Premise/CQ「プレミス」/「セントラル・クエスチョン」:「鍵はどこのもので、何を意味するのか」
父親が自分に何か遺してくれているのではないかと期待し、どこの鍵なのかを探る。

want「主人公のセットアップ」:「アスペルガー症候群の疑い」
知識量は多いが、こだわりが強い。敏感な部分があり、パニックを起こす。
父親はオスカーの長所を活かしつつ成長を促せるように調査探索ゲームを行っていた。

Catalyst「カタリスト」:「鍵をみつける」
1年経ち、父親のクローゼットに入ることができたオスカーは棚上の花瓶を落とす。中から鍵が見つかる。だんだん遠くに感じるようになっていた父親が近くに思えた事件。

Debate「ディベート」:「祖母に尋ねる」
鍵がどこのものか尋ねるが、知らないと言われる。ヒントがない、迷いの時。
カタリストから2分程度で終わる上に、映像としては「間借り人」の存在を見せたい部分なのでほとんど機能していない。あえてとるならといった感じ。

Death「デス」:「ブラックという人物」
鍵屋に持っていくも、どこのものかは不明のまま。しかし、鍵の入っていた紙に「ブラック」と名前が書かれていると指摘される。「ブラック」という人物が手掛かりだとわかる。

PP1「プロットポイント1(PP1)」:「ブラック氏を探しに」
鍵穴と鍵の意味を知っているかもしれないブラック氏を探す旅に出る。
自分に何か遺してくれたのではないかという期待がある。

F&G「ファン&ゲーム」:「ブラック氏に会う」
472人いるブラック氏に会っていく。多種多様な人々との出会い、関り。

Battle「バトル」:「鍵穴を探す日々」
訪れた先々で様々な人と出会うが、鍵穴は見つからない。
心が不安定になり、母親とも喧嘩する。

Pinch1/Sub1「ピンチ1」:「留守電を隠す」
父親への負い目を隠す。

MP「ミッドポイント」:「苦しみを吐露する」
調査探索を家族にさえ秘密にしていたが、間借り人に話す。父親以外で、初めて考えを人に共有する。
「パパが遺したものがわかれば生きていけるのに」

Fall start「フォール」:「間借り人と一緒に探す」
間借り人が一緒に探してくれることに。
間借り人のフォローで電車やバスを使えるようになる。

Pinch2/Sub2「ピンチ2」:「留守電を聞かせようとする」
母親にも聞かせていない留守電を聞かせようとする。

PP2(AisL)「プロットポイント2」:「鍵のことを知るブラック氏」
鍵の本当の持ち主であるブラック氏と会う。旅の終わり。

BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「旅の意味」
鍵と父親が無関係と知り、旅の意味について考え始める。

Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「得たものがある」
調査探索により、母親の愛や多種多様な人々の存在を知り、苦手なものにも挑戦できたことに気づく。
旅をすることに意味があると理解し、出会った人々に感謝の手紙を送る。

Epilog「エピローグ」:「祖父の帰宅」
オスカーの手紙により、祖父が祖母宅に帰ってくる。家族の未来が垣間見える。

Image2「ファイナルイメージ」:「ブランコを漕ぐオスカー」
苦手だったブランコを漕ぐ。鍵の旅を経て、晴れ晴れとした笑顔。父親のいない世界でも生きていく。

【作品コンセプトや魅力】

9.11事件、トラウマ、アスペルガー症候群、子供の人探し、生きづらさを抱える人々、乗り越える力、家族愛、トム・ハンクス、サンドラ・ブロック、スティーブン・ダルドリー監督、エリック・ロス脚本

【感想】

「好き」4「作品」4「脚本」4
アスペルガー症候群についてかなり深く描写していると感じました。
それも「アスペルガー症候群の人はこうだから」と単純に区別することなく、人間として、葛藤や苦しみ、そして子供らしい幼さも感じられました。
しかし、ストーリーとしては魅力的な人物が出てきただけで終わっている印象です。ブラック氏らは仕方ないとしても、祖父母や母親についてもう少し情報があればもっと心が動かされたのかもしれません。

(雨森れに、2025/7/18)

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