※あらすじはリンク先でご覧下さい。
※分析の都合上、結末までの内容を含みますのでご注意ください。
【ログライン】
カラダ探しに巻き込まれた明日香たち高校生6人は、その日を繰り返す中で友情や絆を育んでいく。やがて全員が命を賭して最後の身体を探し切り、カラダ探しのことを忘れた状態で翌日を迎える。
【フック/テーマ】
カラダ探し/友情や愛情
【ビートシート】
Image1「オープニングイメージ」:「屋敷で少女が殺される」
GenreSet「ジャンルのセットアップ」:「カラダ探しについての説明」
どこかの国でカラダ探しを経験した人の経験談やカラダ探しについての説明がなされる。それにより、ホラー作品であることが示される。
want「主人公のセットアップ」:「孤独を抱える明日香」
独りぼっちで登校する明日香。周囲から、「ぼっち」「みんなから無視されてる」などと陰口を叩かれている。
Catalyst「カタリスト」:「少女の登場」
どこからともなく明日香の前に現れた少女が、「私の身体を探して」といい、姿を消す。
Debate「ディベート」:「謎のアカウントから“赤い人”に関するメッセージが送られる」
明日香のスマホに得体の知れないアカウントからメッセージが届く。困惑した明日香はそのままベッドに籠り、眠りにつく。
Death「デス」:「明日香を守って、高広が死ぬ」
明日香が密かに想いを寄せる高広が赤い人に殺される。
PP1「プロットポイント1(PP1)」:「最初の死を経験する」
何もできないまま、明日香は赤い人に殺される。
F&G「ファン&ゲーム」:「カラダ探しに関する説明」
明日香たちがカラダ探しについて翔太から聞かされる。身体を見つけるまで明日が来ないことを知る。
Battle「バトル」:「腕、発見」、「カラダ探しに関連する事件の発覚」、「作戦を駆使し、次々に身体を見つける」
明日香たちは協力して身体を探していく。幾度となく赤い人に殺されながらも、その過程で友情を育んでいく。
Pinch1/Sub1「ピンチ1」/「サブ1」:「野良猫を救う」/「明日香たち女子3人のパフェタイム」
MP「ミッドポイント」:「残すは頭だけとなる」
篤史の活躍により、左足を棺に納める。あと頭を見つければカラダ探しは終わる。
Fall start「フォール」:「少女が殺された屋敷に赴く」
明日香たちは閉ざされた部屋でエミリー人形を発見。しかし、気づいたときにはエミリー人形が忽然と消えた。
Pinch2/Sub2「ピンチ2」/「サブ2」:「野良猫の死」/「明日香たちは海で騒ぐ」
PP2(AisL)「プロットポイント2」:「明日香は高広とキスをする」
カラダ探しが終われば記憶が消えると不安になる中、「必ず見つける」と高広は近い、明日香にキスをする。
DN「ダーク・ナイト・オブ・ザ・ソウル」:「頭部は巨大化した赤い人中にある」
頭部の在りか悟った明日香たちは、最後の戦いに向け、準備する。
BB(TP2)「ビッグバトル(スタート)」:「赤い人との闘い」
篤史、翔太、留美子の命を犠牲にして、最後の身体=頭部を手に入れる。
Twist「ツイスト」:「倒したはずの赤い人が復活」
高広は力尽きて死ぬ。大切な人たちを殺された怒りを糧に、明日香は赤い人を倒す。
Big Finish「ビッグフィニッシュ」:「カラダ探し終了」
明日香は頭を棺に納め、力尽きる。身体はすべて揃い、カラダ探しは終了する。
Epilog「エピローグ」:「高広が明日香を見つける」
日常に戻った明日香たち。カラダ探しの記憶はないが、明日香たちは文化祭の実行委員に選ばれる。礼拝堂に向かう途中、明日香が落としたピンを拾った高広は記憶を取り戻す。
Image2「ファイナルイメージ」:「新聞記事が書き変わり、明日香が死者となる」
井戸の奥底に眠っている新聞記事、「屋敷で少女惨殺」から「遊園地で少女惨殺」に変わる。そして被害者の名前が「森崎明日香となる」。
【作品コンセプトや魅力】
ホラーというジャンルに青春要素を全面に押し出して掛け合わせたところが最大の魅力。さらにJホラー特有のしめっぽさ(呪いを解くために神社や人里離れた禁忌の場所を訪れるのが多くの作品にみられる)がないのも他作品と一線を画している。赤い人と実際に闘うあたり、海外の作品を踏襲しているように感じられ、それが日本人にとって慣れないもの=新鮮に映ると考えられるだろう。
【問題点と改善案】(ツイストアイデア)
ただ、青春とホラーを同時に成り立たせるために、どっちつかずになっている感は否めない。いくらその日を繰り返すとはいえ、死を前にしてパフェや海など、そこまで楽しめるのかといった疑問符を抱き、没入感を削いでしまっている。
ホラー×青春をおしたかったと推察されるため、現実問題難しいだろうが、ホラー要素を押し出す形を取ってもよかったのではないかと感じた。
またテーマとして、孤独を抱える明日香たち高校生がカラダ探しを通して、友情を育むということが挙げられるが、明日香たちがカラダ探しに巻き込まれた理由を「孤独」とセリフで明言している点が惜しい。明日香たちの孤独と赤い人の孤独が共鳴しているであろうということは見ていてわかる為、セリフでテーマを示す必要はなかったように感じる。
【感想】
セリフで説明しているシーンが多く、見やすいと感じる反面、重要なシーンもセリフで済ませているため、もったいないように感じた。
10代から20代の若者をメインターゲットとして想定していることから鑑みて、説明台詞はある程度必要かもしれないが、テーマや気持ちの変化までセリフにせずとも、観客にはきちんと伝わるはずだ。
バトルからビッグバトルに向けて、敵を強くする必要があるのは理解できるが、物理的に強くする=巨大化するのはやや滑稽に映るように感じた。さらにそのきっかけが「屋敷でエミリー人形を見つけたこと」であり、スムーズには結び付かない因果関係だった。
ただ明日香たちが協力して巨大化した赤い人と闘うシーンは見ごたえはある為、シーンとしての満足度はあったと感じた。
全体として、わかりやすいテーマをホラーというジャンルに落とし込み、エンタメとして昇華しているように感じられた。お化け屋敷に行く感覚で見る作品としては、面白さの担保された作品であったと言える。
「好き」3「作品」3「脚本」3
(山極瞭一朗、2025/09/27)